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第8回 「比べる」ことで「考える力」を引き出す

そがべ先生の国語教室

2015年12月2日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第8回 「比べる」ことで「考える力」を引き出す

「21世紀型学力」ということが言われ、思考力の育成が重要課題として話題になっています。「アクティブ・ラーニング」という言葉も新しいキーワードとして取りざたされていますね。「また新しいキーワード?」と戸惑う先生方もいらっしゃるかもしれません。でも、例えば「思考力の育成」は、実は平成20年版学習指導要領の「言語活動の重視」はまさに「思考力・判断力・表現力を高める」ことをねらったものです。そして、それは学んだ知識技能を活用して目の前のさまざまな課題を解決していくためのものです。

画像、「君は最後の晩餐を知っているか」のプリントを見る生徒
「君は『最後の晩餐』を知っているか」​​​​(2年)では、
修復前と修復後の絵を比べさせた。

この「身につけた力を活用して課題を解決していく」「ある課題について取り組んでいく中で新たな知識や技能を身につける」という学習を意図的に展開しようとするのがアクティブ・ラーニングです。こう考えると、一貫した流れの中にあるのです。私たち現場の教師は、そうした大きな流れをつかみ、教育がどういう方向を見据えて日々の改善を進めようとしているのかを考えていきたいですね。

さて、今回は「考える力(思考力や判断力等)」を育てるという観点から、国語の授業づくりにひと工夫を加えてみよう!というお話です。

私は、「考える力」を引き出し伸ばしていくために、とても大切で効果的なのが「比べる」という思考・活動だと考えています。それは次の理由によります。

  • 「比べる」という思考・活動は、基本的で多くの児童・生徒に取り組めます。
  • 「比べる」と、共通点や相違点に気づきます。
  • そうして生まれた「気づき」は「問い」を引き出します。
  • また「気づき」を得ると、学習者たちは「解釈」しようとし始めます。

「比べて考える課題」を与えると、学習者たちは、自ら気づき、問いをもち、解釈して解決しようとし始めるのです。学習者にとって言語活動を展開していく必然性が生まれ、学びはホンモノになっていくというわけです。

もちろん、とても有効な「比べる」という思考・活動ですが、導入に当たって留意すべきポイントもあります。

  • 「Aは○○だが、Bは□□だ。」という、比べてものを言う表現の型をしっかり用いること。
    → 学習者はともすると、比べているのに「Aは○○です」と一方だけ指摘することがあります。
    比べる思考で気づいたことを表現する型を徹底することで、考えが深まり、説得力も増します。
  • 比べるときは観点をそろえること(同じ観点で比べること)を徹底すること。
    →「リンゴは赤いけど、バナナは細長い」というのは比べる言い方をしているけれど、比較しているとは言えない。
    「(△△という観点で比べると)Aは○○だが、Bは□□だ」のように( )内を言語化したり、確認したりすることも大切なのです。

では、具体的にどのような指導が考えられるでしょうか。次回、詳しくご紹介いたします。

次回は、「比べることで読む力を育てる」というテーマで、実践をご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

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