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キョウリュウをさぐる(小学校4年)

教科書 time travel

2023年7月5日 更新

「昔、たしかに教科書で読んだ気がする。ストーリーは覚えているんだけど題名を思い出せません」

過去の教科書掲載作品から、特にお問い合わせが多い作品を取り上げて、あらすじや編集にまつわるエピソードをご紹介します。

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私たちは、図鑑や博物館で、キョウリュウの姿を目にしています。しかし、よく考えてみると、誰も生きている姿を見た人はいません。その姿を現在の私たちが知ることができるのはどうしてでしょうか。
骨の化石、化石が発見された場所、今生きている動物といった手がかりから、どのようにしてキョウリュウの姿を復元していくかを説明した文章です。

【筆者/挿絵】
小畠郁生 文/安田尚樹 絵

【掲載巻/版】
4年上巻/平成4年度版・平成8年度版・平成12年度版

編集にまつわるエピソード

毎年、夏休みになると、全国各地で恐竜展が開催されるなど、恐竜の人気は昔も今も衰えません。その生態や、絶滅の謎……これからもまだまだ新しい発見は続いていくでしょう。

1992(平成4)年から小学校4年の教科書に掲載された「キョウリュウをさぐる」は、大昔に滅んだ恐竜たちの姿を、どのようにして私たちが知ることができるかについて説明した教材です。
化石だけでどうして全体の形や大きさがわかるのだろうか、皮膚の色はどうやって復元したんだろう――そんな素朴な疑問がこの教材を作るきっかけでした。

筆者の小畠郁生先生 (当時 国立科学博物館古生物研究部長)にお話をうかがう中で、単純に骨の化石だけで復元しているのではなく、足跡や皮膚の痕跡、卵、糞、いっしょに出てきた動植物、化石が出てきた地層など、さまざまな要素を組み合わせて復元していることがわかりました。そのうえ、今あちこちで展示されている復元模型も絶対に正確だとはいえないということも――。
「はたして、この壮大な復元過程を7ページほどの教材としてうまくまとめることができるのか」。
担当の新米編集者は、いきなり壁にぶち当たることになりました。
さらに、当時はインターネットなどない時代ですから、すべてを書籍で調べていかなければなりません。ところが専門書のほとんどは海外のもので、日本語版がない状態でした。小畠先生の手元にある最新の原書をいっしょにひっくり返しながら、小学校4年生でもわかるような事例を探し出していきました。

最大の壁は、19世紀中ごろにマンテルという医師が考えたイグアノドンの復元図の所在でした。誤った復元例として「指の化石を角だと勘違いして模型を作った」という記述があり、「これは子どもたちの興味を引くにちがいない!」と、その図を探したのですがどこにも見つかりません。
小畠先生いわく「模型の現物がイギリスのクリスタル・パレスという公園に置かれているはず」ということですが、それを見るためだけの出張など、新米にはとても許されないことでした。
しかし、新米は強運の持ち主でした。たまたま、編集長が、教育現場の視察旅行でヨーロッパに滞在中だったのです。さっそく編集長に国際電話をかけ、スケジュールを大幅変更してもらい、復元模型の写真を撮ってきてもらいました。この視察旅行がなければ、この教材は日の目を見ていなかったかもしれません。

時は流れ、恐竜に関する新しい発見や学説がどんどん発表されています。これからも、恐竜へのロマンは尽きることなく、子どもも大人も魅了し続けることでしょう。

文: 編集部

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『光村ライブラリー 小学校編 第11巻』

過去の教科書掲載作品を収録したアンソロジー。
「キョウリュウをさぐる」をお読みいただけます。

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