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学力を伸ばす学級経営Q&A 第6回

学力を伸ばす学級経営Q&A

2019年3月12日 更新

神山 安弘 専修大学客員教授

「主体的・対話的で深い学び」の視点から学級経営を考えるヒントを紹介します。

神山安弘(かみやま・やすひろ)

1951年横浜市生まれ。専修大学客員教授。元東京都江東区立明治小学校統括校長。文部科学省「全国学力・学習状況調査の分析・活用の推進に関する専門家検討会議委員」などを歴任。

第6回 3月の学級づくりのポイント

子どもにとって学級はどのような場所でしょうか? それは、そこに行くことが楽しく、待ちどおしいと思う場所です。なんでも話し合える友だちがいる、自分のことを理解してくれる先生がいる、分からないことが分かるようになり、できないことができるようになる、それが子どもにとっての「学級」です。

学級は、教師が子どもの個性や可能性を見つけ「育てる」場所であり、子どもが自分の力を発揮しながら「育つ」場所です。優れた学級経営は、子どもの心や学力を育てます。そして、学級づくりが進むと「子どもの力」は伸びます。

このコーナーでは、若い先生方から寄せられた質問をもとに、私の長年の経験を通して見えてきた「子どもの学力を伸ばす」学級経営の在り方についてお答えします。

Q.一年を締めくくる3月を迎えますが、子どもが一年間を振り返り、新しい学年に「意欲をもつ」ことができるようにするにはどのようにすればいいのでしょうか。

◆学級担任として一年を振り返る

3月は、一年間の学校生活を振り返り、子どもたちの成長・発達の状況を確認する時期です。そして、新しい学年への意欲をもたせる一年を締めくくる月です。子どもがこの一年、努力や挑戦してきたことに、喜びを感じとらせ自信をもたせるとともに、新しい学年や中学校への期待や目標をもたせることが大切です。そして教師は、学級や子どもの一年を振り返り、成果と課題を明らかにし、新年度に向けた準備を開始する時期だといえます。

◆「ギャップ」が新しいエネルギーを生む

学級担任をスタートした4月に学級経営案を作成し、学習指導、生活指導、児童理解、家庭との連携など、自分が目指す学級づくりを一年間実践してきたと思います。

3月は「学級の様子」や「授業の実態」を俯瞰し、今年度のスタートに自分が目ざした学級経営や授業づくりを確認してみましょう。成果や課題のなかで、迅速に対応すべき課題は解決に向け全力で取り組み、一年間の学級での学びが子どもに楽しく充実感あるものにしていきましょう。教師にとって目標と現実の「ギャップ」を直視することは、次に向けたエネルギーを生み教師力を高めます。

1.「学習指導」のチェックポイント

授業は子どもに確かな学力を定着させ、多様な可能性を伸長させる場です。学習指導のチェックは、子どもの授業の様子を観察することです。まず、学習を支える力です。
 (1) 授業に取り組む意欲や態度の定着
 (2) 学習規律・学習ルールの定着
 (3) 基礎的・基本的な学力の定着
 を点検しましょう。

次に、学習を展開する力です。
 (1) 個人で学ぶ学習技術(話す力・聞く力・考える力)の習得
 (2) 集団で学ぶ学習技術(話し合う力・協力して活動する力)の習得
 (3) 学び合う学習活動(友だちのよさを学ぶ、友だちの考えと比較し高める)の習得
 を点検しましょう。
 授業は子どものさまざまな「学ぶ力」が総合的に構成されて成立しています。「主体的・対話的で深い学び」を実践するために「学び」をチェックすることが大切です。

2.「生活指導」のチェックポイント

学級は子どもが安心して自分らしさを発揮する場です。生活指導のチェックは、学級の人間関係を観察することです。まず、学級に潜む子どもの問題を確認することが大切です。
 (1) からかい、持ち物隠し、仲間はずれ、集団による無視などの行為
 (2) 授業で集団の学びに参加しない
 (3) 休み時間や清掃時間に一人でいる
 を点検しましょう。

次に、生活指導で育成する基本的な資質や能力です。
 (1) 自らの考えと責任で行動する自主性
 (2) 自ら立てた規範に従って行動する自律性
 (3) 自ら積極的に取り組もうとする主体性
 を点検しましょう。

学級は学校生活の基盤です。子どもに「居場所」と「出番」があり、学校に行くことが楽しみになる空間を創ることが大切です。

3.一年間の成果と課題を発信

一年間を振り返り、子どもが努力や成長したこと、次につなげる課題をさまざまな場や機会をとらえて子どもや保護者に発信し、子どもに自信ややる気をもたせます。

 (1) 子どもに伝える。
   子どもが成長してきた姿を具体的に資料で提示することや学校行事などの場面を想起させ自分の努力を実感させる
 (2) 保護者に伝える。
   保護者会・個人面談・学級通信を活用し子どもの様子を伝える
 (3) 通知表・学習指導要録で伝える。
   通知表で子どもの成長の変容と次年度の期待、指導要録で新しい担任に子どもの学習・生活・健康の概要を記録で伝える。

◆3月の教師

3月は教師にとっても一年間の成果と課題を明確にし、次年度に向けた準備を開始する月です。「心と体と頭」をリフレッシュし、新しい出会いに向け自分の目標を決めることが大切です。学級担任として次の3点を目指しましょう。

1.「子ども」を理解する力のある教師

教室には多様な子どもがいます。子ども一人一人の行動から、その心を理解し受け止め、求めている援助を内容・質・量に過不足がないように用意して指導・援助することができる教師を目ざしましょう。

2.「学び合い」のある授業を実践する教師

子どもは授業で、友だちとかかわり合いながら学びを深め、社会の形成者としての資質や能力を身につけていきます。子どもに言語に関する能力を育成することや協働的な活動を構成できる教師を目ざしましょう。

3.「オンとオフ」の切り替えができる教師

教師は子どもたちへの指導や事務作業で多忙な毎日を送っています。仕事を効率的に行い自分の時間をつくることです。「心と体と頭」がリフレッシュし、新しい活力が生まれます。オンとオフを切り替える働き方を改善できる教師を目ざしましょう。

次回は、「主体的・対話的で深い学び」の視点からの学級づくりについて取り上げます。

Illustration: みずうちさとみ


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