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【授業リポート】4年「ウナギのなぞを追って」 ~「ウナギの街」の特色を生かした授業づくり~

授業リポート

2023年3月23日 更新

2023年2月1日(水)に三重県津市の栗真小学校で行われた授業のリポートです。

「たくさんの人に、ウナギの〇〇を知ってもらおう!」

三重県津市は、ウナギが名物として知られる街。そんな地域の特色を生かし、同市立栗真小学校で、「ウナギのなぞを追って」(小学校国語4年)を題材にしたユニークな授業が行われました。ICTを有効活用しながら、子どもたちの主体的な学習を促す授業の様子をリポートします。

学習の必然性を高めるために、市内のウナギ店と協力

「ウナギのなぞを追って」は、ウナギの産卵場所というなぞを追った説明文。筆者は、海洋生物学者の塚本勝巳さんです。

教壇に立つのは、林裕子先生です。林先生の4年生のクラス(児童数14人)では、この単元の最後に行う活動として、以下のような内容を設定しました。

ウナギのなぞについて興味をもったところを要約し、リーフレットにまとめたものを、ウナギ屋さんに来るお客さんに読んでもらい、ウナギのことをもっとよく知ってもらう。

つまり、子どもたちの学習の必然性を高めるため、市内に豊富にあるウナギ店に協力を仰ぎ、「ウナギを食べに来るお客さん」を対象としたリーフレットを作るという言語活動を設定したのです。

子どもたちは、リーフレットの作成に着手する前に、身近な家族などを対象にウナギに関するアンケートを行い、ウナギで有名な津市の人々が、ウナギのことをどの程度知っているのかを調査しました。

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子どもたちが家の人に向けて行ったウナギに関するアンケート調査の一部

その結果、ウナギが有名なのに、多くの人がウナギについて多くの知識をもっていないことがわかりました。

キーワードを抽出して、要約にチャレンジ

そして、本時では、リーフレット作成の前段階である「要約」に取り組みました。林先生は授業の冒頭で、「伝えたいことが、伝わる要約になっているか確かめ合おう」という本時の目標を黒板に書き出しました。

子どもたちは前時までに、自分なりの要約文を作成済み。そこで、まず、林先生が「ウナギ屋に来たお客さんになったつもりで、自分の書いた要約文をもう一度読んでみよう。そのときに、キーワードだと思う短い言葉に印をつけてみて」と呼びかけました。

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「自分で作った要約文からキーワードを抜き出してみよう」と説明する林裕子先生

子どもたちは、タブレット端末に自分が書いた要約文を表示させながら、キーワードだと思う部分を囲ったり、マーカーで印をつけたりしていきます。

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タブレット端末の画面上でキーワードに印をつける子ども

5分ほどたってから、林先生が「印をつけたキーワードを発表してみよう」と話すと、たくさんの手が挙がりました。「レプトセファルス!」「マリアナの海!」……。子どもたちは、次々に自分の意見を口にします。それらのキーワードを、林先生が一つ一つ丁寧に板書していきます。たくさんのキーワードが挙げられますが、林先生は「例えば、『塚本さんの研究』というテーマで説明するとしたら、絶対に必要なキーワードはどれだろう」と問いかけ、子どもたちにテーマに対応するキーワードを精査させました。

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子どもたちからたくさんのキーワードが挙げられた。

次に、ペアワーク。友だちどうし、互いに要約したものを見せ合い、伝えたいことが伝わる要約になっているかを確かめます。「この文章はいらないんじゃない?」「これだと長すぎると思う」「わかりづらいところは削っちゃおう」……。子どもたちは、お互いにタブレット端末の画面や印刷したプリントを見せ合いながら、それぞれの要約文について、活発に議論を交わしていました。

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互いにタブレット端末を見せ合い、それぞれの要約文について指摘し合う。

本時はここで終了。子どもたちの振り返りでは「必要な文章と、いらない文章の区別がつかなくて難しかった」「要約は短すぎてもダメだし、長すぎてもダメなんだなと思いました」「すべてがキーワードのように思えて、絞るのが大変だった」などの感想が挙がり、子どもたちは簡潔に要約することの難しさを実感した様子でした。

ついにリーフレットが完成!

その後の授業でも引き続き、子どもたちは要約に取り組み、ついにリーフレットを完成させました。写真を用いたり、クイズを載せたりして、興味をもって読んでもらえるよう、レイアウトも工夫しました。

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完成したリーフレットの一例

完成したリーフレットを置いてもらえるように、子どもたち自ら、市内のウナギ店にお願いの電話をかけました。そして、あるウナギ店に快諾していただくと、バスに乗ってリーフレットを届けに行きました。店員さんへの説明も子どもたちが行い、お客さんに直接リーフレットを手渡すこともできました。

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ウナギ店の店員さんに、主旨を説明する子どもたち
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三つ折りにし、卓上に置かれたリーフレット

店でリーフレットを読んだお客さんからは、

  • びっしり書いてあってわかりやすい!

  • 海をキレイにするよう心がけないといけないなと思いました。

  • ウナギがどのような条件で生まれるのかをリーフレットで知ることができました。文章がわかりやすく、写真もあったので、読みやすかったです。クイズも楽しかったです。

  • 何気なく食べているウナギについて詳しく知ることができました。

  • クイズ難しかったです。よく調べているなと思いました。

  • 楽しく読ませていただきました。

  • 素晴らしいです。良くここまで調べていますね。文章の配置もクイズもとても勉強になりました。

  • 知らない事ばかりで勉強になりました!

など、うれしい感想がたくさん寄せられました。

子どもたちは今回の活動を通して、伝えたい対象をイメージしながら情報を整理するという「要約」の本質を、楽しみながら学べたようでした。

 

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