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北の国から(中学校2年)

教科書 time travel

2023年7月5日 更新

「昔、たしかに教科書で読んだ気がする。ストーリーは覚えているんだけど題名を思い出せません」

過去の教科書掲載作品から、特にお問い合わせが多い作品を取り上げて、あらすじや編集にまつわるエピソードをご紹介します。

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東京での結婚生活に破局が訪れ、妻の令子との離婚を決意した黒板五郎は、小学生の純と蛍の兄妹を連れて、生まれ故郷の北海道に戻ってくる。純は東京での生活を思い、母を慕って、村の生活にとけ込めない。いっぽう蛍は、北海道の自然や生活になじんでいく。
そんな中、北海道を令子が訪ねて来て、正式に離婚することに。母親と離れ離れになってしまう悲しさに襲われる純。蛍は、かたくなに母親を拒否し続ける。

北海道を去る令子を見送る五郎と純。だが、発車時刻になっても、蛍は来なかった。
走る列車の窓から見える空知川。
そこで令子は、列車を追いかけて懸命に川沿いを駆けてくる蛍の姿を目にする――。

【作者】
倉本 聰

【掲載学年/版】
中学校2年/平成5年度版・平成9年度版

編集にまつわるエピソード

1993(平成5)年から中学校2年の読書教材として掲載された「北の国から」は、テレビドラマシリーズ「北の国から」の第17話「別離」をもとにしています。掲載当時は既に連続ドラマは終了していましたが、2002年まで数年おきにドラマスペシャルが放映されており、当時の中学生にはなじみの深い番組でした。

国語教科書では、戦後の一時期に映画の脚本を教材として載せたことがありましたが、テレビドラマのシナリオが掲載されたのはこれが初めてのことです。国語の学習は、自分たちの毎日の生活と切り離されたものではないという編集部の強い思いがこの教材を生み出しました。
それまでの教科書に載っていた「夕鶴」(木下順二)などの戯曲とは異なり、会話の独特の「間(ま)」や場面転換、「――(ダッシュ)」の多用、「インサート」「イン」「B・G」などシナリオ独自の用語が新鮮な印象を与えました。
何よりも、テレビでおなじみの純(吉岡秀隆)や蛍(中嶋朋子)、黒板五郎(田中邦衛)、令子(いしだあゆみ)の写真が随所に使われ、子どもたちに国語を身近に感じてもらうことができたのではないかと思います。
原作は1時間のシナリオなので、限られたページの中で完結した教材となるように、作者の倉本氏と何度もやり取りを重ねながら作り上げていきました。

また、両親の離婚というテーマを正面から取り扱ったのは、当時の教科書ではたいへんな冒険でした。この1993年度版の中学校国語教科書では、他にも「命ということ」(中沢晶子/1年)や「アジアの働く子供たち」(松井やより/2年)、「わたしを作ったもの」(ロバート・ウェストール/金原瑞人 訳/2年)など、これまで国語の教科書では扱ってこなかった社会的な課題を取り上げた意欲的な教材が掲載されています。

文: 編集部

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