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中学3年 「学び」の本質を探ろう 見目慎也先生

道徳科授業レポート(中学校)

2026年9月28日 更新

光村図書 道徳課

編集部による授業見学レポート。今回おじゃましたのは、千葉大学教育学部附属中学校。見目慎也先生による「『学び』の本質を探ろう」(中学道徳3 きみが いちばん ひかるとき・光村図書)の授業の様子をお届けします。

見学にあたって

  • 令和7年度から使用されている教科書では、初めて「本質観取」を取り上げました。本質観取は、哲学対話の一種で、生徒の経験を基にした対話が授業の中心となります。これまで、なかなか本教材を扱っている授業を見学する機会がなかったので、どんな展開になるのかと、どきどきしながら見学いたしました。生徒が存分に自分の経験を語ることができるのか、そこから仲間とキーワードを見いだして本質を言葉にできるのか、そんなところに注目しながら、授業を見学しました。

授業の概要

  • 内容項目:A(5)真理の探究、創造
  • 生徒数:30人
  • 教材のあらすじ:前時に、「私の再出発」(希望と勇気、克己と強い意志)という、81歳の女性が夜間中学校で学ぶ日々を綴った作文を基にした教材について考えています。それを受け、本教材では、まずグループになって、各自が「ああ、今、自分は学んでいるな」と実感できた経験を出し合います。そこからグループのみんなの経験に共通するキーワードを見いだして、「学び」の本質をまとめる活動に取り組みます。

導入:前時の振り返り〈2分〉

先生

先週は、「私の再出発」という教材を通して、「学ぶ」ことについて考えました。年を重ねてから再び学校に通い始めた見目さんと、見目さんと同じように定時制の中学校に通っている2名の方を紹介しました。
前回を踏まえて、今日は、「『学び』の本質とは何だろう」ということを考えていきます。受験生だからこそ考えてみたいね。「『学び』の本質」、かっこいい言葉ですね。
そしたら、今日は何を学ぶのかな。(教科書P.8・9「道徳の学習を始めよう」を、スクリーンに映し出し、学級全体に提示した。すでに扱ってきた「道徳のキーワード」(内容項目)には○が付いている。)
今日はこれだね。(「5 真理の探究、創造」に○を付けながら。)★1

編集部のまなび

★1 見目先生のクラスでは、第1教材を活用し、毎時間、教科書P8・9の「道徳のキーワード」(内容項目)を確認し、その日授業で扱うものに○を付けているそうです。毎回、印を付けていくことで、その時間、どんな道徳的価値について考えていくのかを自覚させるとともに、目に見える形で、1年間で22の内容項目にまとめられている道徳的価値を学んでいっているということを意識づけたいと、お話ししていました。

「学び」とは、どういうものか、教科書P.160・161のヒントを基に考える〈13分〉

先生

では、「『学び』の本質」とは何ですか。
今日は、話し合いが多くなります。皆さんは、日々、人からも物からも、出来事からも学んでいますよね。教科書P.160を開いてください。(先生による、教科書の音読。)

先生

では、教科書の1から9までのヒントを参考に、まずは個人で「『学び』の本質」について考えてみましょう。
(Google Slideで、一人一人に個別のシートを作成し、生徒と共有する。)
Chromebookを立ち上げたら、Google Slideに自分の考えを書いてみてください。
教科書には、1から9の問いがありますよね? 全部じゃなくてもかまいません。書けるところから、問いに対する考えを書いてみましょう。書けなければ、友達のものを見て、参考にしてもいいですよ。

生徒

(各自が端末を使って入力する。)

先生

では、みんなが書き込んでくれたものを、見てみましょう。
(以下、先生が生徒の書き込みを読み上げる形で、共有する。)
問い1「何のために学ぶの?」はどうですか。

生徒

(書き込み)情報を身につけるため。

生徒

(書き込み)損せず得するため。

生徒

(書き込み)自分を高めるため。満足するため。

先生

問い2「『学び』は、誰のためのもの?」はどうかな。

生徒

(書き込み)みんなのため。

生徒

(書き込み)自分のため。

先生

なるほどね。問い3「『学び』は、いつするもの?」はどうだろう。★2

生徒

(書き込み)永遠にするもの。

生徒

(書き込み)日常活動。

生徒

(書き込み)いろんなときにするもの。

先生

次。問い4「『学び』は、一人でするもの?」はどうですか。

生徒

(書き込み)違う。

生徒

(書き込み)一人でするもの。

先生

どっちもあるか。じゃあ、問い5「『学び』と『勉強』って、同じもの?」はどうだろう。

生徒

(書き込み)ちょっと違う。

先生

違うんだ。じゃあ、問い6「『学び』のイメージは、どんな形?」はどうですか。これ、難しい?

生徒

(書き込み)歯車。

先生

これどういうこと?

生徒

(書き込んだ生徒が)なんでこれやっているんだろうって思っているうちは歯で、やっていることと合うと、うまく動く。

先生

へえ! なるほど〜。

生徒

(書き込み)無限の何か。

生徒

(書き込み)大きな円。

先生

これもちょっと教えて。

生徒

(書き込んだ生徒が)扇がちょっとずつできていって、補完されていく感じ。

先生

へえ。なるほどね。いろいろあるね。すごい。問い7「学ばなくても生きていける?」はどうですか。

生徒

(書き込み)生きてはいける。

生徒

(発言として)でも、生きにくくなる気がする。

先生

問い8「学んだなと思う瞬間は?」。

生徒

(書き込み)新しいことを知ったとき。

先生

問い9「学んでいると、どんな気持ちになる?」はどうですか。

生徒

(書き込み)疲れるけど理解できたら楽しい。

先生

こんな感じか。今はまだ、一人一人の中にあるものだけど、これをもとに、これから話し合ってください。授業の終わりには、何か「これだ!」っていう本質に迫れたらいいなと思います。

「学び」とは、どういうものか、教科書P.160・161のヒントを基に考える 画像

「学び」とは、どういうものか、教科書P.160・161のヒントを基に考える 画像

「学び」とは、どういうものか、教科書P.160・161のヒントを基に考える 画像

「学び」とは、どういうものか、教科書P.160・161のヒントを基に考える 画像

生徒の書き込み

編集部のまなび

★2 教科書P160・161にある9つの問いを、丁寧に扱っていました。先生は、「うんうん」「なるほどね」など、相づちを打ちながら、Google Slideに書き込まれた生徒の答えを、読み上げていきました。気になるものがあれば立ち止まり、質問をしていました。先生のつぶやきに対して、生徒もテンポよく声を上げているように見えました。生徒の「学び」に対するイメージを膨らませながら、さまざまな観点で「学び」について考えていけるよう、時間をかけて準備しているように感じました。

どんなときに「学んでいる。」と実感したか、経験を出し合う〈10分〉

先生

ここからは、Canvaを使って、進めていきます。★3
各グループに、1から8まで、番号を付けるので、自分の班の番号を確認してくださいね。
(先生が用意したスライドには、色分けされた付箋が数種類貼られている。)
色分けした付箋を使ってください。それぞれ自分の使う色を決めて、誰が書いたかをわかるようにしてください。
話し合いのしかたは、教科書P.162・163の手順で進めていきます。(先生による、教科書の音読。)

先生

では、机を班にしてください。皆さんは、どんなときに「学んでいる。」って実感しますか。具体的に、Canvaに書いてください。時間は様子を見ながらで。楽しく話し合ってくださいね。

生徒

(まずは、教科書P.162の①を、5分間程度行う。話し合いながら、各自Canvaに入力する。)

先生

(各班を回りながら、声をかける。)
では、いったん書き込みと話し合いは終わってもらって、この後は、お互いに突っ込み合ってもらいたいと思います。
例えば、こんな感じです。
(生徒を一人指名して)どんなときに「学んでいるな」って思った?

生徒

本を読んでいるとき。

先生

なんでそう思ったんだろうね。

生徒

わかんない単語が出てきて、これわかんないな、って調べて……。そしたらわかった。

先生

それは小説を読むのとは違うの?

 

生徒

違う。

先生

……と、こんなふうに突っ込んでみてください。3分でいってみましょう。

生徒

(もう一度、班に戻って、互いの考えについて質問し合っていく。)

先生

(各班を回りながら、先生が生徒の経験について質問し、より具体的な内容を引き出していく。)★4


生徒

前までわかんなかったことができるようになったとき、成長したなって思う。

先生

成長したときって、どんなとき? 例えば、何ができたの?

生徒

料理とか。


先生

「予習したところが出てきたとき」って、どういうこと? 「問題が解けたとき」ってことかな。

生徒

何かができるようになったっていうか。

先生

その問題が解けて、学びが定着しているなって、思ったから?

生徒

学びの中に勉強があるって感じ。

先生

暗記とかは? 覚えることは、学びと言える?

生徒

ううん、違う。

編集部のまなび

★3 この後に続く授業展開もそうですが、全体として、とても丁寧に学習活動を指示しているように感じました。特に端末を使った活動をするときには、学習活動の区切りごとに、「今、何をするか」を明確に指示していたので、記入する時間、話し合う時間がはっきりと区別できていました。

★4 先生が「突っ込み」の見本を見せてから話し合いに入ったためか、生徒たちは、予想していた以上に「学んでいる」という経験を出し合い、話し合っていました。3年生ならではの、受験勉強に基づいた経験も出ているようでした。

グループで出し合った経験に、何か共通することがないか、キーワードを探る〈10分〉

先生

では、話し合いはここまでにして。次に、もう一度教科書を見てください。(先生による、教科書P.162・163の②の音読。)
これから、グループで出し合った経験に、何か共通することがないか、キーワードを見つけてください。
ちなみに、Canvaには、分類機能があります。今から、その機能を使って分類してみますよ。1回しか説明しませんからね。やり方を見ててくださいね。
(Canvaの分類機能を実際に使ってみる。)
これを使ってもいいので、何か共通点やキーワードを、班で探してみてください。
(各班を回りながら、適宜生徒に声をかける。)


先生

わからない英単語を調べて、わかったら、学んでいるって言えるの?★5

生徒

「やれ」って言われてやるのは勉強。言われないで、自分から進んですると、学んでるって感じ。

生徒

学びの中に勉強もある。学びの中にはおもしろいものもある。

先生

……ということは、勉強は楽しくない?

生徒

楽しくない、かな……。


先生

学びと勉強の違いは何?

生徒

実践!

先生

おお。実践して、できたら学びって言えるってこと?

生徒

そうじゃなくて。実践で使えるかどうか。


生徒

考えなくてもできるやつは学びでもなんでもない。作業。

生徒

知りたい気持ちがあるかないか、かな。

先生

それがキーワードじゃない?

編集部のまなび

★5 本時は、対話がほとんどの時間を占めている分、先生が各班を回りながら、生徒の話し合いに参加し、質問をし、その考えを知ろう、引き出そうとしている姿が印象的でした。先生が生徒といっしょに議論することで、生徒たちの話し合いも活性化していました。ここには、一部しか掲載していませんが、先生は、全ての班を回り、それぞれの班で対話に参加していました。

みんなが納得できる「学び」の本質をグループでまとめる〈10分〉

先生

では、一度教科書に戻ってください。(先生による、教科書P.163の③の音読。)
キーワードは見つかったかな? ここからは班で考えてください。みんなが納得できる「学び」の本質の定義を作っていきましょう。自分は納得していても、他の誰かは納得いかないものはだめだよ。
(各班を回りながら、適宜生徒に声をかける。「なるほどね」「それ、どういう意味?」「へえ、どうしてそうなった?」など、生徒がもう一歩具体的に考えられるような声かけをしていました。)


生徒

学びは達成感を感じるもの。

生徒

学びは損得で考える。知らないと損するもの。

生徒

学びって、得するもの。生活術、スーパーの特売とか、知らないと損する。充実した日常を送るためのもの。

生徒

学びは成長すること、知識を身につけること。

生徒

学びとは知りたいことを知る。

先生

みんな「知りたい」と思っているのは同じだね。勉強ってさ、絶対使わないこともあるじゃん? なんで勉強するんだろうっていうもの。でも、知りたいことは、自分で調べる。それでまた考えて、追究する、みたいな感じなのかな。★6


先生

では、班ごとに発表してください。★7

生徒

1班:「学び」とは、自分自身を成長させるものである。成長させないものは、学びではない。

生徒

2班:「学び」とは、どこかで生かすためのもの。

生徒

3班:「学び」とは、人生をより豊かに生きやすいようにするもの。

生徒

4班:「学び」とは、知りたいものを調べたり、追究したりするもの。

生徒

5班:「学び」とは、互いに成長し合い、より豊かにし合うもの。

先生

「互いに」って入れたのは、なんで? 一人じゃだめなの?

生徒

対人関係に学びがあるって思ったから。

生徒

6班:「学び」とは、なんらかの形で知識を身につけること。

先生

勉強との違いは? 今は時間がないから、また考えて教えてね。

生徒

7班:「学び」とは、意欲があればいつでも得られて、ただ能力を得るだけでなく、活用して生かせたときに学びと言える。

生徒

8班:「学び」とは、成長して今後に生かせる。

先生

じゃあ失敗は? 生かしても、失敗することもあるでしょ?

生徒

失敗も学び。その失敗を生かして成長できるから。

編集部のまなび

★6 キーワードがいくつもあって、一文で本質を言い表すような表現をするのに迷っている班もあったようでした。そこは先生がさらにキーワードを取り出すなどしてサポートしている姿が見られました。

★7 ここでは、各班の考えをさらに掘り下げることはせず、班ごとの発表を順番に聞くにとどめた、あっさりとした学級全体での共有となりました。この後の、「今日、『学び』の本質を考えたことは、あなたのこれからと、どんなところがつながるでしょうか。」という、一人一人が学びを振り返るための問いにつなごうとしているように見えました。ここまでに各班がどんな過程を経て「『学び』の本質」に行き着いたのかを、先生自身が把握していて、生徒たちが班で話し合って練り上げた「『学び』の本質」を尊重しているからこその展開のように感じました。

終末:本時の学習とこれからの生活のつながる点を考える〈5分〉

先生

一人一人の考えを、最初にみんな書いたよね? 今日は、よく話し合えていたと思います。最初の、ふわっとしたものから本質を探ることができたでしょうか。
今日、「学び」の本質を考えたことは、あなたのこれからと、どんなところがつながるでしょうか。前回の、「私の再出発」のリフレクションのところに書いておいてください。

生徒

(以下、生徒の振り返りより)
・私たちのグループでは学びは得ようと思えばいつでも得ることができ、活用することが学びであると考えた。勉強が嫌になることがあるけれど、勉強の先にある学びによって広がる世界や、活用して生活全般が向上することを思い浮かべながら、勉強だけではなく、その先を見て意欲を失わないでいたいと思った。また、学びは学問面だけではなく生活面の中にも隠れているので、何かを学ぼうと疑問をもつことを忘れずにいたい。

・勉強と学びはどちらのほうがいいのかというのを考えるきっかけになった。「勉強」は言われてしぶしぶやり、ヤケになりながら、終わらせることを目的に学習することで、「学ぶ」は自分から学ぼうとして、知識が無意識に入り、生活を豊かにするために役立つものが多い。また、⚫︎⚫︎君が言っていた「勉強は『学ぶ』の中に含まれる」ということが、「なるほど」としっくりきました。

・今はちょうど受験勉強で忙しくて、学びのよさ、目的を考える機会がなかったので考えることができてよかった。学ぼうと思わなくても、自然と身につくことがあるので生かしていきたい。

・学びは自分が成長しないと学びといわないとわかりました。そう思うと勉強でちゃんと学びになったなと思う場面はすこし少なかったなと思いました。毎回学びを得られるようにしたいです。

・普段の何気ないことでも学びにつながるのだとわかった。そのため、普段の小さな気づきを大切にして、自分の人生に生かしたいと思う。また、他の班の意見で「自分が気になること」を調べるときに学んでいるとあって、確かに普段の授業の内容はあまり学んだというような気分にはならないが、自分から気になって質問したことは学んだと感じるので納得した。

・今までできなかったこと(失敗)を生かして、次に挑戦する際の糧にすることができる。また、失敗を生かすことで自分ができていないことが次のときにはできているかもしれない。

・自分が成長したときにどんな成長でも受け入れることで、人生を豊かにできる。学びは今後大体役に立ってくるし、役に立たなくても経験が積まれるからいろいろなところにつながると思った。

編集部のまなび

<全体を通して>
・哲学対話の一種である本質観取は、提示されたテーマについて、どれだけ具体的な経験をもち寄り、対話することができるかが重要で、それによって活動全体の深まりが左右されると言われています。今回は、その具体的な経験を出し合う場面で、ICTが活用されていました。道徳科における対話の場面でICTの活用を取り入れることは、どのような効果が期待できるのか。授業後、先生の考えるICT活用の効果について伺ってみました。
「今回ICTを活用する利点は以下にあったのかなと感じます。
①発言が苦手な生徒の意見も拾うことができる
②お互いの班の話し合いを簡単に共有する、見合うことができる
③記録としてデータで残るため、評価に生かしやすい
④書いたことを何度も消したり、直したりしやすいので、意見が出しやすい」
さらに、「理想は『ICTを使いながら話し合いも活発に行われる』ことだと思っています。何度かやってみて、ICTを使うと、ICTに集中してしまい、話し合いが消極的になるのかなとも感じていたので、だからこそ『書き込む時間』『話し合う時間』としっかりと分けることが大切なのかと感じました。」とのことでした。★3での学びへの答えをいただけたと思いました。

・今回、先生も生徒たちも、初めて本質観取に取り組むということで、教科書の展開通りに授業を進めてくださいました。先生が丁寧に活動指示をされていたことで、子どもたちの話し合いに先生も参加し、いっしょに質問(突っ込み)をしていたことで、授業の展開をよりよい流れへと導いていたように感じました。先生が各班の話し合いの状況を見ながら、対話を活性化させる起爆剤となるように声をかけていたからこそ、生徒が迷子になることなく、生徒どうしの対話中心の授業が展開できたように思いました。

・振り返りで、「今日、『学び』の本質を考えたことは、あなたのこれからと、どんなところがつながるでしょうか。」という明確な観点を示すことで、ただ話し合っただけで終わらずに、話し合った内容そのものについて、生徒自身の中で価値付けることができていたように感じました。

(授業見学日:2025年10月2日)

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