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「許容の形」とは

書写の疑問、すべて解決!

2015年3月2日 更新

編集部には、毎日全国各地から質問が寄せられています。教科書の内容に関することはもちろん、筆順などの文字に関する一般的なことから文字の成り立ちや書写教育の歴史にいたるまで、バラエティーに富んだ内容です。
ここでは、そんな中から代表的なものを選んで、編集部としての見解を交えつつ解説をしていきます。

「許容の形」とは、どのような字形を指すのですか?

漢字は中国で発生し、3000年以上の長い年月をかけて今日まで書き継がれてきました。書写の教科書には基本的に標準とされている楷書の字形を掲載していますが、文字には多くの人々の手によって書き継がれてきたさまざまな書き方があります。その中で、「この書き方だけが正しい」と言いきることは大変難しく、また、「他の書き方はすべて間違い」ともいえないのです。このように、長い間の習慣に従ったさまざまな書き方を、いわゆる「許容の形」といいます。

平成28年に文化審議会国語分科会が報告した「常用漢字表の字体・字形に関する指針」には、常用漢字表に示された文字を筆写する際に、字形に違いがあっても同じ字体として認めることのできる例として、以下のようなさまざまな許容の書き方が示されています。

  1. 長短に関する例
  2. 方向に関する例
  3. つけるか、はなすかに関する例
  4. はらうか、とめるかに関する例
  5. はねるか、とめるかに関する例
  6. その他

これが現在、許容の形を考えていくときの一つの目安となっています。

では、書き文字の正誤の判定の例として、「衆」を例にとって考えてみましょう。

「衆」の標準、許容、不適切、誤字の例

一般に、一文字の途中に書く縦画の終筆は止めまたははねです。「衆」の8画目の縦画は標準では止めですが、上記(5)の例にのっとって、止めをはねに書いても許容されます。この場合のはねは、次の画への移動をスムースに行うための自然な筆使いといえるでしょう。

右方向へのはねや、片仮名の「レ」のように右上方向に払う書き方は不適切です。下部の形が「家・象」の下部と同じ形になると誤字になります。


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