読書Q&A 学校図書館(理論編)
2015年1月1日 更新
赤木かん子 児童文学評論家
どうすれば子どもたちが集まる図書館になるのでしょう。本のそろえ方や整理のしかたなど、学校図書館の作り方や運営方法に関する悩みにお答えします。
A(回答)
さて、11月は、みなさんクリスマスの本を集めるのではないでしょうか。そうやって、テーマで本を集めるやり方を“別置(べっち)”といいます(Q2を見てください)。それを期間を決めて展示するのが“テーマ展示”、あるいは“ブックフェア”です。これはたいていの公共図書館では、2週間から1か月で取り替えますが、テレビの大河ドラマなどは、その番組が終わるまで……テーマによっては人気が衰えるまで、ということもあります。
ただし、このテーマ展示で分類体系を壊してはいけません。だから、やっていただいては困るテーマもあります。1か月だけならいいですが、忙しい先生方はなかなかそこまで手が回らないでしょうから、一度やるとずっと、になりかねません。テーマ展示の本は、終わったらもとに戻ってもらうのが原則なので、体系を壊すテーマ……たとえば“ドキドキわくわくする本”とか“動物が出てくる本”とかのテーマは、長くやられると困る別置です。だって何にドキドキするかは人によって違うもの。とりあえず、クリスマスだけは一度がんばってみてください。
というのは、5月に1回だけしか本を買わないと、秋冬ものの本は小学校になかなか入らないからです。ですから、11月くらいにもう一度、クリスマスや雪やお正月の本(これはあんまりないなあ)があるかをチェックして補充しないと、ないものは永遠にないことになってしまいます。ブックフェアは、お客様に本をアピールすると同時に、本棚のメンテナンスのためでもあるのです。それに、そうやって飾った本は覚えるしね。
ホントは、ブックフェアは半年前からやりはじめるのが普通です。なぜかというと、一つのテーマをやると決めたら、そのジャンルを勉強し、自分の図書館に何が必要なのかを考え、本を発注し、来たら装備する……という手順をこなすには半年かかるからです。図書館の仕事はそうやってやるのです。もちろん、先生方がそんなことをやるべきだなんてことは思いません。そこまでやるのには時間も足りないし、訓練も受けてません。
ただ、なんの仕事でもそうだと思いますが、図書館の仕事はそうやってやるものなんだということを知っているけど時間がなくてできないのと、初めからまるっきり知らないのとでは雲泥の差があるでしょう? それに、クリスマスの飾りつけは小道具もたくさんあるし、テキトーに大急ぎで飾ってもあまりダサくならないですむでしょう。見本の雑誌もたくさんあるしね。そうして冬休みに入ったら飾りははずし、クリスマスボックスと書いた段ボール箱にしまい、大そうじをして新年の飾りつけをセットしたら、今年の仕事はおしまいです。
赤木かん子
児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。