小学校英語 お悩み相談室
2017年10月20日 更新
小泉 仁 東京家政大学教授
2020年度から本格化される、小学校での英語教育。先生方のお悩みに、小泉先生がお答えします。
フォニックスは、英語の音と文字の関係を教える指導法。もともとは、英語圏の子どもたちに読み書きを教えるために開発されたものです。学習指導要領では、「発音と綴りを関連づけた指導」は中学校での指導事項とされていますから、小学校では、中学生になったときにスムーズにフォニックスが始められるよう、英語の音と文字に慣れ親しむ工夫ができれば十分だと思います。
外国語として英語を学ぶ日本の子どもたちにとって、まず大切なのは、音素をしっかりと認識すること。“cat”は、c、a、tの文字がそれぞれ /k/、/æ/、/t/ という三つの音素から成っているということを、さまざまな体験から意識の中に取り込むのです。
そのためには、音と文字の関係を意識させるような活動を取り入れていきましょう。例えば、onset(語頭音)あるいはrime(語尾音)が同じ単語に着目します。“cat, bat, mat”と三つの単語を並べて、その共通性に気づかせる、あるいは、“bag”を加えて、仲間はずれを探すゲームもよいかもしれません。こうした単語を掲示板に貼り出すのも効果的です。「今週はcから始まる単語」など、テーマを決めて掲示するとよいですね。
ここで重要なポイントは、提示する単語は3~4文字程度の短い、耳になじんだものであること。カタカナ言葉として知っている単語もよいでしょう。単語と一緒にイラストを添えれば、子どもたちにも読めるはずです。この「読めた!」という成功体験が大事なのです。フォニックス指導のために未習の単語を教え込むのは本末転倒です。
小学校では、教員が音と文字の関係を整理し、耳になじんだ語を子どもの目に触れさせることがまず必要です。子どもたちの読みたい気持ちを高めるように工夫し、彼らが英語を書き写したくなるまで待てたら、理想的です。
Illustration: 小林マキ
本連載は、広報誌「英語教育相談室」にも掲載されています。本誌の内容はこちらから。
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小泉 仁(こいずみ・まさし)
東京家政大学教授。元・文部科学省初等中等教育局教科書調査官。日本児童英語教育学会(JASTEC)会長。一般財団法人語学教育研究所理事。『COLUMBUS 21 ENGLISH COURSE』の編集委員を務める。