小学校英語 お悩み相談室
2018年6月19日 更新
小泉 仁 東京家政大学教授
2020年度から本格化される、小学校での英語教育。先生方のお悩みに、小泉先生がお答えします。
5、6年生にもなると、意味や目的が分からないまま、英語を呪文のように唱えることに自然と抵抗を覚えるようになります。いわゆる思春期に入ってくるので、ノリが悪く見えるのは、自然なことかもしれません。低学年の子どもは先生のまねをして歌やチャンツに夢中で取り組みますが、高学年になると、物事を論理的にとらえる能力が発達し、「何を言っているのか知りたい」という気持ちが先行するようになります。
では、どうしたらノッてくれるか。そのためには、歌やチャンツの中に、子どもたちがチャレンジしたくなるような要素を盛り込みたいですね。決まりきった内容ではなく、自分の思いを英語で表現してみる場面を作ることが重要です。教材どおりではなく、少しレベルを上げてみてもいいかもしれません。
例えば、「We Can! 1」では、“What would you like?”と食べたいものを問い、“I’d like~ .”と答えるチャンツを紹介しています。表現の型を練習するチャンツなのですが、子どもがほんとうに好きな食べものを、“I’d like beef steak, ramen, fried chicken and spaghetti!”のように、早口にいくつでも言ってよいことにしてはどうでしょう。既成の音源に合わせてもよし、学級担任のタンバリンでもよいので、リズムに乗ることを条件にして子どもに工夫させます。
また、歌の場合、子どもたちが本当に興味をもちそうな歌を選ぶ努力も必要でしょう。
ときには洋楽のラブソングなどを聴かせてみる。「この歌詞はこういう意味なんだよ」と説明したときに、子どもたちは少し背伸びしたような気分になれますよね。
彼らが興味を引かれる歌の中に、さりげない学びがあればいいと思います。音楽の先生と協力するなどして、高学年の子どもが好む歌を探してみてください。英語の歌は楽しいと思えるように工夫したいですね。
※1 英語の単語や文をリズムに乗って発音すること。
次回は、「英語の評価をする自信がありません」という質問にお答えします。
Illustration: 小林マキ
本連載は、広報誌「英語教育相談室」にも掲載されています。本誌の内容はこちらから。
小泉 仁(こいずみ・まさし)
東京家政大学教授。元・文部科学省初等中等教育局教科書調査官。日本児童英語教育学会(JASTEC)会長。一般財団法人語学教育研究所理事。『COLUMBUS 21 ENGLISH COURSE』の編集委員を務める。