みつむら web magazine

第3回 依頼

ALTとの会話のコツ

2025年3月10日 更新

窪田 遼 株式会社イーオン

英会話イーオンと光村図書のコラボ企画。
小学校の先生方がALTとコミュニケーションを取るときのコツをお伝えします。

適切な依頼のしかたで、円滑なコミュニケーションを

Hello, teachers! My name is Ryo Kubota from AEON.
私はイーオンの学校法人向け英語研修で講師をしています。英語を教えることが仕事なのですが、ネイティブの講師たちとの日々のミュニケーションでは、やっぱり英語は難しい!と感じることもしばしば。その中でも特に難しいなと初めて大きな壁を感じたのは、一緒に働く先生たちに指示を出したり、依頼をしたりする場面でした。

イーオンで主任講師として働き始めて間もなく、先輩のネイティブ講師から、「ものを頼むときにどうしてそういう言い方になるのか」とムスッと言われたときのことは今でも鮮明に覚えています。当時は何が相手を不快にさせているのか、見当もつかずにびっくりしたのですが、そのときに何が悪かったのか、自分がどういう思いで話していたのか相手の先生と話し合い、どう話すべきだったかきちんと教えてもらったことが後の財産になりました。

今思えば、「外国人には、はっきりものを言わないと通じない」といった勝手なステレオタイプを相手に押しつけていたことが根本の原因でした。相手との関係性や、お願い事の内容によって表現を使い分けて配慮を示さないと、関係性さえも壊してしまいかねないのは、英語でも日本語でも同じことです。今回はそんな私の苦い体験から学んだ「英語での依頼のしかた」ついて解説していきます。

「英語ではなんでもはっきり言わないと伝わらない」ってホント?

確かにはっきり言えばこちらの要望は通じるでしょう。だからといって配慮のない物言いをしていいということではありません。大切な長期的な人間関係がリスクにさらされているかもしれません。また、英語には丁寧な表現がないというのも誤解です。特に依頼という、コミュニケーションの中でも比較的気を遣うやり取りでは、相手との関係性や、依頼内容の大きさによって、使う言葉の丁寧さを調整するのがおすすめです。ALTとのコミュニケーションは、子どもたちに向けて教室で発するクラスルームイングリッシュとは違い、大人どうしの双方向なやり取りです。適切な依頼の方法を学び円滑なコミュニケーションを目ざしましょう。

依頼のコミュニケーションを成功させるポイント

英語で円滑に、双方ストレスなく依頼をするために抑えておきたいポイントを3つご紹介します。

①依頼は相手に断る余地を残すのがマナー。
②命令文は ‘please’ をつけても命令。依頼とは異なるニュアンスに。
③相手の承認を得ずにこちらの希望だけ伝えるのは失礼になることも。

3つのポイントを踏まえて、おすすめの依頼表現と注意するべき表現を紹介していきます。

おすすめの依頼表現

学校で一緒に働くALTとのコミュニケーションで安心して使える依頼の表現を紹介します。カジュアル、ニュートラル、フォーマルの3つの段階に分けて紹介しますが、フォーマルな表現は口頭ではあまり使わないので、参考までに。

おすすめの依頼表現【Casual】
緑色のエリアで紹介したカジュアルな表現は、親しい同僚など身近な人に対して日常的によく使います。どれも疑問文の形式で相手の都合や意向を気にしていることがわかると思います。カジュアルな表現ですが、学校でALTに対して普通のことをお願いするのであれば、積極的に使って問題ありません。

【Neutral】
黄色のエリアで紹介しているのはニュートラルな表現です。口頭でのコミュニケーションでは丁寧に聞こえます。込み入ったお願いなど、普段あまりしないようなお願いをするときに使います。カジュアルな表現が、「相手がしてくれるかどうか」を直接的に聞いていたのに対して、「~というお願いしてもよいか」を聞いていて、婉曲的で丁寧に聞こえるのが感じられると思います。

【Formal】
ピンク色のエリアで紹介したのは最大限に丁寧な言い方と考えてよいでしょう。相手が予期していないような依頼内容であるときや、相手が明らかに立場の異なる方のときなどに多く使われます。書き言葉としても適切です。ちょっとしたお願い、例えば「ドアを抑えていて」といったようなお願いには普通は使いません。 

注意すべき表現①

お願いをするときの英語の表現と言えば ‘please’ ですが、少し注意が必要です。
‘please’は依頼の疑問文や命令文につけて使うことができます。
例えば、“Speak more slowly, please.” や “Could you speak more slowly, please? のように。
“Could you speak more slowly, please?” は、依頼の疑問文に丁寧さが加わったような印象を受けるので問題ありません。一方で、命令文に ‘please’ をつけた “Speak more slowly, please.” は丁寧に命令をしている形になります。依頼というより、指示をしていると考えましょう。短く明確な指示が必要な場面には適していますが、依頼をしているつもりでこれを多用するのは避けたほうがよいでしょう。こちらの意図に反して、上から目線、命令口調に聞こえてしまっているかもしれません。断る自由がないということに強い抵抗を感じる人もいます。英語を使ったコミュニケーションでは異なる文化的な背景に対する気配りも大切ですね。

注意すべき表現②

もう一つ注意すべき表現として紹介したいのが、 “I want you to....” です。「あなたに~してほしいです。」と訳されます。私はこれで大失敗をしました。外国人のスタッフと仕事をするうえで、うまく指示が通らないことに課題を感じて試行錯誤をしていました。もっと直接的に、はっきりと指示をしなければと考えたのでしょう。この表現をよく使っていました。日本語に訳してもそんなに強い表現にも思えなかったのも理由のひとつです。でもこの表現、[私がしてほしい事=あなたがする事]という構造にどうしてもなってしまうんです。毎日一緒に仕事をする仲間からすると、小さな違和感も積み重なります。ある日、なんでそんな言い方するのと怒られてしまいました。

こちらの希望を伝えたいときは、代わりに “I would like you to....” を使うのをおすすめします。相手の意志を尊重するニュアンスが出ます。そのうえでやはり、上記でおすすめをした依頼の表現を一緒に使うとよいと思います。例えば、 “Could you help me with my next class? I would like you to interview my students in English.” のように。

実践 会話例

今回はALTとの会話を想定して、異なる依頼内容の会話例を動画にしました。Dialogue 1でも2でも、A(担任の先生)とB(ALT)の関係性は共通ですが、依頼する仕事の大変さや、日常的によくある仕事なのかといった違いで、依頼表現が変わっていることがわかると思います。

 

動画のスクリプト

A: 担任の先生 / B: ALT

■Dialogue 1:Casual Request
A: Are you busy right now? 
B: Not really. 
A: Could you help me with these boxes? I need to bring them to the classroom. 
B: Sure, no problem. 

■Dialogue 2: Moderate Request
A: Do you have a second? 
B: Of course. 
A: Can I ask you to have a meeting with me after our next lesson? I would like to talk about the schedule next week. 
B: OK. 

Thank you for reading! See you next time!

窪田 遼(くぼた・りょう)

株式会社イーオン 法人事業本部 教務コーディネーター

留学経験なしでイーオンに入社し、イーオンスクールでの教務主任などを経て現職。全国の自治体での教員研修を担当。特に、小学校教員への指導には定評がある。J-SHINE 小学校英語指導者資格保有。

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