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第14回 デジタル教科書で読みを深める(1)――黒板ツールを使って

そがべ先生の国語教室

2016年6月7日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第14回 デジタル教科書で読みを深める(1)
――黒板ツールを使って

デジタル教科書の普及に向けた準備がいよいよ進んでいるようです。
国語科はICT活用が遅れ気味の教科といえそうです。掲示板やLINEなど、ネット上のコミュニケーションのかなりの部分を「ことば」が占めている現状を考えれば、国語科こそICT活用の最先端を目ざしたいところですが、それはまた別の機会に。今回は、この4月から最新版が使えるようになった中学校国語のデジタル教科書(※)を取り上げてみたいと思います。

さて、ICT機器は、教師の授業ツール(教具)としての側面と、子どもたちの学習ツールとしての側面とをもっています。教室に備え付けのプロジェクタやスクリーン、さらにはインターネット回線なども考えれば、「学習環境」としての意味づけもできますね。

デジタル教科書は、現状では各教科とも、教師が教材提示用に使っていることが多いと思います。それは学習者一人1台の環境がまだ整っていないこともありますが、デジタル教科書自体が、先生が電子黒板やプロジェクタを使って表示することを想定した作りになっていることも大きいでしょう(デジタル教科書の普及が進み、端末の状況も進んでいくと、しだいに学習ツールとしての側面が大きくなっていくことでしょうね)。

初めはまさに教科書を大写しにしたり、写真や動画など視聴覚資料をシームレスに呼び出したりという機能から始まったデジタル教科書ですが(そしてこうした資料の活用のしやすさは、これからも大きな魅力ではありますが)、中学校用の最新版には、まさに効果的な授業支援ツールとしての機能が付け加えられました。一人1台の環境が整っていけば、学習ツールとしてもおもしろそうな機能です。
その一つが、「デジタル短冊」とでもいえる、「黒板ツール」という機能です。こんなふうに使います。下の画像をご覧ください。

画像、デジタル教科書の画面
平成28年度版 指導者用 光村「国語デジタル教科書」の画面
3年「月の起源を探る」

左クリックをしたまま、ドラッグして範囲を選択(黄色い部分)。ここでマウスのボタンを放すと上部の黒板部分に選択した文字列が短冊状に取り出されます。右のボタンであらかじめ短冊の色を指定しておくと、その色の短冊で文字列を取り出せるのです。

画像、デジタル教科書の画面

 もちろん、貼り出した短冊は、このように(下画像参照)、移動して整えることもできます。

画像、デジタル教科書の画面

この機能、「なんだ、これなら画用紙や模造紙で短冊を作っておけばデジタル教科書でなくてもできるではないか」と思われたかもしれません。しかし、それは違います。目の前で、生徒たちが指摘した本文中の文字列をそのまま抜き出せるのです。それがどれだけ生徒(学習者)たちにとって自然な動きであるかを考えてみてください。自分が指摘した本文が、見ている目の前で黒板に貼り出されるのです。発言を取り上げてもらえた充実感も大きいことでしょう。

それだけではありません。この機能は、検討対象の文章や語句を、ズバリ、ハイライトさせる役割を果たします。これまでの黒板を使ったスタイルでは、学習者が指摘した文章や語句を先生が黒板に書き写す(あるいは短冊で貼り出す)ことで取り出していました。このとき、教材の文章は手元の教科書の中にありますから、学習者たちは、板書された文章や語句と、手元の教科書にある周辺の文章や語句とを交互に参照しながら思考を巡らせることになります。これは案外、高度なことです。

しかし、教科書の本文もスクリーンに表示された状態から、一部の文章や語句を抜き出すこの「本文を抜き出して読みを深めよう」の機能では、どちらも同時に視野に入れることができます。しかも一瞬で取り出せますから、生徒たちは思考に集中できるのではないでしょうか。

もちろん、ある程度以上のスクリーンの大きさが必要になることや、同時に表示できる本文の範囲が限定的であることなど、改善の余地はまだありそうですが、期待したい機能です。

この4月から使えるようになった最新版の機能ですから、私自身、まだ使い始めたばかりですが、次回はもう少し授業の実際の場面で、この機能をどんなふうに使うとよさそうか、考えてみたいと思います。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

※今回ご紹介したのは、平成28年度版 指導者用 光村「国語デジタル教科書」です。デジタル教科書・教材については下記よりご覧ください。

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