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千葉大学の学生さんからの質問

教えて! 先輩

2023年10月18日 更新

書写教育について学ぶ大学生からの疑問に、教育界の第一線で活躍する先輩がお答えします。

千葉大学教育学部を訪問

千葉大学教育学部は、西千葉駅からほど近い緑豊かなキャンパスの中にあり、学部そのものが総合大学といわれるほど多彩な専門分野を擁することで知られています。書写教育も充実しており、「文字を正しく整えて書くことは、教員としての基礎的な能力」という考えのもと、小学校および中学校教員養成課程の全学生を対象として「書写」の授業が行われているそうです。

先輩への質問 
→回答:西野曉子先生(千葉市立弁天小学校 教頭)

今回は、樋口咲子先生(千葉大学教育学部教授、千葉大学教育学部附属中学校長)のもとで学ぶ、教員志望の学生のみなさんからの質問に、小学校教員として長年指導経験のある西野曉子先生(千葉市立弁天小学校 教頭)にお答えいただきました。

書写の授業で大切なのは、教師自身の書き文字がどうであるかよりも、どうやったら読みやすく書けるかという 原理・原則を指導することです。質問された方は、毛筆の技能に自信がないのかと思いますが、いまの書写の教 科書には、毛筆の運筆動画なども用意されているので、教員がお手本を示さなくても指導できる方法はあります。 教科書紙面の QR コードから手軽に視聴できるので、うまく活用するといいですね。

『書写』4年p8-9紙面
令和2年度版『書写』4年 p8-9
運筆動画「林」
運筆動画「林」 動画はこちら

 

なかには、書道教室などに通っていて、原理・原則をある程度わかっているお子さんもいます。その場合、「あなたの今日の目標は何か」ということを明確にして、それができたかどうかを子ども自身に考えさせるといいと思います。考えさせるということは、技能にたけている子もそうでない子も、どちらにも必要なことです。

ちなみに私は、体育はあまり得意ではありませんが、どんな技能をどうやって教えるかということを明確にして、日々の授業を行っています。自分でお手本を見せられないときは、タブレット端末で模範の動きの映像を視聴できるようにする工夫もあります。得意でなくても指導できるものですよ。

上手に書くというよりも見やすくするために、少し強めの筆圧でくっきり書くように意識しています。文字に自信がない場合は、とにかく終筆を意識するとよいと思います。止め、はね、はらいなどの終筆がしっかりしているときちんと見えます。

また、ノートと同じで、板書も余白が大切です。だらだら書かず、適当な余白をとったり、簡潔な言葉でまとまりごとに書いたりすると見やすくなりますね。

板書は慣れも大きいので、私も新任のころはなかなか思うように書けず、曲がったり時間がかかったりしていたように思います。つい板書に集中しすぎてしいまい、その間に子どもたちがざわざわしはじめたり……。今では、しゃべりながらでも書けるようになりましたが(笑)。みなさんも大丈夫ですよ。

教師は、子どもの成長を身近に感じられる職業です。そして実はその中で、自分自身の成長も感じられる仕事だと思います。例えば前年と同じ学年を担当したとしても、同じやり方は通用しません。子どもが違うので、毎年、引き出しを増やしていく必要があります。もちろんたいへんなこともありますが、工夫する楽しさもあり、子どもたちから「できた!」「わかった!」「もっとやりたい!」という声があがったときに大きなやりがいを感じます。

書写に関しては、3年生の初めての毛筆の授業が好きですね。新しい書写道具をわくわくしながら広げる子もいれば、恐る恐るそっと触っている子もいる。新しい筆に墨をつける瞬間の子どもたちの目はきらきらしています。そんな初めての瞬間に立ち会えるのが小学校書写の醍醐味ですね。みなさんにもぜひ味わっていただきたいです。

千葉大学の授業の様子

こちらは、樋口咲子先生の「書写概論(講義名)」の講義の様子です。小学校、中学校の教員を目ざす35名の学生さんが履修しています。

本時の学習課題は「文字の配列」
本時の学習課題は「文字の配列」
 
書き文字の練習の様子
自分が書いた文字について、気がついたことをメモします。
 
書き文字を見せ合う様子
近くの席の人と書き文字を見せ合い、よい点、反省点を確認。
机間指導
樋口先生の机間指導。
学生自身がどう考えているかも確認しながら指導を行っています。
 
 
板書の練習の様子
【板書の練習の様子】
文字の大きさ、配列だけでなく、すばやく板書できるかどうかまで気にかけている様子が印象的でした。

わたしたちは、将来こんな教員になりたい! 

授業の最後に、学生のみなさんに、「書写の授業でもっとも大切にしたいことは何か」というアンケートに回答していただきました。「子どもたちに達成感を味わわせてあげたい」「自分も何かができたとき嬉しかったから、同じ経験をさせてあげたい」など、頼もしい答えをたくさんいただきました。

Q 教員になったとき、書写の授業でもっとも大切にしたいことは何ですか。(①~⑥から選択)
 ①書写に興味のない子にも、書写を好きになってもらう
 ②子どもたちが上達を実感できるような指導
 ③筆の持ちかた、用具の使い方などの指導
 ④限られた時間内に授業をスムーズ行うための事前準備
 ⑤個に応じた指導
 ⑥その他

回答結果

アンケート回答結果

 

千葉大学の学生のみなさん、ご協力ありがとうございました。
みなさんが教壇に立つ日を楽しみにしています!

樋口咲子(ひぐち・さきこ)

千葉大学教育学部教授、千葉大学教育学部附属中学校長。光村図書小学校・中学校「書写」教科書編集委員。全国大学書写書道教育学会常任理事。全日本書初め大展覧会審査顧問。学生や現職教員の書写書道教育に携わるとともに、書家としても活動している。

西野暁子(にしの・あきこ)

千葉市立弁天小学校教頭。光村図書小学校「書写」教科書編集委員。公立小学校教諭として、長年にわたり書写指導に携わったのち現職。

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