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第6回 「自我関与」とは

道徳キーワード

2017年4月10日 更新

学習指導要領の中から、ぜひ知っておきたい「キーワード」を取り上げます。長年にわたり道徳教育をリードしてきた6人の先生が、リレー形式で解説します。

解説:淀澤 勝治(兵庫教育大学大学院准教授)

道徳科で求められている「自我関与」とは

道徳の教科化にあたり、とりわけ注目されている言葉が「自我関与」です。では、道徳科における「自我関与」とはどういうことなのでしょう。

文部科学省による「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について(報告)」の中には、「質の高い多様な指導方法」の項のうち、「① 読み物教材の登場人物への自我関与が中心の学習」において、以下のように述べられています。

教材の登場人物の判断や心情を自分との関わりにおいて多面的・多角的に考えることを通し、道徳的諸価値の理解を深めることについて効果的な指導方法であり、登場人物に自分を投影して、その判断や心情を考えることにより、道徳的価値の理解を深めることができる。

これらのことは、従来の授業における「振り返り」であるとか、「価値の一般化」(道徳的価値について、教材中の特定場面だけでなく、自分や自分の生活に広げて考えること)にあたるものと思われます。しかしながら、そもそも道徳の時間において「自我関与」のない授業など成立するのでしょうか。それなのに、あえてこの文言が提起される根拠として考えられるのは、それらが十分に行われていなかったからだと捉えることができそうです。

「自我関与」を実現するために教師に求められること

道徳の時間において、子どもたちは三つの対話をします。

1.教材との対話

一つ目は教材との対話です。まずは、教師が教材を範読します。子どもたちに音読させると、読んでいる間は考えることができません。また、必ずしもうまく読めるとは限らず、内容に集中できないことがあります。教師が範読することで、子どもたちは右脳に働きかけ、登場人物に役割取得しながら、イメージ豊かにその物語の中に入り込むことができます。そのことができたならば、子どもたちはそれぞれに登場人物になりきって、物語に描かれている道徳的価値についての自分なりの考えをもちます。

2.他者との対話

教材との対話をしたうえで、今度は他者との対話を行います。先生や教室の仲間の考えに耳を傾けることで、自分とは違った多面的・多角的な考えを知ることになります。いわゆるアクティブ・ラーニングが推奨されている理由もここにあります。

3.自己内対話

他者との対話をしていると、同時進行的に自己内対話を行うことになります。自分の考えと他者の考えを比較検討して、新たなものの見方・考え方を創り出すことになります。これが道徳的価値の創出となります。そこでは当然のごとく「自我関与」が行われているはずなのです。

このような三つの対話を通して、自分とのつながりの中で、ねらいとする道徳的価値に対する見方・考え方が広がり、深まっていく必要があります。そのために、教師に求められることは必然的に決まってくるはずです。

教師に求められること

1.「教材との対話」の場面
子どもたちをその物語の世界に引き込むような範読

2.「他者との対話」の場面
話し合いを活発に進行させる技術(対話的な話し合いをコーディネートする力)

3.「自己内対話」の場面
自己内対話を進める静かで落ち着いた時間と空間の確保

キーワードまとめ 「自我関与」とは

「教材との対話」、「他者との対話」、「自己内対話」を通して、自分とのつながりの中で道徳的価値について考えること。


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