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『森の歌が聞こえる』刊行記念 小手鞠るいインタビュー

「飛ぶ教室」のご紹介

2021年8月24日 更新

「飛ぶ教室」編集部 光村図書出版

児童文学の総合誌「飛ぶ教室」に関連した企画をご紹介していきます。

『森の歌が聞こえる』刊行記念 小手鞠るいインタビュー
~書くこと。そして森と子どものこと~    

アメリカのニューヨーク州に住む小説家で児童文学作家の小手鞠るいさん。恋愛小説の名手とも呼ばれることが多い小手鞠さんですが、近年、大人の本だけでなく、子どもの本にも力を入れて執筆されています。その活動の源をうかがいました。

小手鞠るいさん
写真:グレン・サリバン

とにかく、文章を書くのが好き!

今年は、20冊近くの本を出される予定があるそうですね。その中で児童書も精力的にご執筆されている印象があります。児童書を書く面白さや、その魅力などをお教えください。

小手鞠:児童書を書く面白さと、大人向けの作品を書く面白さは、私にとって、実はまったくおんなじなんです。ほんとうにどちらも面白いし、尽きせぬ魅力があります。要は「文章を書くのが好き!」ということなんだと思います、私の場合は。とにかく、好きで好きでたまらないわけです。だから、児童書でも大人向けでも、そして、童話でも詩でも小説でもノンフィクションでもエッセイでも、なんでも節操なく書いていますし、これからも、私に書けるものなら、なんでも書きたい。日常生活においては、手紙でも日記でもメールでも請求書でも(笑)、とにかく、文字を書き、文章を書くという行為と時間をこよなく愛しています。これが私の原点だと思っています。

請求書でも! ひとつの行為「書くこと」が極限の域まで達しているように感じます。子ども向けの本を書くうえで、特別に意識していることはありますか?

小手鞠:これは、大人向けの作品を書くときにも意識していることではありますが、子ども向けの本を書くときに、特に、「ありとあらゆるステレオタイプを避ける」を強く意識しています。たとえば、お母さんはエプロンをかけて台所で料理をしている。お父さんは会社へ行って働いている。家族は4人で、日本人の両親のもとに、ふたりのきょうだいがいて……というような何気ないステレオタイプです。そういう夫婦、そういう家族は現実には多いのだと思うし、だからそれが児童書に頻繁に出てきてもそれはそれでいいと思っています。しかし、私はそういう設定を絶対にしない、ということです。これは信念というか、こだわりのようなものです。

生き方が多様化している現代において、大切なことのように思います。大人の本と子どもの本の刊行のペースなど、ご自身の中で執筆のリズムのようなものはありますか? また、執筆以外の時間はどのように過ごされていますか?

小手鞠:ご依頼をいただいた順番、そこに、自分が書きたい順番、自分の気持ちが盛り上がって「どうしても今これを書きたい!」と思えるプライオリティを組み合わせて、優先順位を決めて執筆しています。リズムとしては、長い作品と短い作品をある程度、交互に書いているかな。もちろん、ずっとひとつの長編にかかりきりになることもありますし、執筆ばかりが続くと自家中毒を起こしてしまうので、あいだに、ゲラ作業や翻訳などをうまく挟みこんでやっています。とにかく仕事が好きなので、ついやり過ぎてしまうのを避けるため、週に二日は完全にオフにして、山登りや、遠い田舎へのドライブなどを楽しんでいます。あとは毎日ランニングと庭仕事。

動物はフードではなくて、フレンド

小手鞠さんが森に住まわれるきっかけはなんだったのでしょうか?

小手鞠:「ザ・ニューヨークタイムズ」という新聞で「ウッドストック特集」が組まれているのを偶然、見つけて、そのころ住んでいた大学町から車を走らせて、夫といっしょに訪ねてみたのですが、そのとき、森に囲まれたこの町に一目惚れ。夫の大学院が修了すると同時に、家探し。森の中に建っている家を中心に見て回って、今住んでいる家を見つけて購入しました。1996年のことです。以来ずっと、この森の中で暮らしています。森で暮らすようになってベジタリアン(魚は食べる)になりました。動物はフードではなくて、フレンド。とても食べる気にはなれません。環境問題には非常に敏感になりました。季節の歌の聞こえない森になってほしくないからです。

環境問題をテーマにした作品も多く執筆されていますね。5月に発売された『森の歌が聞こえる』(光村図書)でも、小手鞠さんが住んでいるニューヨーク州の森が出てきます。この作品はどんな思いで執筆をされましたか。

小手鞠:以前、本だったか雑誌だったかで、何かの記事を読んでいたとき、「いじめられている子どもと、いじめている子どもの両方を森へ連れていって、しばらく森の中で過ごさせたら、いじめがなくなった」というようなことが書かれていたのを見かけて、「そうなのか! 森にはそんな力があるのか」と思い、子どもたちに、私の住んでいる森のことをもっとたくさん伝えたい、森から遠く離れた町に住んでいる子にも、物語を通して、森を感じてもらいたい。そんな思いをこめて、この作品を書きました。地球上には人間だけじゃなくて、動物や小鳥や小さな生き物も住んでいる。そのことを、頭だけじゃなくて、心で感じてもらえたらうれしいな、と思っています。

『森の歌が聞こえる』

『森の歌が聞こえる』小手鞠るい 作/平澤朋子 絵はこちら

瑞々しい森と出会える、植物と動物への愛がぎゅっと詰まった物語。

小手鞠るい(こでまり・るい)

1956年岡山県生まれ。小説家、児童文学作家。著書『欲しいのは、あなただけ』『エンキョリレンアイ』『瞳のなかの幸福』、児童書に『ある晴れた夏の朝』『初恋まねき猫』『窓』『卒業旅行』『森の歌が聞こえる』ほか多数。

続きは、「飛ぶ教室」66号で!

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『森の歌が聞こえる』

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