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学校の「お知らせ」を考える(1)

みんなで考える「やさしい日本語」

2026年9月17日 更新

岩田一成 聖心女子大学教授

外国人児童生徒の急増を受けて、学校からの情報発信も変わりつつあります。この連載では、出入国在留管理庁や各自治体・教育機関で「やさしい日本語」普及活動を手がける岩田一成先生が、これからの「お知らせ」の在り方を考えていきます。

新しい「お知らせ」の時代

とある公立中学校の『入学の手引』を見ながらこの文章を書いています。手引には、新入生向けに登校日や持ち物の情報が書かれています。一方、保護者に向けて各種費用の支払い期限などの情報も載っています。ところが、入学式当日に保護者が持っていく物の情報はありません。体育館に入るにはスリッパなどの室内履きが必要ですし、自分の靴を持ち歩くための袋も必要なはずです。なぜ書かれていないのでしょうか。

これまでの学校の「お知らせ」は、日本の学校教育を受けた人を想定対象者にすれば機能してきました。外と中で靴を履き替えるという習慣を体験している人には、日本のルールがわかります。ところが、世界には外靴のまま入る学校もあれば、靴を脱いだとしても建物内は裸足で過ごす学校もあります。そういう人たちにとって、わざわざ靴を履き替えるという習慣は、想像もつかないでしょう(正直「めんどくさ!」って思うんじゃないでしょうか)。

外国人児童生徒の増加を受けて、これからの「お知らせ」は、日本の学校文化を知らない人も想定して、内容や表現を工夫する必要があります。例えば、手引をざっと見ただけで、学校文化を背景とした言葉はたくさん使われています。

  • 標準服
  • 通学用の靴
  • 通学用カバン
  • 上履き
  • PTA加入意思確認書

これらは「学校カルチャー語彙」と呼ばれるもので、日本人と外国人で理解率が著しく異なります。しかし、少し説明を加えたり、イラストを追加したりすれば伝達効率は上がります。重要度の高い単語は、対面で説明することも必要でしょう。例えば、日本人も「通学用カバン」と言われて、みんな同じものを想像するとは限りません。これまではっきり定義せずに使われてきた言葉についても、何かルールがあるなら、それを言語化して明示すべき時代になりつつあります。以下のように書くと伝わりやすくなるのではないでしょうか。

通学用カバン:肩からかけるカバン/リュックのように背負うカバン等(←具体的な説明を加える)通学用カバンのイラスト(←イラストを加える

2019年以降、国の外国人受け入れ政策が変更され、多くの外国人児童生徒が公立学校に入ってきました。学校現場の先生方は大変ご苦労をされているのですが、保護者も困っています。学校の現状に合わせて、新しい「お知らせ」の形をこのあたりで考えてみる時期ではないでしょうか。そういう発想で、筆者は現在、静岡県教育委員会と協力して、お知らせ改善運動に取り組んでいます。

上に述べたように、学校で使われている言葉には通じにくいものがあります。ノート、はさみ、鉛筆のようにすぐに理解されるものと、学校カルチャー語彙(通学用カバン、上履き、PTAなど)のように外国人には理解されないものの区別が必要です。後者については、県外から来た日本人もルールの違いに戸惑うことがあります。

今回は、情報を追加したほうがいい言葉を取り上げました。書くことが増えるのは、先生にとっても負担です。一方で、手元にある『入学の手引』は14ページありますが、情報の取捨選択をすれば全体の分量は減らせそうです。書く量が減れば、先生の負担も減らせます。新しい「お知らせ」作りは、先生の負担軽減とセットで行わねばうまくいかないでしょう。この連載では、新しい「お知らせ」の在り方を考えていきたいと思います。

岩田一成(いわた・かずなり)

聖心女子大学教授、博士(言語文化学)。元青年海外協力隊隊員(中国派遣日本語教師)。大阪大学大学院言語文化研究科修了。専門は日本語教育、日本語文法。国・自治体の職員や教職員に向けた研修アドバイザーを務めるなど、いろいろな組織の文章改革に伴走している。モットーは「風通しの良い社会は、すっきりした文章から!」。
著書:『やさしい日本語ってなんだろう』(ちくまプリマー新書)、『読み手に伝わる公用文』(大修館書店)、『新しい公用文作成ガイドブック』(日本加除出版)ほか

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