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第2回 「問題解決的な学習」とは

道徳キーワード

2016年12月12日 更新

学習指導要領の中から、ぜひ知っておきたい「キーワード」を取り上げます。長年にわたり道徳教育をリードしてきた6人の先生が、リレー形式で解説します。

解説:杉中 康平(四天王寺大学教授)

道徳科における「問題解決的な学習」とは

道徳科における「問題解決的な学習」とは、従来の道徳授業が読み物の「心情理解」のみに偏った形式的な指導になりがちであったという反省を踏まえ、「質的転換」を図るうえで、「体験的な学習」とともに提案された、多様な指導方法の一つです。

この学習は、道徳的な問題を多角的に考え、児童生徒一人一人が生きるうえで出会うであろうさまざまな問題や課題に対して、主体的に対処しようとする資質・能力を養う指導方法として有効です。また、他者と対話や協働しつつ問題解決する中で、新たな価値や考えを発見、創造する可能性もあります。つまり、「問題解決的な学習」を取り入れた授業では、問題の解決を求める探究の先に新たな「問い」が生まれるという、問題解決的なプロセスにこそ価値があるといえます。

「問題解決的な学習」になるための主な発問例

  1. ここでは、何が問題になっていますか。
  2. 何と何で迷っていますか。
  3. なぜ、■■(道徳的価値)は大切なのでしょう。
  4. どうすれば、■■(道徳的価値)は実現できるでしょう。
  5. 同じ場面に出会ったら、あなたならどう行動するでしょう。
  6. なぜ、あなたはそのように行動するのでしょう。
  7. よりよい解決方法には、どのようなものが考えられるでしょう。

「問題解決的な学習」を推進するうえでの留意点

「問題解決的な学習」は、一部改正学習指導要領(平成27年3月)にも示されているように「指導のねらいに即して」、「適切に取り入れ」なければなりません。ここでいう「指導のねらい」とは、いうまでもなく、「道徳的諸価値についての理解を基に」、「自己を見つめ」、「多面的・多角的に考え」、「自己の(人間としての)生き方についての考えを深める」という意味での「指導のねらい」です。

また、求められているのは、「問題解決的学習」であって、「問題解決学習」ではないということです。「道徳科における問題とは、道徳的価値に根差した問題であり、単なる日常生活の諸事象とは異なる」のです。

ややもすると、「問題解決」と称して「主題やねらいの設定が不十分な単なる生活体験の話合い」に終始したり、話し合いを盛り上げるために、やたらと「対立点」ばかりをあおるかのような授業になったりする場合があるので気をつけましょう。また、「道徳的価値」を学ぶことから離れた、「その場をうまく切り抜けるにはどうしたらよいか?」という、いわゆる「処世術」を学ぶようなことにならないようにしましょう。

子どもたちがしっかりと「道徳的価値」に向き合い、互いに意見や考えを交流し、学び合えるような工夫が必要です。

キーワードまとめ 「問題解決的な学習」とは

道徳的な問題を多角的に考え、児童生徒一人一人が生きるうえで出会うであろうさまざまな問題や課題に対して、主体的に取り組む学習。


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