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夏休み! カンジー博士の漢字自由研究

みつむら子育て応援特集

2023年7月24日 更新

光村図書がお届けする保護者向け子育て応援特集です。

夏休みの自由研究のテーマに、「漢字」はいかがでしょうか。楽しい活動を通して漢字に触れることで、漢字が好きなお子さんはもちろんのこと、漢字が苦手なお子さんも、漢字に親しみをもつきっかけになるかもしれません。今回は、「国語」教科書の編集委員も務める漢字ミュージアム館長の阿辻哲次先生にご監修をいただき、楽しいアイデアをご紹介します。

次の四つの漢字の成り立ちを参考に、自分のオリジナルの漢字を作ります。そのとき、①~④のどの成り立ちを使ったかを書いておくと、漢字の成り立ちを意識することにつながります。漢字だけでなく、漢字の音と訓、例文なども考えて漢字辞典のようにしても楽しいですね。

◆漢字には、主に、次の四つの成り立ちがあります。
①目に見える物の形を、具体的にえがいたもの。
〈例〉馬・山・門

②目に見えない事がらを、印や記号を使って表したもの。
〈例〉上・下・三

③漢字の意味を組み合わせたもの。
〈例〉鳴・休・林

④音を表す部分と、意味を表す部分を組み合わせたもの。
〈例〉草・晴・持

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阿辻先生からひと言

漢字は3000年以上も前に中国で生まれ、時代とともに変化して今のような形になりました。日本にはもともと文字がありませんでしたが、海を越えての交流によって中国から漢字を受け入れ、今から1500年くらい前には漢字を使って文章を書くようになりました。日本語で使われる漢字はほとんど中国で作られたものですが、中には日本人が独自に作ったものもあって、そんな和製漢字を「国字」といいます。

国字の多くは③の方法で作られていて、例えば「いわし」という魚は水がないとすぐに死んでしまう「弱い魚」であることから、「弱」と「魚」を組み合わせた「鰯」で表され、山の上りと下りの境目となる「とうげ」を、「山」と「上」と「下」を組み合わせた「峠」で表しました。他にも「人」と「夢」を組み合わせた「儚」(はかない)とか、「身」(からだ)と「美」を組み合わせた「躾」(しつけ)が作られました。

その他にも「働」や「鋲」、「腺」など、④の方法で作られた国字もありますが、数はそんなに多くありません。昔の人たちは「家」や「戸」、「道」など身のまわりにある設備や道具、「犬」や「鳥」、「馬」などの身近な動物、あるいは「夢」「明」「走」など、日常生活でよく使われるたくさんの言葉を表すために、さまざまに工夫していろんな漢字を作りました。

それと同じように、みなさんも知恵を働かせ、アイデアをこらした「漢字」を作ってみませんか? 自分が作った「アイデア漢字」は、はじめは自分にしかわからないでしょうが、やがて多くの人がそれを同じ意味で使うようになれば、それがいつか新しい漢字になるかもしれません。

ライオンと獅子、ジャガーと豹、パンダと熊猫、ダチョウと駝鳥、イルカと海豚、モンキーと猿のように、漢字と片仮名両方の書き方をもつ動物がいますが、それではゴリラは漢字でどう書いたらいいでしょう? カンガルーは? 他にもペリカンやコアラなど、動物園の人気者たちの名前を漢字で考えて、「漢字動物園」を作ってみませんか。

同じようにすると、漢字植物園や漢字水族館などもできそうです。もちろんほとんどの動植物は漢字による書き方が辞書などに載っていますが、ここでは本来の漢字表記を気にせず、そのものの特徴をよく観察し、思いついたアイデアで自家製の書き方を作ってみましょう。

【例】
ペリカン…大袋鳥
ビーバー…堤防作名人
チュ-リップ…首長多色草

紙の表に自分なりに考えた漢字、裏に動物の名前と絵を描いて、友達に楽しんでもらうこともできます。

zukan1.pngzukan2.png

阿辻先生からひと言

ペンギンは、中国語で「企鵝」と書かれます。「鵝」はガチョウを表しますが、どうして「企」という字が使われているのでしょうか。「企」は常用漢字表に入っており、音読み「キ」と訓読み「くわだ(てる)」が載せられていますが、その訓読み以外にも、「企」には「つまだつ」(つま先で立つこと)という訓読み(表外訓)があります。この「つまだつ」という意味が、実は「企」本来の意味でした。

空を飛ぶことができないペンギンは陸上を移動するときにヨチヨチと歩き、そして立ち止まるときには二本の足で直立し、その姿はまるでつま先立って遠くを眺めているように見えます。それで中国では、ペンギンのそんな様子を「企」という漢字で表現したのです。

なぞかけは、なぞなぞに似た、言葉遊びです。次のように、二つの言葉を挙げ、その言葉に共通するものの意外性を楽しみます。

牛丼」とかけて「」ととく。そのこころは、どちらも「なみ」があるでしょう。
(AとかけてBととく。そのこころは、どちらも~でしょう。)

ここでは、同音異義語に着目して、なぞかけを作ります。次の手順で進めます。

① 国語辞典などで、同音異義語を見つけましょう。できるだけ意味が遠い言葉のほうが、おもしろいなぞかけができます。
返信 変身

② 同音異義語が見つかったら、それぞれの言葉から連想する言葉を考えます。
返信……メール
変身……仮面ライダー

③ ②の言葉を使って、なぞかけの形に当てはめます。
友達とのメールとかけまして、仮面ライダーを見ている時とときます。
その心は、どちらもへんしん(返信・変身)が楽しみでしょう。

慣れてくると、どんどん上手に作ることができるようになります。なぞかけ集を作って、友達やおうちの人にといてもらいましょう。
nazokake.png

同じ字をもつ熟語を組み合わせて、パズルを作ります。まずは、同じ漢字で始まる熟語から考えるとよいでしょう。その後、同じ漢字で終わる熟語を考えます。なかなか思いつかない場合は、goo辞書(https://dictionary.goo.ne.jp/ 外部サイトが開きます)の逆引き機能「で終わる」を活用することもできます。
たくさん作ったら、パズル集にして友達やおうちの人に解いてもらい、楽しむことができます。

kanjipaz.png

阿辻哲次先生より

atsuji.png文字は人類の文化を発展させてきたもっとも大きな原動力でした。大昔から現在に至るまで、人類は文字による記録によって過去から文化と知識を獲得し、人々とコミュニケーションをはかり、そして後世に新しい知識と経験を伝えてきました。文字こそは文明の偉大な母でした。

それらの文字の中で、漢字は古代から現代まで、広い地域で一貫して使われており、その最大の特徴は「表意文字」という点にあります。漢字は文字ごとに独自の意味があって、それぞれの漢字の作り方には、古代の人々の世界に対する認識と価値観がぎっしりとつまっています。漢字は古代の人々が現在に残してくれたカプセルといえるでしょう。

この古代のカプセルを開けたとき、私たちの目の前には現代人がすでに忘れてしまった大らかな自然観や人生に対する考え方が広がります。カプセルに入っている知恵の結晶は、過ぎ去った遠い過去の時代のものではなく、これからも十分に新鮮さを感じさせてくれるものなのです。

阿辻哲次(あつじ・てつじ)

京都大学名誉教授、(公財)日本漢字能力検定協会 漢字ミュージアム館長

専門は中国文化史、中国文字学。人間が何を使って、どのような素材の上に、どのような内容の文章を書いてきたか、その歩みを中国と日本を舞台に考察する。現在は京都の漢字ミュージアムで、企画展示の立案と運営に参画し、あわせて漢字文化連続講座を主催する。著書に『漢字再入門』、『近くて遠い中国語』(ともに中央公論新書)『タブーの漢字学』(講談社学術文庫)『漢字のはなし』(岩波ジュニア新書)、『戦後日本漢字史』(新潮選書)などがある。

 Illustration:川口澄子

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