読書Q&A 学校図書館(理論編)
2015年1月1日 更新
赤木かん子 児童文学評論家
どうすれば子どもたちが集まる図書館になるのでしょう。本のそろえ方や整理のしかたなど、学校図書館の作り方や運営方法に関する悩みにお答えします。
A(回答)
さて、絵本の分類の続きです。今、公共図書館が使っているNDCというやり方では、絵本は画家の名前のあいうえお順で分類することになっています。そうして、それが正式のやり方ではあるのです。なぜかというと、絵本は昔、画集のなかに入れていたからです。アメリカでドクター・スースがデビューして今のような絵本が作られ始めたのが1930年代、でも、NDCが作られたのは1920年です。存在しないものの分類は作らないよね。というわけで、絵本の出始めはピカソやダリの画集と同じ扱いだったのです……。そうして、本は書いた、描いた人のものである、というのがNDCの原則ルールですから、当然のように描いた人で分類した……(と昔だれかに教わった覚えがあるんですが、ウラはとってません。もし間違ってたらごめん)。
でも、絵本の数が増えてくると、いっしょに並べておくとなんか浮く。じゃあ、これだけ別置きしてもいいよってことで、別置記号Eをもらって独立したんですよ、絵本が。そのときに、小さい人は本を描いた人がいるなんてわからない、ということに思い至ればよかったんですが、あいにく気がつかなかった……。なので、画家の名前で分類する、というやり方をどうにかすることは検討されなかったわけです。私自身、実際に小学校図書館を作り始めて、初めて、ここのお客さまは字も数字も読めないんだってことに最初に気がついたときはショックでしたから、実際に子どもに接しない図書館学者が気がつかなかったのはムリもないと思います。
小さい人にも本には著者がいる、ということを教えるべきだと言う人もいますが、私は教えるのは害になると思っています。もちろんきいてくる人には言うべきですが、これはいわゆるサンタクロース問題で、自然にわかるまで放っておいたほうが心が豊かになるたぐいのことじゃないでしょうか。小さい人にはぐりとぐらは生きているのです。バーバパパやムーミンも。おまけに著者という概念ができるのは5年生からです。それに絵本には著者が二人いるので、絵描きの著者名で分けられたら、大人でも探せないということになるのです。レオ・レオニやエリック・カールはいいですが、逆に神沢利子のように文章を書いた人で探している場合、絵描きを覚えているかというと……ねぇ。もちろん、そこでカード目録なりコンピュータ目録なりを引けばすむことですが、毎日のことですからね。タイトル順のほうがはるかにわかりやすく、探しやすいです。ただし、前にも言ったと思いますが、シリーズものはシリーズの頭で取ります。そうしたら全部そろうからね。
ただし、これは絵本のみ!です。幼年文学からは文章を書いた人の、つまり原則通り著者の名前のあいうえお順で取ります。ときどきズッコケのような小説までタイトル順にしているところがありますが、それはしてはいけません。そのやり方は分類体系を壊してしまいます。柔軟にやっていいことと、絶対やってはいけないことを見分けるには、基礎知識と訓練が必要です。それを知らない人が勝手に変えると体系が壊れるので絶対にやらないでください。
赤木かん子
児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。