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学校の「お知らせ」を考える(2)

みんなで考える「やさしい日本語」

2026年10月23日 更新

岩田一成 聖心女子大学教授

外国人児童生徒の急増を受けて、学校からの情報発信も変わりつつあります。この連載では、出入国在留管理庁や各自治体・教育機関で「やさしい日本語」普及活動を手がける岩田一成先生が、これからの「お知らせ」の在り方を考えていきます。

情報の取捨選択

学校発信の「お知らせ」には、情報共有型のものと、行動指示型のものがあります。具体的にその区別は以下のようになります。

情報共有型:学校のことを知ってもらうことを目的としたもの
 目標、経営方針、沿革、教室の様子、休みのルールなど
行動指示型:指示通りに対応してもらうことを目的としたもの
 持ち物、提出物、保護者参加型のイベント情報など

前回紹介した全14ページの『入学の手引』ですが、その内訳を示します。

p.1

目次

p.2

教育目標

p.3

中期学校経営方針

p.4

沿革

p.5

主な行事と科目数

p.6

時間割と日課表

p.7~8

学習、生活、部活の説明

p.9~10

保健安全、入学準備

p.11

諸費用の納入

p.12

入学式

p.13~14

給食について

これを見ると、情報共有型が前半6ページまでを占めており、7ページ以降8ページにわたり、行動指示型が散在しています。私自身が保護者としてしっかり読むのは行動指示型のメッセージです(他の保護者も同じではないでしょうか)。ところが、「散在している」という点が保護者にとって障壁となっており、注意深く見ないと指示を見落としてしまいます。

行動指示型の典型例は、以下のようなものです。“対応必須タイプ”と呼びます。

  • 〇月〇日に登校してください。
  • 油性ペンを持って来てください。
  • 〇日までに費用を払ってください。

一方で、行動指示型と言っても、「子どもの表情や顔色をよく見て」とか、「睡眠と食事には気を付けて」といった“常時注意タイプ”もあります。常時注意タイプは、一回くらい守らなくても問題はありません。「今日は顔色を見るの忘れてた!」くらいならなんとかなります。しかし、対応必須タイプは、「あ、登校日を忘れてた!」とはいきません。日本語母語話者は、対応必須タイプのようなものだけに赤で印をつけたりしながら読むことになります。

実は、“対応必須タイプ”の情報というのは多くありません。それらを1か所にまとめれば、1枚のプリントの両面くらいで収まるのではないでしょうか(例えば、表は保護者向け、裏は児童生徒向けなど)。「お知らせ」はコンパクトであるほど、伝達効率が上がります。情報共有型は内容を取捨選択して、行動指示型と分けて配布すればいいのです。

自分の子どもが学校で困らないように、保護者の多くは学校や先生の指示を守りたいと考えているはずです。一方で、情報共有型には関心の低い人もいるでしょう。例えば、公立中学校の目標とか経営方針を書かれても、ピンとこない保護者もいるのではないでしょうか。

対応必須タイプの情報が保護者に伝わらなかったとします。子どもは、休日登校があったとしても指定の日に学校に来ないですし、指示した持ち物を持ってきません。そうなれば先生の負担は増えることになります。保護者に連絡をしたり資料を渡したりする仕事が増えるからです。逆に、指示情報がばちっと全員に伝わったなら、先生の余計な仕事が減ることになります。保護者のストレスも減るので、お互いにメリットがあるのではないでしょうか。

前述のように、行動指示型だけをまとめてしまえば、配布資料は大幅に圧縮できます。それがそのまま先生の執筆時間の削減にもつながります。そういう視点で、学校のお知らせ改善運動を理解していただけたらと思います。

岩田一成(いわた・かずなり)

聖心女子大学教授、博士(言語文化学)。元青年海外協力隊隊員(中国派遣日本語教師)。大阪大学大学院言語文化研究科修了。専門は日本語教育、日本語文法。国・自治体の職員や教職員に向けた研修アドバイザーを務めるなど、いろいろな組織の文章改革に伴走している。モットーは「風通しの良い社会は、すっきりした文章から!」。
著書:『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『読み手に伝わる公用文』(大修館書店)、『新しい公用文作成ガイドブック』(日本加除出版)ほか

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