
小学校英語 お悩み相談室
2017年5月15日 更新
小泉 仁 東京家政大学教授
2020年度から本格化される、小学校での英語教育。先生方のお悩みに、小泉先生がお答えします。
教員が教室で子どもたちに対して使う英語は、街の英会話学校に行ったら学べるようなものではありません。そこが、先生方も悩みどころなのではないでしょうか。
まず、お試しいただけたらと思うのは、ALTが子どもたちに出すすべての質問に、子どもと一緒に、小声で反応してみることです。これが第一歩かな、と思います。
そして次に、今度は自分も指導者目線になって、ALTが出した指示をオウムのようにもう一度繰り返してみる。教室の後ろのほうに立ち、集中力を欠く子どもに、「ほら、前向いて」などと言うよりも、英語でALTの指示をまねして言ってみたほうが、子どもにとってもご自分にとっても効果的だと思います。教室の、生の場面で使われるネイティブの英語を、ご自分の英語力アップのモデルとして利用しない手はありません。
もちろん、市販のクラスルーム・イングリッシュに関する書籍などを活用するのも手だと思います。ただし、最初から順番にひたすら覚えていく、というようなやり方はなさらないほうがいいと思います。無理に全部覚える必要はまったくありません。パラパラっと本を見てみて、「これは使えそうだな」と思ったものを2~3個ピックアップして、それを毎回必ず言うようにする。例えば“Time is up.(時間切れですよ)”と“Put them away.(片づけて)”だけは必ず言うようにする、など、ターゲットを絞り込んで使っていくのがいいのではないかと思います。
本当にどうしようもなく英語が苦手、という先生は、“Look.”と“Listen.”だけでも構いません。むしろ短い指示のほうが、子どもにも届きやすいと考えましょう。子どもたちに届くのは、長くても5語くらいの英文です。
とにかく、変に気負うことなく、ご自分のできる範囲のことから始めて、まずは先生が英語を楽しめるようになれるといいですね。
次回は、「掲示物をつくるときの注意点は?」という質問にお答えします。
Illustration: 小林マキ
本連載は、広報誌「英語教育相談室」にも掲載されています。本誌の内容はこちらから。
小泉 仁(こいずみ・まさし)
東京家政大学教授。元・文部科学省初等中等教育局教科書調査官。日本児童英語教育学会(JASTEC)会長。一般財団法人語学教育研究所理事。『COLUMBUS 21 ENGLISH COURSE』の編集委員を務める。
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