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子どもの心を耕す外国語活動 第2回

子どもの心を耕す外国語活動

2016年5月23日 更新

加賀田 哲也 大阪教育大学教授

「かかわり合い、伝え合い、つながり合う」ことを目ざした、小学校英語の実践をご紹介します。

加賀田哲也(かがた・てつや)

1965年福岡県生まれ。大阪教育大学教育学部教授。米国シアトルの州立ワシントン大学(理論言語学)および大学院(教育心理学)を修了後、大阪大学大学院人間科学研究科博士課程後期修了。博士(人間科学)。大学で教員養成に携わる他、小学校、中学校、高等学校などで英語授業改善のための指導や教員研修に当たっている。光村図書中学校英語教科書『COLUMBUS 21』編集委員を務める。

第2回 「色」や「形」を使ったアクティビティ

今回より、私が考える外国語活動の意義をいかに授業で具現化していくか、アクティビティ(学習活動)を紹介しながら考えていくことにします。

さて、私がアクティビティを設計するとき、心理学や人権教育で用いられるエクササイズをよく参考にします。今回は、自己や他者に対する理解を深めるための、「色」や「形」を使った「投影法」というエクササイズを紹介しましょう。
 “Hi, friends! 1” の Lesson 5でも、「色」や「形」が扱われています。自分の好きなTシャツの模様や色を “I like black and white hearts.” や “I like blue triangles.” などと表現していきますが、ここでご紹介するアクティビティはそれとは少し違います。

授業のはじめに、先生は子どもたちの今日の気分を表現させるために “How are you?” とよく質問されますが、子どもたちからは、“I’m fine.” や “I am hungry.” といった答えしか返ってきません。そこで、ときには、今の自分の気持ちを「色」に例えてやり取りさせてみてはどうでしょうか。
   “What color are you today?”
と尋ねます。すると、子どもたちからは、“I am blue.” “I am red.” “I am yellow.” などさまざまな応答が返ってきます。次に “Why blue?” と選んだ色の理由についてきいてみましょう。理由については日本語で答えてもいいことにします。子どもたちからは、「今日はすっきりとした気分だから」「今日は楽しい外国語活動の時間があるから」など、実にたくさんの理由が挙げられるでしょう。

自分を形と色に例えると

A:“What color are you today?”
B:“I am blue.”
A:“Why blue?”
B:今日はすっきりとした気分だから。

次に、色ごとにグループを作り、理由を述べ合います。すると、同じ色を選んだ場合でも、さまざまな理由があること、つまり人によって感じ方、捉え方が異なることに気づきます。

自分の性格を、形で表現させることもできます。
    “What shape are you?”
すると、子どもたちからは、“I am a triangle.” “I am a star.” “I am a circle.” などの発話が聞かれるでしょう。次に、“Why star?” と、その形を選んだ理由を尋ねます。ここでもさまざまな理由が挙げられるはずです。そして最後に、形ごとにグループを作り、その理由について述べ合うと、「色」の場合と同じように、同じ形でも多様な理由が挙げられていることに気づくでしょう。

A:“What shape are you?”
B:“I am a star.”
A:“Why star? ”
B:かっこいいから。

時間があれば、次のようなやり取りもできます。

A:“What shape am I?”
B:“You are a circle.”
A:“Why circle?”
B:いつも優しいから。

これは、自分の性格を相手がどう捉えているか知るためのエクササイズです。もしかしたら、「自分が気づいていない」自分を指摘され、はっと感じる瞬間があるかもしれません。

このように自分の今の気持ちを「色」に、自分の性格を「形」に例えるエクササイズは、自己や他者についての理解や多様性への気づきにつながるのです。

次回は、自分や他者を大切にする気持ちを育む活動を紹介します。

Illustration: Atsushi Hara


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