みつむら web magazine

第1回 道徳授業のハードルを下げよう

授業を「見える化」する「構造化シート」を用いた授業改善

2025年4月10日 更新

真壁佑輔 札幌市立上野幌中学校 教諭

道徳科の授業に悩みをもつ先生方に、「構造化シート」を使って自分の授業を見える化することによって、授業改善につなげるヒントを解説します。

聞こえてくる道徳科への不安

「道徳科って、『正解』がないから、何を指導すればよいのかわからないんだよね……」
「道徳科って、内容項目で指導内容が決まっているから、教師の考えは入れてはいけないんでしょう?」
「子どもの意見をたくさん聞くのは好きなんだけど、うまくまとめるのって難しいじゃないですか?」

「道徳科の授業のハードルが高い!」

そういった現状が今日も聞こえてきます。
その悩みは、全国の先生方が共通して抱えていることではないでしょうか。

授業を楽しもう!

道徳科の授業を楽しんでやってほしい!
だけど、難しく考えすぎると授業中に先生の眉が寄り、怖い顔になっていきます。
子どもの考えをせっかく聞いているのに、まとめようとするから不安な表情になってきます。
そんな先生の表情、もったいないです。先生の表情が明るくて、子どもの意見をたくさん聞こうとする姿勢で授業に臨むことが、道徳科授業が楽しくなる秘訣です。

「型」にはめる授業からの脱却

教科化以前は、例えば、展開場面では教材の登場人物の心情を問い、終末場面では教材から離れて道徳的価値の一般化を行うというように、ある「型」にはめて授業を行う傾向があったように思います。
「型」にはめることで、授業展開に見通しがもてることや授業づくりがしやすい、生徒の反応も予想しやすくなるなどさまざまなメリットがあったために広く普及しました。

kouzouka02.png

一方で、現行の学習指導要領には「多様な指導方法の工夫/活用」という表現が複数箇所で示されています。
「指導する教師一人一人が,質の高い多様な指導方法へと指導の改善を行い…(略)」(p114)と示されているように、授業そのものに「正解」がないとすれば、今自分自身が行っている授業を基本にして授業改善できる力をもつことが大切ではないでしょうか。

授業改善の観点

学習指導要領解説には、次に表に示すように授業評価の観点(例)が示されています。
授業者の先生は、その時々によって課題であると認識しているポイントが違っていることが予想されます。
したがって、その時にどのような観点で授業を改善したいのかということについて認識することがスタートです。

各項目の右側の赤いボタンをクリックすると、私なりに具体的な現場の場面に置き換えてみたものが表示されます。

【道徳科の学習指導過程や指導方法に関する評価の観点(例)】

  • 生徒は「自分だったら」を考える時間があったか。
  • 生徒は他の仲間から意見を聞く時間はあったか。
  • 生徒は本時の内容項目に関わって「生き方」を考える時間はあったか。
  • 授業者のねらいに向かっていく授業の流れ(構成)になっていたか。

  • 発問(特に中心発問に関して)に対する生徒の答えは、多様な答えが想定されるものになっていたか。(答えが1つや2つに収束されない、多様な意見が出る)

  • 生徒の発言を丁寧に聞こうと(傾聴しようと)していたか。
  • 生徒の発言を受けて、授業が展開されていたか。(指導案上の発問を機械的に出す授業展開になっていないか。)

  • 教材(資料)と生徒の距離感は考えやすい、適切な距離感になっていたか。
  • ICTツールなど、使うことが目的になっていないか。(ツールがあるから、生徒は思考を巡らせ、生き方を考えることにつながっていたか。)

  • 扱う内容項目の理解の段階において、難しすぎたり、逆に授業を行わなくてもすでに生徒が知っているようなことを取り上げていないか。

  • 多様な生徒に対する配慮はなされていたか。

「中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳編」p117-118

以上のような内容に関して、自身の授業を振り返ったときに、どこに授業改善のポイントがあるかを考えることで、子どもの学びをよりよいものにしていくことになります。
いろいろなところに改善の必要があると感じるかもしれませんが、まずは自分が授業で大切にしていることが本当にうまくいっているのかを見直すことで、自身の授業を客観的に見つめる機会になるはずです。
意外にも「できている」と思っていたことが不十分であったり、「できていない」と思っていたことがうまくいっていることがあるのです。
先生方の道徳科授業は必ずさまざまな形で生徒に響いていることを忘れないでほしいです。

次回は、実際に授業改善の一事例について取り上げていきます。
自身の授業を客観的に見つめることで授業改善につながるとすれば、まずは授業を「見える化」する必要があります。そこで、授業を客観的に見るために、1時間の授業を「見える化」する「構造化シート」が有効であるという内容を紹介します。
お楽しみに。


【参考・引用】
文部科学省(2018)『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 特別の教科 道徳編』p117-118)

Illustration: こずまも

真壁 佑輔(まかべ・ゆうすけ)

札幌市立上野幌中学校 教諭

札幌市道徳教育研究会 研究部長、日本道徳教育学会北海道支部(中)研究部長(2024年度)。
2025年北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻修了、教職修士(専門職)。
2023年には、「中学校における「特別の教科道徳」の指導体制と評価方法の工夫:ローテーション道徳の効果とエクセルファイルポートフォリオの活用」で上廣道徳教育賞優秀賞を受賞。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集