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質問17 教科書以外の教材は使っちゃいけないの?

ここが知りたいQ&A

2017年10月30日 更新

35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた富岡 栄先生(麗澤大学大学院准教授)が、「特別の教科 道徳」に関するよくある疑問にお答えします。

回答:富岡 栄(麗澤大学大学院准教授)

学校教育法第34条には、「小学校においては、文部科学大臣の検定を経た教科用図書又は文部科学省が著作の名義を有する教科用図書を使用しなければならない。」(中学校にも準用)と述べられており、教科書を使用することが義務づけられています。

これまでの道徳の時間は、教育課程上の領域であったために教科書は存在せず、各出版社が発行している副読本、文部科学省や各自治体が作成した資料、あるいは教師の自作資料等を使用してきました。教科書指定がなかったので資料選定の自由度は高かったわけですが、特に検定制度があったわけではないので、資料の質に関しては、玉石混交の状態であったように思われます。

では、教科になれば道徳科の授業において教科書を必ず使用するのかといえば、一年間の全ての授業において教科書を使用しなければならないという拘束性はないと思われます。その理由として二つが考えられます。一つは、学校教育法第34条第2項に「前項の教科用図書以外の図書その他の教材で、有益適切なものは、これを使用することができる。」とあり、児童生徒の道徳性を育むことに、より効果がある場合は、教科書以外の教材を活用することが可能であることを明示しています。そして、もう一つは、学習指導要領には「児童(生徒)の発達の段階や特性、地域の実情等を考慮し、多様な教材の活用に努めること。特に、生命の尊厳、(社会参画、)自然、伝統と文化、先人の伝記、スポーツ、情報化への対応等の現代的な課題などを題材とし、児童(生徒)が問題意識をもって多面的・多角的に考えたり、感動を覚えたりするような充実した教材の開発や活用を行うこと。」(カッコ内は中学校)とあり、教科書以外の教材の開発が推奨されているからです。

しかし、これらのことは無為に教材を開発し、使用することを意味しているのではありません。児童生徒の実態や地域の実情等を考慮して、より道徳的価値の自覚が深まることが予想される場合に、年間指導計画に位置付けたうえで実施していくべきです。教材の開発を行っていくことは求められていますが、決して、思いつきや一過性のものであってはなりません。

富岡 栄(とみおか・さかえ)

麗澤大学大学院准教授。公立中学校教諭、管理職として、35年以上にわたり道徳教育の研究を続けてきた。平成27年3月、群馬県高崎市立第一中学校校長を定年退職。退職後は大学にて道徳教育に関する講座を担当。日本道徳教育学会、日本道徳教育方法学会の評議員を務める。平成27年一部改正「中学校学習指導要領解説 特別の教科 道徳編」の作成協力者の一人。

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