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そがべ先生の国語教室

宗我部 義則

お茶の水女子大学附属中学校教諭

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに,明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校教諭。お茶の水女子大学非常勤講師。国立教育政策研究所「教育課程実施状況調査問題(中学校国語)」作成および分析委員。平成20 年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

第15回 デジタル教科書で読みを深める(2)
――黒板ツールを使って

2016.07.25

前回(第14回)に続き,デジタル教科書を授業の中でどう活用していくかご紹介していきます。

第14回 デジタル教科書で読みを深める――黒板ツールを使って(1)

教材文への導入で活用

2年生の「君は『最後の晩餐』を知っているか」を例にしてみましょう。

以前に「中学校国語教育相談室69号」(※)でもご紹介しましたが,私はこの教材文の導入で,修復前と修復後の「最後の晩餐」の画像を交互に映示し,生徒たちに「どちらが修復後だろう?」と投げかけました。それによって,生徒の興味を引きつけることができ,読む必然性が生まれると考えたからです。

※「中学校国語教育相談室69号」はこちらから。

今回のデジタル教科書には,この修復前と修復後の画像が収録されていますので,必要に応じて授業の導入でご活用いただければと思います。

画像,デジタル教科書の画面

「君は『最後の晩餐』を知っているか」(2年)
修復前と修復後の「最後の晩餐」の画像を収録している。

映像資料を提示するこの機能は旧来からあるものですが,こうした教室発の実践アイデアをどんどん提起して,資料や教材として盛り込んでもらえるとよいですね。

「黒板ツール」を使って,要点を抜き出す

さて,前回に引き続き「本文を抜き出して,読みを深めよう」の機能(以下,「黒板ツール」)を,授業の中でどう活用するかご紹介していきましょう。

「評論を読む」という言語活動は,評論対象(本教材では「最後の晩餐」という絵画)に対して筆者はどんなふうに見ているのか考えているのかを読み取っていくことが基本になります。その際,その評論対象について,自分はどう見るか,どう考えるかと自問しつつ,時には筆者の見方に深くうなずき,時には本当にそうだろうか,違うのではないかと批判的に考えていく。そうやって筆者と対話し,筆者の見方に触れて自分と対話しながら読んでいくのが評論を読むという行為なのだと思います。

それでは,筆者は「最後の晩餐」をズバリどう見ているか,文章中からズバリ抜き出させてみましょう。

まず,自分で,大段落1(第1~4段落)の中から,「最後の晩餐」に対する筆者の見方がズバリ表れた言葉に線を引かせます。それを発表し合う際に,「黒板ツール」を使ってみましょう。

こんな感じです。

画像,デジタル教科書の画面

「黒板ツール」を使って,生徒が指摘した文字列を抜き出して短冊化する。

生徒たちから出たものは抜き出して短冊化して示しつつ,まとめたり削ったり付け足したりします。

上図は,一通り整理した形ですが,生徒から出た順に貼り出し,後から並べ直すことで,筆者がどんなふうに「最後の晩餐」やレオナルドの絵を評しているのか理解が深まることでしょう。

「黒板ツール」を使って,論理展開を可視化する

次に,「黒板ツール」を使って,筆者の論理を可視化してみましょう。

大段落3(第17~21段落)の論理展開を「接続詞」の働きに注目してたどってみます。

まず,線で囲むなどして接続詞を注目させます。短冊で取り出したうえで,その前後の要点にあたる部分を抜き出させます。下図は第19段落の「しかし」「だから」の前後を抜き出した様子です。

画像,デジタル教科書の画像

こうして取り出してみると,

(現状は)細部はなくなってしまった。

しかし

(全体が)よく見えるようになった。
(レオナルドが表現しようとしたものが)よく見えるようになった。

だから

「かっこいい」と思えるのだ。

という具合に,「(修復で)細部が欠け落ちた分,全体(画家の意図)が見えるようになった」という筆者独特の見方が鮮明に見えてきます。

科学的だから,新しいから,「かっこいい」のではなく,時を経て細部が欠け落ちてもなお,表現しようとしたものが伝わってくるから「かっこいい」のだということがよく見えてきますね。つまりはそうした絵を描いたレオナルドに対する賛嘆の辞でもあるからこそ「かっこいい」なのでしょう。

今回は,「黒板ツール」を使って要点を可視化したり,書き手の論理を可視化したりする例を示してみました。

前回も述べましたが,こうした授業は,従来も短冊を使ったりチョークで板書したりして行ってきたものです。しかし,デジタル教科書の「黒板ツール」を使った場合は,その場で短冊を作り出せたり,パッと見て印象的に整理したりすることができます。そこがおもしろいところであり,使い方を工夫してみたいところですね。

欲をいえば,取り出した短冊の形を変えられたり,書き込みがもう少しやりやすかったりするとよいのですが,そのあたりはデジタル教科書自体が少しずつ進化していくのを待ちたいですね。デジタル教科書を育てていくのも,私たち現場教師なのです。

次回は,デジタル教科書の「人物相関図を作る」機能を使った実践をご紹介します。

※今回ご紹介したのは,平成28年度版 指導者用 光村「国語デジタル教科書」です。商品情報等は下記よりご覧ください。

指導者用デジタル教科書 平成28年度版中学校国語

文中で紹介している「黒板ツール」をはじめとした新コンテンツを多数収録。映像資料や,フラッシュカードなども入り,充実した内容です。

関連記事/授業リポート

中学校 国語2年 単元「評論を読む」
布施英利先生 × 宗我部義則先生 × 2年生の生徒 30名

目次

【第1回】 響く声を育てよう <2015.03.31>

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【第4回】 話し合い指導(2)―進行,参加のしかた― <2015.06.29>

【第5回】 話し合い指導(3)―発表のしかた― <2015.07.13>

【第6回】 話し合い指導(4)―考えを可視化する― <2015.09.01>

【第7回】 語彙指導 ―「言葉の宝箱ノート」― <2015.10.13>

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【第12回】 読書指導――学校図書館と連携して読書に誘う(2) <2016.03.01>

【第13回】 国語学習 三つの誓い <2016.04.04>

【第14回】 デジタル教科書で読みを深める(1)――黒板ツールを使って <2016.06.07>

【第15回】 デジタル教科書で読みを深める(2)――黒板ツールを使って <2016.07.25>

【第16回】 デジタル教科書で読みを深める(3)――人物相関図を作る <2016.09.20>

【第17回】 デジタル教科書で読みを深める(4)――全文表示画面を使って <2016.09.28>

【第18回】 古典に親しむ――架空インタビューで読む「平家物語」 <2016.12.05>

【第19回】 古典を楽しむ(1)――「Contemporary Remix 和歌」 <2017.01.20>

【第20回】 古典を楽しむ(2)――「Contemporary Remix 和歌」 <2017.01.20>

【第21回】 古典を深める(1)――「旅に生きる~おくのほそ道~」 <2017.04.13>

【第22回】 古典を深める(2)――「旅に生きる~おくのほそ道~」 <2017.04.18>

【第23回】 説明文の読みの学習をもっと楽しく――「ダイコンは大きな根?」(1年) <2017.05.23>

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