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3 対話による鑑賞に適した作品

はじめよう、対話による鑑賞の授業

2015年1月22日 更新

美術における鑑賞を通した言語力育成が求められています。全国各地の学校や美術館で行われる美術鑑賞の授業の形として、先生や学芸員の解説を一方的に聞くのではなく、生徒自身が主体的に発言をし、対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく「対話による鑑賞授業」が注目されてきています。

対話による鑑賞に適した作品とは、どのような作品でしょうか

鑑賞に適した作品

どんな作品も対話による鑑賞が可能ですが、より効果的に対話を促すには、物語性の強い作品であることが第一です。 鑑賞の第一段階は自分で物語をつくることだということが、アビゲイル・ハウゼンやマイケル・パーソンズ等の研究から明らかになっているからです。 人物が描かれている作品が適しているのは、人びとの表情やしぐさ、描かれ方の特徴などから物語を想起することが容易だからでしょう。アンドリュー・ワイエスの〈1946年の冬〉俵屋宗達の〈風神雷神〉ピカソの〈ゲルニカ〉 などは最適の作品です。 もちろん、描写対象が人物以外でも構いません。想像力を刺激されるような作品は、活発な対話を促すものです。 上田薫の〈なま玉子〉 は初めてこの授業をする先生向けの定番作品ですし、 ルネ・マグリットサルバドール・ダリ などが描く超現実的な情景や、観衆に考えさせることを意図しているコンテンポラリーな作品も、思いがけないほど生徒は深い読みをします。 教科書に掲載されている作品は、概ね鑑賞に適しています。

注意を要する作品

授業では、作品をプロジェクターで映写することを考慮に入れてください。明暗差の少ない作品や極端に細密なものは避けるのが無難です。
たとえば淡彩の作品は、光量の弱いプロジェクターや明るい部屋でははっきりと映りません。かといって教室を真っ暗にすると、お互いの顔が見えにくくなり、表情がわからないため対話がしにくくなります。細密なものは、拡大するにも限界がありますから、細部に意味がある場合見過ごしてしまいます。
見る角度や場所が重要な意味をもつ彫刻や立体作品、インスタレーションなどは教室で映像として見せるには不向きです。表現との関連や他のねらいとの関連から見せる必要がある時は、大きさや材質、設置されている場所などの情報がわかるようにする配慮が必要です。実物を見ればはっきりわかるものを、映像であるがゆえにあれこれ推察しあうことに、あまり教育的な意義は認められません。

関連書籍

対話による美術鑑賞の決定版!
『風神雷神はなぜ笑っているのか 対話による鑑賞完全講座』 (上野行一 著)

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