みつむら web magazine

夏休み!読書感想文お悩み相談室 2021

みつむら子育て応援特集

2021年7月22日 更新

光村図書がお届けする保護者向け子育て応援特集です。

夏休みの宿題といえば、読書感想文。子どもの読書感想文が、悩みの種という保護者の方も多いのではないでしょうか。小学校教諭、司書教諭を経てさまざまな地域の図書館支援にあたってこられた、藤田利江先生に、保護者からのお悩みに答えていただきました。

読書感想文お悩みQ&A

結論から言えば、決まった書き方はないと私は思っています。ただ、「読書感想文の書き方」といった本をみると、「こう書きましょう」といった内容のものも多いようです。学校では、作文の書き方として「はじめ」「中」「終わり」という3部構成を学習しています。読書感想文もこれに当てはめて書くことが多いでしょう。この場合、例えば次のような書き方が考えられます。

はじめ 読むことになったきっかけを書く。

あらすじをまとめながら、感想を書く。

終わり 考えたことやこれから実行したいことなどを書く。

しかし、読書感想文の場合、「本を読んだ感想」が重要になります。「感想を表現する」ことを中心に考えていくと、決まった書き方にとらわれる必要はありません。「どのように書くか」ではなく、「どんな感想をもち、どう表現するか」を考えるとよいと思います。

感想文というと、物語(幼年童話を含む)で書こうとする人が多いようですが、絵本や科学読み物、知識の本も対象とするとよいでしょう。感想文を書くために背伸びをして、いつも読まないような本にチャレンジする必要はありません。その子にとってやさしく感じられる本を選ぶことを私はおすすめします。

「興味ある本が感想文に向かない」というのは、感想文の捉え方や書く視点を工夫することで解消されることではないでしょうか? 実際、図鑑を読んだ感想文や詩の感想文もありますし、低学年の課題図書になった『なずず、このっぺ』という意味のわからない言葉が出ている絵本でも、子どもたちの素晴らしい感想がたくさん書かれていました。子どもの生活や自然の中での経験と本の内容をつなげれば、その子らしい感想を書くことができると思います。

つい読書感想文に合わせた本を選びがちですが、物語の世界に入り込んで、泣いたり笑ったり、自分の世界が拓けたりすることが読書の醍醐味です。まず、そういう読書の楽しみを知るために、普段から本を読む習慣をつけることが重要です。

子どもの感想を引き出すには「質問」がカギになります。「印象に残った場面」と言われても、子どもはどう答えてよいかわからないのが普通でしょう。また、「おもしろかったところ」は1か所か2か所で、「他には?」と聞いても、「ない」という回答が多いと思います。

ところが、聞き方をちょっと工夫すると、子どもの返事は変わります。質問は1ページ、1ページ本を開きながら、「この時、〇〇はどうしたかなあ?」「どうして〇〇になったんだと思う?」などと具体的に聞いてみましょう。もちろん、全ページ質問する必要はありません。文だけでなく絵も見ながら質問し、それに子どもが答えたことについてさらに質問するようにしてみましょう。子どもが答えやすいように、より具体的な質問をすることがポイントです。

また、子どもの回答をせかしたり否定したりしないで、同調したり感心したりしながら親子の対話を楽しみましょう。対話から引き出された子どもの素直な気持ちが、生き生きとした個性あふれる読書感想文となります。

子どもは「すごい」「かわいそう」「おもしろかった」「えらいと思う」といった単発の感想を言います。でも、どんな短い言葉でも何かしら表現できたら「素晴らしい」のです。その短い感想にどう突っ込みを入れるかが、聞き手の腕のみせどころです。

子どもの反応に、「え、それしかないの?」「他にもあるでしょ」「それは違うでしょ、おかしいよ。」といった言葉を発するのは禁物。子どもの反応には、「同感する」「感心する」が基本です。「うん、うん、そうだね。」「へえ~、そうなんだ。」「おお、いいことに気づいたね。」といった言葉を用意しましょう。子どもの発言を尊重し、どんな反応でも認め、ほめることを基本とします。こういった大人の反応に、子どもはやる気(反応する気持ち)を起こすのです。

さらに、質問の突っ込みも工夫しましょう。「すごい」との答えには、「すごいね、どれくらいすごいと思う?」「〇〇ちゃんに同じようなすごいことって、あった?」「この間見た〇〇すごかったね?どっちの方がすごいと思う?」のように、さまざまな突っ込み方を考えてみましょう。それに対する子どもの反応は全てメモしておくと、感想文をまとめるときの助けになります。

初めから意欲があるのはごく一部の子どもたちでしょう。大人でも新しい発見があったり、とても感動したりすると誰かに伝えたいという気持ちになることがあります。意欲をもたせるには、「伝えたい」という気持ちを育んだり、「話を聞いてもらえる」という安心感をもたせたりする環境が必要です。

それはそうそう難しいことではありません。私が仕事をしながら子育てまっただ中にいた時、印象に残っている話があります。あるお母さんは、子どもと一緒に歩くときなど、「あの雲、素敵だね、何に見える?」といった言葉がけに心がけているというのです。

忙しい毎日を余儀なくされていると、「早くしなさい」「もうできたの?」といった言葉を連発してしまいますが、ときには一息ついて、子どもとの会話に余裕をもつようにしましょう。

これが子どものモチベーションをあげる一番の近道ではないかと私は思います。子どものやる気は、簡単に育つものではありません。普段の生活の中でじわじわと培うことではないかと思います。そして、周りの大人たちの努力や工夫も必要です。読書感想文が、親子の対話をより豊かにするきっかけになるといいですね。

読書感想文と作文の違い、あらすじと感想の違いなど、特に低学年の子どもは理解できていないことでしょう。「感想文はこのように書きます」と説明するより、読んだ本の内容について質問と回答のやり取りをしながら、自分が答えたことが感想文につながっていく体験をさせましょう。低学年でそういう体験をすれば、あらすじばかりの感想文にはならないと思います。

書き出しには、読むことになったきっかけを書くことが多いようです。もちろんきっかけから書き出すことでよいですが、次のような書き出しも工夫してみましょう。

  • 会話文から始める
  • 表紙を見て、思ったこと感じたことから始める
  • 本を読んで、不思議に思ったことから始める
  • 本の中の文の引用から始める

※このコーナーの回答は、『はじめての読書感想文』(藤田利江著、子どもの未来社、2019年)の一部も引用しています。さらに詳細な取り組み方や支援のしかたについては、この本をご参考に。
 

Illustration:こやまもえ

藤田利江(ふじた・としえ)

小学校教諭兼司書教諭を経て、荒川区、江戸川区、大和市の教育委員会に所属。3区市を中心にさまざまな地域の学校図書館支援活動にあたる。著書に『はじめての読書感想文』(子どもの未来社)、『藤田式「調べる学習」指導法 小学校編・中学校編』(子どもの未来社)、『図書館へ行こう! 楽しい調べ学習』(国土社)などがある。全国学校図書館協議会 学校図書館スーパーバイザー。NPO法人学校図書館実践活動研究会 理事。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集