みつむら web magazine

Q19. 分類の考え方を教えてください。(その1)

読書Q&A 学校図書館(理論編)

2015年1月1日 更新

赤木かん子 児童文学評論家

どうすれば子どもたちが集まる図書館になるのでしょう。本のそろえ方や整理のしかたなど、学校図書館の作り方や運営方法に関する悩みにお答えします。

A(回答)

Q17Q18では「してはいけない分類」のお話をしました。ではどういう分類ならやってもいいか、ということになりますが、それをここで簡単に説明できるのなら、本のプロはいらない、ということになります。でも、実は「分類」は、私たちはいつでもどこでも毎日意識しないでやっているのです。ですから、それを意識しようと思うだけでかなり違ってくると思います。たとえば・・・・・・。

インベーダーゲームやテトリスができて、初めて「テレビゲーム」と「テレビゲームではないもの」という新しい分類体系がうまれました。それからいろいろなゲームができて、商品はどんどん増えましたが、そういう店に学芸員がいるわけではありません。ゲームが三本しかなければ、「テレビゲーム」という分類をつくるだけでよかったのが、やがて「テレビゲーム」のなかを分類しないとやっていけなくなったのです。「囲碁や将棋、といったいわゆる室内ゲームと、格闘技ものは違うよな」とか、「室内ゲームのなかでもマージャンはそれだけで独立できるくらい数があるよな」というように大分類から中分類へ、中分類から小分類へ、話はどんどん進んでいきました(マージャンゲームにはプロ養成講座みたいなものから、「なんとかビーム!」を出して、欲しいパイを取り替えられちゃうようなおちゃらけたものまで、実にいろんな種類があるのです)。

食器を売っている店では、皿は皿、茶碗は茶碗、カップはカップ、で並べているでしょう? 店によってはメーカーごとに、マイセンならマイセン、だけまとめて並べていたりもします。そこには皿もカップも一緒に置いてあるでしょう、同じ柄のものが……。なぜそうするかというと、そこには「目的」があるからです。分類体系をつくるときには、必ず「目的」があります。その目的がはっきりしないのに分類すると、よくわからない、意図が見えない、したがってよくわからない、やっても意味のない、逆にかえって混乱する分類になってしまうのです。ゲームで言えば、「落ちもの」系ということばは、「テトリス」や「ぷよぷよ」みたいなゲームをなんとかひとまとめにしたい!という「目的」があって、初めて発明されました。分類には必ず「目的」が必要なのです。

「絵本の部屋」をつくることに、どんな意味がありますか?

絵本という製本形式のものだけを集めると、そこには社会学や心理学や自然科学の内容のものまで集まってきます。なぜかというと、今の時代はそういう本のかなりの部分が絵本でつくられているからです。絵本をあつめれば、そこには物語しかあつまってこない、というのは、かなり古い常識です。したがって、分類をする時には「今の状態」を正確に知っている必要があります。物語の絵本でも、「これは三年生以下には難しくってわかんないよね」という内容のものから、「これは三才過ぎたら反応しないよね」というものまで、年齢だけとってみてもバラバラなのです。よしんば低学年向きの絵本だけを集められたとしても、その部屋に低学年だけを集めて、高学年は入れてやらない、とする目的はなんでしょう?しつこいようですが、昆虫図鑑や恐竜の本はどうしたらいいのでしょう?低学年は物語の絵本だけ読んでいればいい、というのなら、 その目的はなんでしょうか?『ハリー・ポッター』は早い子なら二年生から読み始めますが(あれは簡単な本ですから…長いだけで)、「四年生になるまで読むな」とはいいにくいでしょう。低学年だって、いろんな本にふれたほうがいいに決まってるし、高学年にまじって本の借り方や返し方を練習することは必要です。そういう環境をつくることも学校図書館の大切な役割なのです。

私たちはいま、身の回りの品をとんでもなくたくさん持っています。服も、食器も家具もその他もろもろ……。ですから上手に「目的」をもって分類整理しておかないと、暮らしにくくなるのです。整理上手な人は、分類体系を考えるのがうまい人のことなのです。小学校で分類の話をしたら、ほとんどどこのクラスでも、そのあと、「掃除がうまくなった!」といわれました。だれもいわなかったのに、子どもたちは、「そうか!片づけるっていうことは、同じものを同じところにまとめるってことなんだな」と、思ってくれたらしいです。というわけで、私たちは今、無意識に分類体系をつくりながら暮らしているのです。学校図書館の分類も、新しい時代に新しいジャンルが現れたら、その都度変えていかないと使いにくくなるのです。

赤木かん子

児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。

赤木かん子公式ウェブサイト

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