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冬休み 書き初め 悩み

冬休みの宿題といえば、書き初め。子どもにどのように関わってあげるとよいか悩む保護者の方も多いのではないでしょうか。光村図書の「書写」「国語」教科書の文字を書いてくださっている樋口咲子先生と、小学校での書写指導に携わっていらっしゃる西野暁子先生に、保護者からのお悩みに答えていただきました。

Q1
なぜ、お正月に書き初めをするのでしょうか。
書き初め 寺子屋

豊国「寺子屋書初」
国立国会図書館デジタルコレクション

樋口先生 日本では、古くからお正月の書き初めや七夕の短冊など、文字に思いを込める風習がありました。書き初めはもともと平安時代の宮中行事であったとされますが、江戸時代の寺子屋の普及で庶民に広がりました。寺子屋では、書き初めは一大イベント。子どもたちの字が上手になることが、大人たちの大きな喜びでした。 
学校教育においても、伝統文化として見直されています。ご家庭でも、それぞれの新年の決意や願いを書いて飾ると楽しいですね。

Q2
子どもに何からアドバイスをすればよいかわかりません。気をつけるとよいポイントはありますか。

樋口先生 必ず気をつけたいポイントは「行の中心」と「文字の大きさ」の二つ。この二つに気をつけるだけで、ぐっと美しくなります。

・行の中心

行の中心が通っていると、文字全体が美しく見えます。毛筆の場合、練習のときは半紙に縦に折り目をつけて、中心を意識して書くといいですよ。

・文字の大きさ

紙に合った大きさを意識できるように、練習のときは半紙を等分に折って文字のだいたいの大きさを確認しましょう。また、文字の大小の関係にも目を配ってみましょう。
「漢字は大きめ、平仮名は小さめ」が基本。「日」「の」のように、画数の少ない閉じた形は小さめ、「大」「光」のようにはらいのある形は大きめに書かれることが多いです。課題文字の見本を見て、文字の大きさの関係を確認してみましょう。

書き初め 行の中心 書写 教科書 3年

小学校「書写」教科書3年 32ページ

小学校「書写」教科書4年 26~27ページ

Q3
教科書の見本との違いが気になり、一画一画注意していたら、子どもがやる気をなくしてしまいました。

西野先生 まずは、書く前に、どの部分を頑張るかを聞いてあげるとよいでしょう。例えば、「左払いをきれいに書く」など、目標を一緒に決めます。それができていたら、そこをほめる。他の部分が見本と違うことを指摘したくなっても我慢です。

樋口先生 文字にはいろいろな書きぶり、個性があります。自分の文字のよさを味わい、自分の字に磨きをかけるという気持ちで、書き初めに取り組めるようにしたいですね。まずは、子どもの字のよさをたくさんほめましょう。また、最初の一枚をとっておき、上達した点を褒めてあげると「もう少しがんばろう」という気持ちになってくれます。スモールステップで成功体験を味わわせるのが大切です。

Q4
楽しく文字の形を教えるコツはありますか。

樋口先生 大人と子どもで楽しみながら文字の外形を確認する方法があります。

  1. 課題文字の見本をいっしょに眺めながら、画の長さや方向などを確認する。
  2. 子どもと大人で違う色の色鉛筆を使って、一画ずつ交代で文字を書いてみる。
  3. 書き終わった文字を見本と比べ、「もう少し長い方がよかったね」など、会話を通して外形を確認する。

ゲーム感覚で、いい文字の形のイメージを作ってから、書き初めに挑むといいでしょう。

10cm×10cm程度の大きさの紙に書くと書きやすい。

Q5
字が極端に小さくなったり細くなったりしてしまいます。

小学校「書写」教科書3年 20ページ

西野先生 筆に慣れていないのが原因かもしれません。最初は、文字ではなく線を書いてウォーミングアップしましょう。太い線、細い線、太い・細いが繰り返される線などを書き、どれくらいの力を入れると、どれくらいの太さになるかの感覚をつかみましょう。
時間に余裕がある場合は、紙を原寸大の課題文字の上に載せて鉛筆で輪郭をとり、それをなぞって書いてみましょう。長さや太さをつかむことができます。

Q6
名前を書くときに失敗してしまいます。小筆の使い方のコツはありますか。

西野先生 墨を避けてついつい手首を浮かせたまま書いてしまうお子さんも多いかと思います。名前を書くときは、墨の付いている場所に紙を敷くなどして、手首をきちんと固定できる場所を確保しましょう。

樋口先生 小筆は、提腕法と枕腕法の二つの書き方があります。子どもの書きやすい方法を見つけてあげてください。位置や大きさは教科書の見本などを参考にするとよいでしょう。

小筆 持ち方 提腕法 枕腕法

Q7
去年は部屋が墨だらけになってしまいました。汚れにくい準備のしかたはありますか。
書き初め 墨池 

西野先生 新聞紙やレジャーシートなどを敷いてから、道具を準備します。硯の周りが最も汚れやすいので、硯ケースの下には、雑巾(や新聞紙)を引きましょう。墨池を使う場合は、100円均一などで売っているケースの中に雑巾をしき、墨池や筆を入れるのもおすすめです。
お子さんには、
・ 筆は、必ず筆置きに置くこと 
・ 筆を持ったまま他の作業をしないこと
の2点をあらかじめ声掛けするとよいでしょう。
 

Q8
液墨の上手な使い方を教えてください。

西野先生 液墨は、硯や墨池にあまり入れすぎないようにします。半分より少ない程度に入れ、足りなくなったら少しずつ足していくとよいでしょう。墨は、筆の根本までしっかり含ませたあと、余分な墨を硯の縁で取って筆先を整えます。
残った墨は、もったいなくても容器に戻さないようにしてください。膠(にかわ)系の墨には、動物性たんぱく質が含まれているので腐ってしまいます。

Q9
片づけ方のポイントを教えてください。

西野先生 まずは、硯や筆など墨がついているものから片づけると他のものを汚しにくいですね。
筆は、よく洗って、根元の墨までしっかり押し流してください。ペットボトルですすぐ方法もありますが、その後、流水でしっかり根元を洗うといいですね。うっかり洗い忘れて墨が固まってしまったら、水にしばらくつけておき、それから洗うとよいでしょう。
小筆は、洗いません。水を含ませたスポンジや半紙などでふくと、毛先を傷めずに墨をとることができます。

小学校「書写」教科書3年 43ページ

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Q10
これを機に、普段から文字をていねいに書く習慣をつけるには、どうしたらいいですか。

西野先生 誰かにお手紙を書く、贈り物に名前を書くなど、相手を意識して書く経験を積むとよいでしょう。お礼の手紙やお誕生日のメッセージなど、書いてみるといいですね。

樋口先生 学校の制作物、家族に書いてくれたお手紙など、子どもの文字を、ぜひおうちに飾ってください。「1学期よりも(1年生の時よりも)どんどん上手になっているね」など、本人の成長をほめましょう。また、買い物メモを書くことを頼んだり、日常のちょっとした連絡をメモで渡したりなど、文字で人に伝える経験を通して、わかりやすく読みやすい字を書くことの大切さを実感できるといいですね。文字を通して、子どもの成長や、心の状態が見えてくると思います。

Illustration:石黒亜矢子

樋口咲子(ひぐち・さきこ)

千葉大学教育学部教授。光村図書小学校・中学校「書写」教科書編集委員。全国大学書写書道教育学会常任理事。全日本書初め大展覧会審査顧問。学生や現職教員の書写書道教育に携わるとともに、書家としても活動している。

西野暁子(にしの・あきこ)

千葉市立海浜打瀬小学校教諭。光村図書小学校「書写」教科書編集委員。公立小学校で、小学生の書写指導に携わっている。


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