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小学校英語 指導と評価 第2回

小学校英語 指導と評価

2021年6月8日 更新

黒木 健 横浜市立斎藤分小学校長

小学校英語の評価について、先生方の悩みに寄り添いながら解説します。

黒木 健(くろき・けん)

横浜市立斎藤分小学校長。
上智大学文学部教育学科卒業。これまでに横浜市立洋光台第四小学校長、横浜市立矢部小学校長、横浜市立小山台小学校長、神奈川県小学校外国語活動研究会部会長、横浜市小学校外国語活動・外国語研究会副会長などを歴任。

第2回 教師用ルーブリックの例
~「話すこと(発表)を中心に」~

今回は、『Here We Go !』から1つのUnitを取り上げ、教師用ルーブリックの例を示すとともに、子どもの具体の姿に触れながら、評価に際しての判断の目安について解説する。

評価「規準」か、それとも評価「基準」なのか

授業研究会等において、単元における評価「規準」と評価「基準」とを混同した指導案を目にすることがある。まず確認しておきたいのは、評価「規準」とは、単元目標の中で達成すべきラインであり、それを達成した子どもの姿のことである。つまり、知識・技能「~について理解している。」「~などを話す技能を身に付けている。」、思考・判断・表現「~などを話している。」、主体的に学習に取り組む態度「~などを話そうとしている。」などがそれに該当する。

一方、評価「基準」とは、どのような姿が「A」「B」「C」になるのか、子どもの活動する姿からあらかじめ示した具体例のことである。評価「規準」に照らし合わせた際の「達成度一覧」のようなものであると言ってもいいだろう。そうしたことからもルーブリックは、それ単体で捉えようとするのではなく、常に評価「規準」とリンクして捉えることが求められる。

教師用ルーブリックを設定するための視点

今回は、5年生Unit 6 “I want to go to Italy.” における「話すこと(発表)」の中から、「自分が行きたい国の魅力を、ポスターを使って発表する」という活動の中で、パフォーマンス評価を行う場合を例に考えてみたい。

教科書では、その国でできることを表現する際の英語として、表の中に“You can visit( see, eat, buyなど )~. ”を例として取り上げているが、これらの動詞を順に使っていくことができれば、それで十分ということではない。自分が伝えたい名所や名物等を日本でもなじみのあるものから、未知のものへと紹介の幅を広げていくことや、また日本とは慣習や文化が異なる、よりインパクトのあるものから順に紹介するといったように、伝えたい内容をどう紹介をすれば、相手に興味をもってもらえるか等の工夫をするところに、「思考・判断・表現」が現れてくるといっていいだろう。

また、発表を聞いていた相手が、その発表中の言葉を捉え、それをまねしてつぶやくことがあれば、興味や疑問をもったからこその反応でもあると言うことができ、そこでその言葉をもう一度繰り返して発表したり、“It’s sweet. ”などの表現を使って補足説明を即興的に付け加えたりしようとすることは、「主体的に学習に取り組む態度」の現れと判断していいだろう。

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ルーブリックは何のためにあるのか

ルーブリックの設定は、一見すると面倒な作業のように思えるかもしれない。しかし、パフォーマンス評価において、教師がその単元を開始する前にルーブリックを用意し、その単元が終わった時点で見ることができるであろう子どもの具体の姿をイメージすることは大切なことである。それにより、日々指導を行っていく中で、まだ子どもに足りない資質・能力が何であるのかを教師自身が認識し、指導すべき視点をより明確にすることにつなげることができよう。そう考えれば、ルーブリックは実際に指導を行っていく上で、有益なツールとなり得ると言える。
以下に、発表例およびルーブリックの例を示すが、学年・学級の子どもの実態にあわせて活用してほしい。

児童の発表例 ①

You can see Niagara Falls. It’s big.
You can eat maple syrup.
It’s delicious. You can buy maple syrup.

単に名所や名物を紹介するにとどまらず、どうしてそれを紹介したいのかという自分の思いが伝わるように順番や構成を考えて発表しているので、「思考・判断・表現」の評価は「A」と考えることができる。

発表後に、もし聞き手が「メイプル……?」と疑問風につぶやくなどしたのを受けて、発表した内容に対する相手の理解が深まるように再度繰り返したり、どうして“delicious”と感じる味なのか補足説明を即興的に付け加えたりしていれば、「主体的に学習に取り組む態度」は「A」と考えることができる。

また、“Sweet.と文ではなく単語だけになってしまっていれば、「知識・技能」については「B」と考えることができる。

児童の発表例 ②

You can see the Statue of Liberty.
You can eat hamburger.
It’s beautiful.

It’s beautiful.によって「自由の女神は美しい。」ということを伝えられたのはよかったが、教科書の表にある「その国でできること紹介」の語句の順(see, eat)にとらわれてしまったあまり、発表する文の順が適切ではなかった。結果として思いが伝わりにくくなってしまったため、「思考・判断・表現」は「B」と考えることができる。

◆本単元の教師用ルーブリックの例

表のダウンロードはこちらから

ルーブリック例

先にも述べたとおり、学年、学級の子どもの実態を十分に踏まえながら、どういう指導をしてその結果、子どもがどのような姿になったら評価「規準」をクリアしたことになるのか、あらかじめ学年内でしっかりと決めておくことが求められる。

【参考資料】
『Here We Go! 』5年 Unit 6 “I want to go to Italy.” (光村図書出版 2020年)
『小学校外国語科(英語)指導書』 p238・p239 (光村図書出版 2020年)

Illustration: 福々 ちえ

次回は、児童の自己評価について解説します。


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