子どもの心を耕す外国語活動
2016年10月31日 更新
加賀田 哲也 大阪教育大学教授
「かかわり合い、伝え合い、つながり合う」ことを目ざした、小学校英語の実践をご紹介します。
加賀田哲也(かがた・てつや)
1965年福岡県生まれ。大阪教育大学教育学部教授。米国シアトルの州立ワシントン大学(理論言語学)および大学院(教育心理学)を修了後、大阪大学大学院人間科学研究科博士課程後期修了。博士(人間科学)。大学で教員養成に携わる他、小学校、中学校、高等学校などで英語授業改善のための指導や教員研修に当たっている。光村図書中学校英語教科書『COLUMBUS 21』編集委員を務める。
第6回 みんなちがって、みんないい
私が両手をひろげても、
お空はちっともとべないが、
とべる小鳥はわたしのように、
地面(じべた)をはやくは走れない。
わたしがからだをゆすっても、
きれいな音はでないけど、
あの鳴るすずはわたしのように
たくさんなうたは知らないよ。
すずと、小鳥と、それからわたし、
みんなちがって、みんないい。
これは、金子みすゞさんの『私と小鳥と鈴と』という詩です。「みんなちがって、みんないい」――なんて素敵な言葉でしょう。
みんなありのままの自分でいいのです。人にはそれぞれ長所があり短所もある、できることもあるしできないこともある、それでいいんだ、という「自他を尊ぶことの大切さ」がメッセージとして心にしみわたってきます。
今回は、この詩を外国語活動で生かすアクティビティをご紹介します。
“Hi, friends! 2”のLesson 3には「できることを紹介しよう」という単元があります。このレッスンでは、「自分ができること」についてのインタビュー活動を行うことが一般的なようです。この活動を通して子どもたちは、「自分にはできるけど、相手にはできないこと」や、反対に「相手にはできるけど、自分にはできないこと」があることに気づくでしょう。そこで、その気づきを生かした活動を行います。
この活動では、インタビュー活動で得られた情報をもとに、以下のように発表させます。
A:I can ○○, but (B) can’t ○○.
B:I can △△, but (A) can’t △△.
A&B:All are different. All are great!
最後の“All are different. All are great! (みんなちがって、みんないい)”は二人で言わせるといいでしょう。
ある小学校では、以下のような会話が見られました。動作をつけて発表させると、より楽しい活動になります。
りょう:I can do karate, but Nagisa can’t do karate.
なぎさ:I can do calligraphy well, but Ryo can’t do calligraphy well.
りょう&なぎさ:All are different. All are great!
授業では、ペアやグループで「動物」「家族」「アニメ・キャラクター」バージョンを考えさせることもできます。
○「動物」バージョン
Whales can swim, but cats can’t swim.
Cats can jump high, but whales can’t jump high.
All are different. All are great!
○「家族」バージョン
My mother can sing well, but my father can’t sing well.
My father can drive, but my mother can’t drive.
All are different. All are great!
○「アニメ・キャラクター」バージョン
Doraemon can use Dokodemo Door, but Jibanyan can’t use Dokodemo Door.
Jibanyan can punch 「ひゃくれつ肉球」, but Doraemon can’t punch 「ひゃくれつ肉球」.
All are different. All are great!
この活動が難しい場合は、以下のようなシンプルバージョンを使ってもいいでしょう。
A:I can play soccer.
B:I can play baseball.
A&B:All are different. All are great!
A:I can cook pasta well.
B:I can cook curry well.
A&B:All are different. All are great!
この世に生を受けた私たちは、一人一人がかけがえのない素敵な存在なのです。みんな違って、みんないいのです。他者の多様な見方、考え方を受け容れることができれば、人を傷つけたり、いじめたりする人がいなくなるはずです。
英語教育では、聞いたり、話したりするといった技能面の指導も大事ですが、それぞれの人や文化のもつ多様性に気づき、受け容れ、相互に思いやる心、敬う心、いたわる心を育んでいくことも大切です。このことが21世紀の課題である「多言語・多文化共生社会の構築」への第一歩になると信じています。
これまで6回にわたり、「子どもの心を耕す外国語活動」について連載させていただきました。最後までご一読くださったみなさまに、心より感謝申し上げます。
Illustration: Atsushi Hara
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