みつむら web magazine

第15回 デジタル教科書で読みを深める(2)――黒板ツールを使って

そがべ先生の国語教室

2016年7月25日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第15回 デジタル教科書で読みを深める(2)
――黒板ツールを使って

前回(第14回)に続き、デジタル教科書を授業の中でどう活用していくかご紹介していきます。

第14回 デジタル教科書で読みを深める――黒板ツールを使って(1)

教材文への導入で活用

2年生の「君は『最後の晩餐』を知っているか」を例にしてみましょう。
以前に「中学校国語教育相談室69号」(※)でもご紹介しましたが、私はこの教材文の導入で、修復前と修復後の「最後の晩餐」の画像を交互に映示し、生徒たちに「どちらが修復後だろう?」と投げかけました。それによって、生徒の興味を引きつけることができ、読む必然性が生まれると考えたからです。

※「中学校国語教育相談室69号」はこちらから。

今回のデジタル教科書には、この修復前と修復後の画像が収録されていますので、必要に応じて授業の導入でご活用いただければと思います。

画像、デジタル教科書の画面
「君は『最後の晩餐』を知っているか」(2年)
修復前と修復後の「最後の晩餐」の画像を収録している。

映像資料を提示するこの機能は旧来からあるものですが、こうした教室発の実践アイデアをどんどん提起して、資料や教材として盛り込んでもらえるとよいですね。

「黒板ツール」を使って、要点を抜き出す

さて、前回に引き続き「本文を抜き出して、読みを深めよう」の機能(以下、「黒板ツール」)を、授業の中でどう活用するかご紹介していきましょう。

「評論を読む」という言語活動は、評論対象(本教材では「最後の晩餐」という絵画)に対して筆者はどんなふうに見ているのか考えているのかを読み取っていくことが基本になります。その際、その評論対象について、自分はどう見るか、どう考えるかと自問しつつ、時には筆者の見方に深くうなずき、時には本当にそうだろうか、違うのではないかと批判的に考えていく。そうやって筆者と対話し、筆者の見方に触れて自分と対話しながら読んでいくのが評論を読むという行為なのだと思います。

それでは、筆者は「最後の晩餐」をズバリどう見ているか、文章中からズバリ抜き出させてみましょう。

まず、自分で、大段落1(第1~4段落)の中から、「最後の晩餐」に対する筆者の見方がズバリ表れた言葉に線を引かせます。それを発表し合う際に、「黒板ツール」を使ってみましょう。

こんな感じです。

画像、デジタル教科書の画面
「黒板ツール」を使って、生徒が指摘した文字列を抜き出して短冊化する。

生徒たちから出たものは抜き出して短冊化して示しつつ、まとめたり削ったり付け足したりします。
上図は、一通り整理した形ですが、生徒から出た順に貼り出し、後から並べ直すことで、筆者がどんなふうに「最後の晩餐」やレオナルドの絵を評しているのか理解が深まることでしょう。

「黒板ツール」を使って、論理展開を可視化する

次に、「黒板ツール」を使って、筆者の論理を可視化してみましょう。
大段落3(第17~21段落)の論理展開を「接続詞」の働きに注目してたどってみます。

まず、線で囲むなどして接続詞を注目させます。短冊で取り出したうえで、その前後の要点にあたる部分を抜き出させます。下図は第19段落の「しかし」「だから」の前後を抜き出した様子です。

画像、デジタル教科書の画像

こうして取り出してみると、

(現状は)細部はなくなってしまった。

しかし

(全体が)よく見えるようになった。
(レオナルドが表現しようとしたものが)よく見えるようになった。

だから

「かっこいい」と思えるのだ。

という具合に、「(修復で)細部が欠け落ちた分、全体(画家の意図)が見えるようになった」という筆者独特の見方が鮮明に見えてきます。
科学的だから、新しいから、「かっこいい」のではなく、時を経て細部が欠け落ちてもなお、表現しようとしたものが伝わってくるから「かっこいい」のだということがよく見えてきますね。つまりはそうした絵を描いたレオナルドに対する賛嘆の辞でもあるからこそ「かっこいい」なのでしょう。

今回は、「黒板ツール」を使って要点を可視化したり、書き手の論理を可視化したりする例を示してみました。
前回も述べましたが、こうした授業は、従来も短冊を使ったりチョークで板書したりして行ってきたものです。しかし、デジタル教科書の「黒板ツール」を使った場合は、その場で短冊を作り出せたり、パッと見て印象的に整理したりすることができます。そこがおもしろいところであり、使い方を工夫してみたいところですね。

欲をいえば、取り出した短冊の形を変えられたり、書き込みがもう少しやりやすかったりするとよいのですが、そのあたりはデジタル教科書自体が少しずつ進化していくのを待ちたいですね。デジタル教科書を育てていくのも、私たち現場教師なのです。

次回は、デジタル教科書の「人物相関図を作る」機能を使った実践をご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

※今回ご紹介したのは、平成28年度版 指導者用 光村「国語デジタル教科書」です。デジタル教科書・教材については下記よりご覧ください。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集