みつむら web magazine

オーダーメイドの学びを子どもたちに

授業に役立つ

2026年3月24日 更新

国語の授業はあまり得意だと思っていなかった3年目の教師が、従来の型にとらわれない授業を模索しながら、主体的で協働的な学びの実現に正面から挑戦している様子をリポートします。

横浜市立美しが丘東小学校(藤本光子校長)では、重点研究テーマとして「他者との関わり合いを通して、主体的に学び、自分の資質能力を高める」ことに3年間取り組んできた。

その結果、体育の授業で、「できるようになりたい」「次はこうしたい」などの主体的な意欲が生まれ、友達のめあてを知り、アドバイスしたり友達の考えも取り入れたりするなどの協働的な姿も見られるようになったという。

そうした成果を他教科にも生かしたいという先生方の願いが生まれ、国語でも自分のめあてをもち、子どもどうしで話し合いながら達成していく授業の構想が始まった。

3年目の教師の挑戦

5年生を担任する後藤杏菜先生は、教師歴3年。国語の授業はあまり得意だと感じていなかった。しかし、藤本校長から背中を押され、この大きなテーマに取り組むことになった。

これまでの国語の授業では、子どもたちが自分の考えばかりに意識が向いてしまうことが多くみられていたことから、友達の考えにも着目しながら、さらに自分の考えをよりよいものにしたり、友達の話を聞いてさらに自分の考えに自信をもったりするような、交流する必要感を意識させながら学ぶ姿勢が求められる。

後藤先生は、「大造じいさんとガン」の授業で、「登場人物の心情の変化を考え、友達の考えを聞いて比べて語り合おう」という単元を設定。「私とあなたの魅力交流会」という言語活動を通して、子どもたち一人一人が自分なりのめあてをもって人物や物語の全体像を想像しながら、物語の魅力に迫るという授業だ。

【指導計画】

1時 物語の魅力を伝え合う目的を確認し、物語を読んで疑問を出し合う。

2時 全体で疑問を共有し、単元を通しての自分のめあてと計画を立てる。

3時〜5時 物語の魅力について、読みを深める。(自分で考えてみたい課題を選んで取り組む。)

6時 物語の魅力とそう考える理由をまとめる。

7時 自分の考えを交流し、学習をふりかえる。

子どもの個性に応じたワークシートを用意

3時~5時に、子どもたちがそれぞれにまとめたワークシートをもとに、お互いの考えを交流する。
このときに使ったワークシートは9種類。後藤先生が、子どもの実態やめあてに合わせて自由に選択できるように工夫した。

ワークシートに書き込む子ども

①「大造じいさんとガン」を読んで、「大造じいさん」の心情の変化を読み取ろう。
②「大造じいさんとガン」を読んで、「大造じいさん」と「残雪」はどんな関係にあるのか読み取ろう。
③「大造じいさんとガン」を読んで、情景をえがいた表現の効果に着目して、登場人物の心情を考えよう。
大きくこの三つの課題のワークシートを作成し、さらに枠線やイラストなどのあり無しで、それぞれ3種類を用意した。
※赤い矢印を押すと、①のシートの拡大画像をご覧いただけます。

子どもの疑問をもとにして授業計画を立てるは本当に難しいことでした。
子どもの思いをきちんと取り上げつつも、いっぽうでこの単元で学ばせなければならないことがあるというところの兼ね合いに苦労しました。(後藤先生 以下同)

一見、子どもたちが教室の中でばらばらに活動しているようにも見えるが、めあてを達成しようと、いつもの授業以上に集中しているようだ。

子どもたちどうしで考えを述べ合ったり、アドバイスをしたりしながら、ワークシートはさらに充実していく。新たな発見に出会うたびに、目を輝かせる子どもたちの姿がそこここで見られた。

教師の立ち位置が難しくて、授業中にすべての子どもを見取ることはできないし、取り残されている子どもだけにつきっきりになると周りの子どものことが見えなくなってくる。でも取り残されている子どもを放っておくとその子はずっと時間が止まったままになる……そんなジレンマもありました。

後藤先生は、放課後にワークシートをチェックしながら全員の理解度を把握し、次の時間に子どもたちの考えや手立てのいくつかを紹介するなどの工夫をして「教師のめあて」からズレが生じないようにも努めた。

こうした努力が実り、この単元の後に同じ形式で実践した授業でも、子どもたちが一斉に席を動かしたりしながら、主体的に授業に参加しようとする姿が見られて、子どもたちをもっと信じてもいいんだなという思いがますます強くなったと後藤先生は話す。

子どもたちどうしで話し合いながら課題を解決していく

覚悟をもって新しい授業に取り組む

これまでは、どうしても教科書のここまでをやらなきゃ、教え込まなきゃという意識が強すぎたのですが、子どもが楽しく学んでいる姿を見ているとこちらまでウキウキしてきて、子どもたちに学びを委ねてもいいんだなと思えるようになりました。
ただ、どうしてもしゃべりすぎている自分に気がついて、なるべくしゃべらないようにしようと思ったら、今度はしゃべるべきタイミングがわからなくなったり、子どもの活動を止めるべきタイミングが遅くなってしまったりすることもありました。それが、今後の課題です。

子どもの疑問に対応する後藤先生
子ども一人一人の質問にていねいに対応する後藤先生(右)

この実践研究を主導してきた藤本校長は、「たしかに最初は、自由に学ばせると子どもが何をしているかわからなくなるという心配はあります。わからない子どもや、遊んでいる子どもが出てくるのではないかと、つい思ってしまうのは当然だと思います。それでなかなかこうした授業をやることは避けてしまいがちです。しかし、教師の思い切り、勇気、覚悟、度胸といったものがこれからはもっと必要なんだと思います」と、後藤先生のチャレンジを高く評価する。

また、授業の指導に当たってきた松永立志先生(元 光村図書小学校「国語」編集委員)は、「ゆるゆるの授業」というキーワードを用いて、ポジティブな意味での「ゆるゆるさ」の必要性を強調していた。これは従来型の教師主導による一方向的な授業では見られないにぎやかな教室風景のことで、子どもが「必要感に根ざした対話や選択」をする主体性を尊重した授業を指している。そのうえで、他の子どものじゃまにならないような学級独自のルールを設けることも大切な観点であると指摘した。

「後藤先生の授業を見て、他の先生方も授業欲をかき立てられたようで、このスタイルを実践する先生方も増えてきたことはうれしいですね。この取り組みを通じて、これからますます重要視される主体的で協働的な学びが着実に定着していけたら」と、藤本校長は、学校の未来に手応えを感じているようだった。

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