小学校英語 お悩み相談室
2018年12月11日 更新
小泉 仁 東京家政大学教授
2020年度から本格化される、小学校での英語教育。先生方のお悩みに、小泉先生がお答えします。
名字でよぶか、ファーストネームでよぶか、これに関しては一概にどちらが正しいとは言い切れません。先生が普段から子どもたちをファーストネームでよんでいるクラスなら違和感はないでしょうけれども、名字に「さん」を付けてよぶことを基本としている学校もあります。ファーストネームが学校の方針にそぐわないのであれば、英語の時間もそのまま名字でよんでかまわないでしょう。
ただ、日本では、敬意を表すために「名字+さん」でよぶことが基本ですが、それは世界共通の文化というわけではありません。英語圏では、目上の人に対してもファーストネームでよぶことがありえます。大学でも、先生自身が学生に「ファーストネームでよんで」と言うことがありますね。お互いにファーストネームでよび合うことにより、人間関係を近づけようとしているわけです。
基本的に、ネイティブのALTにとって、子どもたちにファーストネームでよばれることは、親近感をもってもらっているという意味では、喜ばしいことのはずです。逆に敬称と名字でよばれると、もしかするとよそよそしさを感じてしまうかもしれない。言葉によって異なるそういった文化の違いを、子どもたちにも理解させられるとよいですね。
ネイティブのALTと触れ合える機会を最大限に活用し、英語の時間だけは異文化を体験する場として切り替え、ファーストネームでよび合うのも一つの考え方だと思います。子どもたちは、日本とは異なる、英語圏特有のコミュニケーション方法を学ぶことができるはずです。
授業中にどうよぶかについては、先生どうしでしっかりと話し合って方針を決めるとよいでしょう。名字でよぶと決めた場合でも、ALT にきちんと説明すれば、分かってもらえると思います。お互いに、文化の違いを認めつつ歩み寄る姿勢をもちたいですね。
Illustration: 小林マキ
本連載は、広報誌「英語教育相談室」にも掲載されています。本誌の内容はこちらから。
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小泉 仁(こいずみ・まさし)
東京家政大学教授。元・文部科学省初等中等教育局教科書調査官。日本児童英語教育学会(JASTEC)会長。一般財団法人語学教育研究所理事。『COLUMBUS 21 ENGLISH COURSE』の編集委員を務める。