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みつむら子育て応援特集
2024年3月22日 更新
光村図書がお届けする保護者向け子育て応援特集です。
4月の小学校入学を楽しみに待っている新1年生の子どもたち。心躍るような“わくわく”とともに、ほんのちょっぴり、どきどき不安な気持ちも芽生えているかもしれません。保護者の方も、きっと同じ気持ちでいらっしゃることでしょう。
子どもも保護者も、これから始まる小学校生活をめいっぱい楽しみにできるように――。小学校「国語」教科書の編集委員である邑上裕子先生(前 明星大学客員教授)と、イラストレーターの かおりんごむしさんに、家庭でできるちょっとした入学前準備のヒントをご紹介いただきました。
目次
邑上先生にきく 学校生活が楽しみになる3つの「言葉の準備」
「子どもたちが不安なく学校生活をスタートするために大切なのは、どんなこと?」
「入学前に何をしておけばいい?」
入学前、保護者の方の心配はつきないことでしょう。公立小学校長や幼稚園長のご経験もあり、国語教育に長く携わってこられた邑上裕子先生に、「言葉」という観点から、学校生活が楽しみになる小さな準備のアイデアをうかがいました。
入学前に知っておきたいこと
新1年生のことを考えるといつも思い出すのはこんなお話です。教室で、先生が子どもたちに「皆さん」と語りかけたときのこと。ある子どもが、その「皆さん」を「ミナさん」、つまり「ミナ」という名前だと捉えて、「先生は、『ミナちゃん』に向かって言っているから、自分に言われているんじゃないな」と思ったというのです(※)。
幼稚園・保育所の小さな集団の中で、子どもたちは基本的に、先生と一対一の関係で向き合ってきました。ところが、小学校に入学すると、「一人の先生と多くの子どもたち」という、一対多の関係で向き合うことがほとんどになります。これは、大きな違いです。このことに気づいて以来、私も、小学校の教員時代に1年生をうけもったときには、子どもたちにまずこう伝えるようにしていました。「『皆さん』って言ったら、『ミナちゃん』だけじゃないのよ。クモの糸みたいに一人一人につながるように、『みんな』にお話ししているからね」と。先生との関係一つをとってもこんなに違うのですから、小学校入学は、子どもたちにとって大きな変化といえます。
入学前の保護者説明会では、学校生活に早く慣れるための準備について、学校からさまざまなお願いがあったことと思います。私が小学校の校長を務めていたときにも、そうしたお願いをしてきました。もちろん、それらも大事な準備の一つです。ただ、子どもたちのよさをもっと引き出す、そんな準備もまた大切にしたいなと思うのです。そこで、今回は、これから始まる新しい環境で、先生と、そして新しい友達との関わりづくりの仲立ちとなってくれる「言葉」に焦点を当てながら、子どもたちが「学校生活って、楽しい!」と思えるような準備のアイデアについて考えてみたいと思います。
※出典:岡本夏木 著『ことばと発達』岩波書店(1985年)p.173-175「『皆』の中の自分」
学校生活が楽しみになる3つの「言葉の準備」
「自分の名前を平仮名で書けるようにしておいてください」。そんなお願いのあった学校もあるかもしれません。でも、書くことよりもまず大事にしたいのは、自分の名前を好きになることですよね。そこで、お子さんと一緒に、お子さんの名前を使ったこんな遊びをしてみてはどうでしょう。
まず、名前の頭文字から始まる言葉をたくさん出し合ってみます。例えば、「ゆうこ」なら、「百合」「夕焼け」「雪」「UFO」……といった具合です。お子さんだけでは難しいかもしれないので、保護者の方が手伝いながら探してもいいですし、このときに名前の由来について触れてみるのもいいですね。そして、出てきた言葉の中から気に入ったものを選べば、「UFOのゆうこです。覚えてね」「健康な けんたです」などと、新しい教室で自己紹介に使える言葉ができあがります。
3年生ぐらいになれば、名前に使われている各文字を使って「折り句」を作ってみるのも楽しいでしょうけれど、新1年生なら、頭文字だけで十分。名前の頭文字から他の言葉に広げる遊びを通して、きっと、自分の名前への親しみや言葉への興味がわいてくると思います。
何よりもまず、子どもたちには「言葉」を好きになってもらいたいなと思っています。「言葉」のおもしろさをぞんぶんに感じるために、ぜひ触れてほしいのが「オノマトペ」です。
「ニャーニャー」「ワンワン」「しとしと」「めらめら」など、日本語には、音や様子を表す言葉、つまりオノマトペが豊かに存在します。そして、オノマトペのおもしろいところは、誰もが自由に作り出せること。子どもが楽しめる詩の中には、オノマトペを使ったものが多くあるので、保護者の方と一緒に、それを声に出してみたり、他のオノマトペを考えて遊んでみたりするとよいでしょう。
一例として、私の手元にある子ども向けの詩集をご紹介しておきます。詩の読解まで求めるのであれば高学年にならないと難しいと思いますが、保護者の方と声に出したりオノマトペを見つけたりするのなら、新1年生でも大いに楽しめるでしょう。
こうした遊びを通して、「言葉を覚える」のではなく、「言葉を使う」楽しさやおもしろさを子どもたちに感じてもらえたらいいですね。
これは、「生活に関わる言葉」という観点からのアイデアです。入学前に学校からお願いされたことの中に、「その日の出来事を、おうちの人に自分で知らせることができるようにしてください」というものがあったかもしれません。「おうちの人が、きいてあげてください」というお願いともいえるでしょう。これはもちろん、保護者の方に、一問一答で、根掘り葉掘りきき出してほしいという意味ではありません。子どもにとって、保護者とのコミュニケーションの一つになるようにきいてあげる必要があります。
その一方、学校生活では、「困ったときにSOSが出せる言葉を知っていること」も重要です。挨拶については、幼稚園や保育所ですでに身につけてきていることでしょう。でも、自分がとても困ったときの伝え方については、知らない子がほとんどなのではと思います。「我慢しなくていいんだよ。お願いすればいいんだよ」ということとともに、こうした言葉についてもぜひ伝えておきたいものです。
光村図書の教科書では、1年生の国語の時間で扱う内容でもあるのですが、例えば、「おなかが痛いの」「忘れものをしちゃったの」「トイレに行っていいですか」など、「自分が今、こういうことで困っている」と伝えられる言葉を、事前に少し知っておけるといいですね。話し言葉は、人との関わりの基本です。こうした言葉は、言葉の学習の第一歩にもなるでしょう。
子どもたちが、安心して学校生活をスタートさせて、「学校って楽しいな」「言葉っていいな」と思ってくれたら、こんなにうれしいことはありません。
かおりんごむし 我が家の新いちねんせい準備
「みつむら web magazine」で連載中の「うれしい学び」で、二人のお子さん、さとしさんとまりさんの“学びの姿”をイラストでご紹介くださっている かおりんごむしさん。
今回は、お子さんの小学校入学前に、家庭で実際に行った準備について教えていただきました。
みつむら web magazine 連載「うれしい学び」目次
その1 学校まで歩いてみよう!
息子の入学前のお話です。
今まで一人で歩いたことのない道。
信号に気をつけて、横断歩道を渡れるかな?
当日に緊張しないように、一度みんなで歩いてみようと思いました。
![我が家の新いちねんせい準備 その1のイラスト1枚目](https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/3117/0969/2902/2024spring-img-wagaya-1-1.jpeg)
![我が家の新いちねんせい準備 その1のイラスト2枚目](https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/9717/0969/2904/2024spring-img-wagaya-1-2.jpeg)
リーダー(先頭)になって着いた小学校。
うれしそうに妹に自慢していました!
初めて登校した日、「ちゃんと学校に着いたよー」と教えてくれました。
その2 えんぴつを削ってみよう!
娘の入学前のお話です。
毎日のえんぴつ削り、自信をつけてほしくて、娘に任せてみました!
![我が家の新いちねんせい準備 その2のイラスト1枚目](https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/5617/0969/2909/2024spring-img-wagaya-2-1.jpeg)
![我が家の新いちねんせい準備 その2のイラスト2枚目](https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/1717/0969/2913/2024spring-img-wagaya-2-2.jpeg)
一緒の空間で見守りながらできる用意。
じょんりじょんり。トントントントン。
入学後は、毎日しっかり一人で用意できるようになりました。
えんぴつ削りから、自分でできる用意が少しずつ増えていきました。
その3 ランドセルを背負ってみよう!
娘の入学前のお話です。
入学前に購入したランドセル、ずっと飾ったままでした。
実際に背負ったらどんな感じかな?
軽い?重い?
ワクワク?ドキドキ?
イメージしてほしくて、背負ってみてもらいました!
![我が家の新いちねんせい準備 その3のイラスト1枚目](https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/8417/0969/2917/2024spring-img-wagaya-3-1.jpeg)
![我が家の新いちねんせい準備 その3のイラスト2枚目](https://assets.mitsumura-tosho.co.jp/8517/0969/2920/2024spring-img-wagaya-3-2.jpeg)
こんなにワクワクがつまった「重い」は初めて聞きました!
今も、ランドセルを背負うとき、娘はいつも「よし!」という顔をしてから背負います。
そうか!気合いがいるんやね!
邑上 裕子(むらかみ・ゆうこ)
前 明星大学客員教授
東京都生まれ。東京都の公立小学校教諭、立川市教育委員会指導主事、東京都教職員研修センター統括指導主事、公立小学校長等を務める。過去、新宿区公立幼稚園の園長も経験。元 東京都小学校国語教育研究会会長。共著に『小学校国語学習指導実践事典』(東洋館出版社)、『未来に生きる話し手・聞き手を育てる「話し言葉」の学習』(光村図書出版)など。光村図書 小学校「国語」教科書の編集委員を務める。
かおりんごむし
イラストレーター
京都府在住。息子、娘、夫との4人暮らし。日々のほっこり&小さな幸せを漫画にして、ブログ・SNSやWeb記事などで公開している。創作のテーマは「1日1日大切に過ごしたい」。
ブログ:かおりんごむしのほっこりブログInstagram:@kaoringomushi
Twitter:@kaoringomushi
入学後のお悩みにQ&A形式で答える「新いちねんせいお悩み相談室」はこちら。
新いちねんせいお悩み相談室
タイトル画像:ごや