空を見上げてみよう
2019年2月12日 更新
山中 勉 宇宙航空エンジニア
山中勉さんが各地で行っている出前授業の様子や、生徒が紡いだ五・七・五の言葉をご紹介します。
女川町立女川中学校での出前授業
2018年12月7日、山中勉さんが、宮城県女川町立女川中学校で出前授業を行いました。この日は、2018年5月に女川中の生徒が紡いだ五・七・五の言葉に対し、佐賀県や東京都の中学生がつけた七・七の下の句が紹介されました。自分の紡いだ句に、下の句をつけてもらった生徒はどう感じたのでしょうか。
宇宙よりも遠いところから…
授業の冒頭、山中さんが生徒たちにプリントを配布しました。佐賀県武雄市立北方中学校の1年生約50人と東京都瑞穂町立瑞穂中学校の3年生約120人がつけた下の句の一覧が載っています。
山中 ここ宮城県から佐賀県までは、1000キロメートル以上離れています。ちなみに、宇宙空間は高度100キロメートルからと定義されています。つまり、みなさんが昨年5月に詠んだ句に対して、宇宙よりも遠いところから、お返事が届いているわけなんですね。
山中さんが窓の外を指さしながら話すと、生徒たちも興味深そうに耳を傾けていました。そして、生徒たちはプリントに目を落とします。多いもので20以上の下の句が付けられている句もあります。
山中 自分が詠んだ句に下の句をつけてもらった人はどう感じましたか?
山中さんの問いかけに対し、「この想い 叶わないまま 終わるかな」という句を詠んだ生徒が発表しました。この句には、佐賀や東京の生徒から計11句の下の句が寄せられています。
生徒 うれしいです。「あきらめないで」とかの言葉をもらって、背中を押してもらった感じがします。
そして、授業後にも、山中さんは下の句をつけてもらった生徒を集め、どういった感想を抱いたかインタビューしました。2校から最多の25句の下の句がつけられた「これからの 人生予報は 晴れがいい」という句を詠んだ生徒は次のような感想を述べました。
生徒 会ったこともない人がこんなに返事をくれるとは思いませんでした。私が詠んだ句をさらに引き出してくれたので、いつか会ってみたいです。
ほかにも、生徒たちはさまざまな感想を話しました。
「顔もわからないし、どういう人かもわからないけど、句を通してちゃんと考えてくれたのがうれしいです」
「自分と同じ考えの人がいるんだって思えて安心しました」
「離れた地域の生徒と関わりが生まれて、言葉の可能性を感じました」
「下の句を読むと、自分の句もまた違った見方ができて、新しい発見をした気分です」
「自分が作った句に対して『がんばって』とか励ましてくれて、本当にありがたいです」
生徒たちは、遠くに住む同世代の仲間からたくさんの下の句が届いたことに感激している様子でした。また、句のやり取りを通じて、自分が詠んだ句について改めて考えるきっかけにもなったようです。
次回は、女川中学校の生徒が新たに紡いだ言葉を紹介します。
山中勉(やまなか・つとむ)
1958年、東京都生まれ。宇宙航空システムエンジニア。(株)IHIエアロスペースにて宇宙航空事業や国際宇宙ステーション(ISS)の一般利用を発案し実証。宇宙航空研究開発機構(JAXA)主幹研究員、日本宇宙フォーラム主任研究員を経て、2013年より(株)IHIで社会貢献活動としてISSを利用した学校授業を共創している。
東日本大震災では宮城県女川町や各地の学校での出前授業を行い、五・七・五の言葉などの作品をISSに届ける活動を続けている。
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光村図書出版 第三編集部 広報課
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