みつむら web magazine

3年上巻「春風をたどって」

「こんな授業ができます!」 令和6年度版小学校国語

2024年4月1日 更新

茅野政徳 山梨大学教職大学院教授

3年上巻「春風をたどって」の授業づくりのアイデアを紹介します。

想像しよう! ルウの気持ちと未来の姿

単元観

中学年では、行動や発話を基に登場人物の気持ちを捉える力を育むことが大切である。「春風をたどって」は、行動や発話から中心人物である「ルウ」の気持ちが捉えやすく描かれており、中学年の初めにふさわしい物語である。「見慣れた森」に対する気持ちと「ノノン」に対する気持ちの両方が変化していく構成が見事であり、気持ちを表す表現の巧みさも魅力的だ。例えば、「ためいき」という表現に着目してみよう。最初の場面では、「見なれたけしきをながめて、ルウはためいきをつきます。」と書かれていたものが、第三場面になると「ルウの口から、ほう、とためいきがこぼれました。」と変化する。「ためいき」という行動を通して、「ルウ」の気持ちがマイナスからプラスに変化したことが分かるように描かれているのだ。また、しっぽの揺らし方から「ルウ」の気持ちの変化が感じ取れる。他にも、「うきうき」「ふさふさ」「ガサガサ」「さわさわ」などの擬音語や擬態語が豊富に用いられ、「ルウ」の気持ちや場面の様子を捉えやすくしてくれている。極めつけが、題名にもある「春風」についての叙述だ。折に触れ、「春風」は「ルウ」の心をくすぐっていく。「花ばたけからついてきたさわやかなかおりが、ふわりとルウのはなをくすぐりました。」という終わり方など、情景描写につながる要素も含まれている。着目した叙述を基に「ルウ」の気持ちを捉え、自分の考えを表出する際には、さまざまな語句を用いて気持ちを表せるように、巻末の「言葉のたから箱」を活用するとよいだろう。

本単元では、上記の巧みな表現を実感を伴って感じ取れるように音読を取り入れたり、物語の続き話を想像して書く活動を設定したりしている。児童が学習したことをいかして音読したり、楽しみながら「ルウ」と「ノノン」の続き話を書いたりする姿を期待したい。

単元の指導目標

◎「ルウ」の行動や発話、見慣れた森と「ノノン」への気持ち、場面の様子などについて、叙述を基に捉えることができる。[思C(1)イ]
◎登場人物の気持ちを表す語句の量を増し、発言や記述の中で使うことができる。[知(1)オ]
〇物語全体の展開や「ルウ」の気持ちの変化を意識しながら音読することができる。[知(1)ク]
〇粘り強く、「ルウ」の行動や発話、気持ちなどを叙述を基に捉え、それを踏まえて音読したり、進んで続き話を書いたりする。[学びに向かう力、人間性等]

単元の授業過程(全8時間)

学習活動 評価規準と評価方法
①題名とリード文を基に、物語の内容を想像する。
②「といをもとう」に対する最初の考えを書く。
③最初の考えを基に、単元の学習計画を立て、学習の見通しをもつ。
〇「といをもとう」に対する最初の考えを書き、それを基に学習計画を立て、今後の学習に見通しをもっている。[記述]
2~5 ①学習課題を確認し、各場面を読んで、「ルウ」がしたことや言ったこと、思ったことなどに線を引く。
②線を引いた箇所を基に、見慣れた森や「ノノン」に対する「ルウ」の気持ちを書く。
③全体で共有し、各場面の「ルウ」の気持ちをまとめる。
④学習を振り返り、次時への見通しをもつ。
【思C】見慣れた森と「ノノン」に対する「ルウ」の気持ちを、行動や発話、心内語、場面の様子などの叙述を基に捉えている。[記述・発言]
【知】気持ちを表す語句の量を増し、使っている。[記述・発言]
①森や「ノノン」に対する「ルウ」の気持ちの変化を確かめる。
②「ルウ」の気持ちの変化を意識しながら音読する。
【知】「ルウ」の気持ちの変化などを意識して音読している。[音読]
7~8 ①思いついた続き話のアイデアを出し合う。
②出し合ったアイデアを基に、続き話を書く。
③続き話を読み合い、感想などを交流する。
④学んだことを基に、学習全体を振り返る。
【態】創作した続き話を読み合い感想を交流したり、学習全体を振り返って学んだことをまとめようとしたりしようとしている。[記述]

 

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集