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3年「故郷」(渡邉光輝先生)

中学校国語科授業リポート

2026年4月3日 更新

国語教科書編集部

2025年11月4日にお茶の水女子大学附属中学校で行われた渡邉光輝先生の授業(3年生)を取材しました。

授業の全体像

「故郷」(3年)は、昭和41(1966)年度の教科書から60年にわたって掲載されている教材です。渡邉先生は、このことに注目し、「『故郷』は今の中学生が読むのにふさわしい作品なのか」という問いを軸に、文学作品を批評的に読む力を育むことを目標とした単元を設定しました。

取材した第3時は、人物の言動からそれぞれの人物が表すメッセージを読み取り、「故郷」が描く人間や社会について考えるという時間です。考えるための道具として、オンライン編集ツールやAIも活用するとのこと。いったいどのようなものなのでしょうか。

学習の流れ[全7時間]

第1時

本文を読み、登場人物(「私」「ルントウ」「ヤンおばさん」)についての問いをもつ。

第2時

登場人物の設定と関係を捉え、人物相関図を作成する。

第3時

「故郷」が描く人間、社会について考える。

第4・5時

「故郷」と組み合わせて読むなら「走れメロス」と「少年の日の思い出」どちらがよいかを検討する。

第6時

グループで考えたことを、発表し合う。

第7時

これまで学んだことをもとに、文学作品を批評する。
テーマ:「故郷」は今の中学生が読むのにふさわしい作品なのか

第3時:「故郷」が描く人間、社会について考える

分析をもとに、人物相関図をつくる

まずは、前時からの続きで、登場人物の分析シートをもとに、人物相関図を完成させていきます。分析シートは、「私」「ルントウ」「ヤンおばさん」を共通の観点で分析したものです。オンライン編集ツールを使い、グループ内で人物を分担して分析したうえで、全員で検討したそうです。
人物相関図は、編集ツールを活用して各自で作成します。先生からは、「人物の関係だけでなく、互いに抱いている感情もわかる図にしよう。」という言葉かけがありました。生徒たちは、言葉を書いたり、消したり、選んだりしつつ、人物の配置や矢印の種類も検討して、自分なりの相関図を作っていきます。3~4人のグループ形式の座席なので、迷ったときや自信のないときは、相談しながら進めていました。

共通の観点で登場人物を分析するためのシート。 画像
共通の観点で登場人物を分析するためのシート。
人物の分析をもとに相関図を作成する。画像は、先生が記入する項目の説明に使用したもの。 画像
人物の分析をもとに相関図を作成する。
画像は、先生が記入する項目の説明に使用したもの。

人間の姿・社会の姿について話し合う

続いて、先生から「文学作品では、登場人物の姿を手がかりに『人間や社会の姿』を見いだすことができます。」と、「文学」についての解説がありました。生徒たちは、「故郷」からいったいどのような人間の姿・社会の姿を読み取るのでしょうか。グループで、エピソードを一つ取り上げ、その部分に表れる人間の姿・社会の姿について話し合うことになりました。
ここで、先生がカスタマイズしたAI検索が案内されます。「ルントウが変わったと思う場面は?」などと質問すると、該当する叙述部分が示されるというものです。解釈は出てこないので、話し合いのなかで、一意見として検討するようにとのことでした。
生徒たちは、自分の人物相関図をもとに意見を述べ合ったり、教科書をめくって叙述を確かめたりしながら話し合い、グループとしての解釈をホワイトボードにまとめていきます。AI検索を使って、他に検討すべき叙述がないかを確かめる姿もありました。

先生が示した話し合う際の留意点

  • 本文の言葉や描写を根拠とすること(なるべく多く挙げる)
  • 解釈は一つに限らないこと
  • インターネットでの検索は禁止

生徒の様子
ルントウとの再会の場面を選んだグループでは、二人の会話をもとに主従関係や貧富の差が人間に与える影響について考えていました。「どうしてそう考えたの?」「ここにこう書いてあるよ。」「ルントウから見ると…。」「つまり、…ということ?」と、それぞれの読みを重ねて検討することで、考えが深まっている様子でした。

活動の様子1 画像

活動の様子2 画像

授業を終えて

先生からのひと言

批評的に読むとは、作品をさまざまな角度から検討し、本文の具体的な部分を根拠にして自分の考えを組み立てるということです。今は、インターネットで検索すると簡単に「誰か」の解釈にいきつきます。しかし、生徒には、他者の見方や考え方を踏まえつつも作品と向き合い、自分の考えをもってもらいたいと思います。
今回、提示したAI検索は、解釈が出てくるものではありません。生徒が、「AIはなぜこの箇所を示したのか」と考えたり、自分の思考を客観視するヒントにしたりすることで、一つの作品でもさまざまな読み方が可能であることを実感できるようにしました。

編集後記

「故郷」とAI?どんな授業??と想像がつかないまま見学に伺いましたが、観点をもって人物を分析したり、エピソードから人間や社会の姿を考えたりと、作品とじっくり向き合う授業でした。生徒たちは、AIも含めICT機器を活用して、思考の整理や可視化を行っていました。国語の授業として大切なことは変わらず、役立つ道具が増えたのだなと思いました。

2025年11月4日取材
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