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そがべ先生の国語教室

宗我部 義則

お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第27回 取り合わせで作る俳句の授業
「俳句を作って楽しもう」(3年)

2021.07.30

先生方は俳句創作の指導をどんなふうに行っていますか?

「伝えたいことを五・七・五で言ってみよう。季語を入れるんだよ。さあやってみよう!」

と指示するだけして終わりということはありませんか?

お題としての写真を提示して「さあ作ってみよう!」とやるのは、題材や発想の指導としてよい工夫ですが、生徒たちはそこから思い浮かんだことをどう俳句にするかを知りたいのです。

どうすれば生徒たちが「俳句が作れた!」という達成感をもてるでしょう。私たち国語教師の出番です。

はじめに ――俳句の二つの型

「五・七・五のリズムによる定型詩」として知られる俳句には、大きく二つの型があります。正岡子規の句で典型を示してみます。

A いくたびも雪の深さを尋ねけり  正岡子規

B 赤蜻蛉筑波に雲もなかりけり  正岡子規

Aの句は、途中に句切れがなく、一気に、

A 何度も雪の深さを尋ねたことだなぁ。

と、一文で一つのことを言っています。これに対して、Bの句は、

B 赤蜻蛉が飛んでいるなあ。はるかな筑波山の上の空には雲一つないことだよ。

と、句切れによって、二つのことを組み合わせてそれぞれの状況や情景を描いています。

つまり、俳句には、「五・七・五の一続きで一つのことをいう型」と、「五・七/五」「五/七・五」のように「二つの事柄を組み合わせていう型」があるのです。本来はこの他にも

B’ 萬緑の中や/吾子の歯生え初むる  中村草田男

のように、五・七・五の七の途中で切れる(中切れ・中間切れ)句もありますが、これもBのバリエーションと考えて「大きく二つ」というわけです。

そして、内容面からも、Aの句は「しんしんと降り積もっていく雪の様子」だけを描いています。それに対して、Bの句は「赤蜻蛉が飛んでいる様子」と「雲もなく晴れた筑波山の風景」の二つを組み合わせています。Aのように季語の景物だけの句を「一物仕立て」といい、Bのように季語の他にもう一つの景物を描き、二つの景物を配合した句を「取り合わせ」と呼びます。

教科書3年75ページの「俳句を作って楽しもう」では、Bの型、“句切れを挟んで「取り合わせ」で作るやり方”を紹介しています。もちろん、これは必ずBで作るように指導せよ、という意味ではありません。ただ「俳句を作ろう」というとAのタイプで作ろうとする生徒が多いからこそ、あえて、Bの作り方を紹介しているのです。そして、実は「取り合わせ」で作ると、なんといっても俳句らしい格のある句ができることが多く、かつ、作った本人もハッとするようなおもしろい句になることが多いので、生徒たちの満足感がとても大きいのです。初心の生徒たちにとって、「よい句が作れたぞ!」という達成感こそが、「俳句って楽しい!」「俳句を作るのっておもしろい!」という成功体験になるのです。

前置きが長くなりました。このへんで実際の授業の展開例を紹介しましょう。

1. 俳句を作ってみよう ―まずは形から入る!

私はよく俳句の鑑賞の授業の後で、創作の授業へと展開します。

「さあ、今度は君たちも俳句に挑戦だ!」と呼びかけると、生徒は「え~!無理!」と抵抗したりしますが、ひるんではいけません!

こういうのは形から入るのが大切だよ。まずは俳号を考えましょう! 高浜虚子は本名・清(きよし)をもじって虚子にしました。私はよく「がべ先生」などと呼ばれていますから、画餅とでも名乗りましょうか! 絵に描いた餅で「がべぃ」ね。役に立たない感が満載ですが(笑)。

などと笑いながら誘うと、生徒たちは俳号を考えているうちに、すっかりノリノリになってきます。

2. 二句一章「取り合わせ」の作り方

教材「俳句を作って楽しもう」を使って、取り合わせによる俳句作りを指導します。

有名な「古池や蛙飛こむ水のおと」の句は、実は「蛙飛こむ水のおと」という七・五が先にできたという話が紹介されていますが、これは芭蕉の直弟子の各務支考(かがみ・しこう)や向井去来(むかい・きょらい)らが伝えているエピソードで、例えば支考の『葛の松原』という俳論書には次のように書かれています。ここでは現代語で大意を紹介します。

三月末の頃、芭蕉庵にあった古池に蛙が飛び込む音がした。その風情をとらえて「蛙飛こむ水のおと」という七・五ができた。弟子の宝井其角(たからい・きかく)が初めの五に「山吹や」と置いてはどうかと進言したが、芭蕉はただ「古池や」と置いて完成とした。

おもしろいですね。弟子の其角が「山吹や」と提案したのは、その頃ちょうど山吹の花がきれいだったからかもしれませんが、「山吹」と「蛙」は、実は和歌の伝統の中では「梅に鶯」というのと同じくらい誰もが思いつく取り合わせだったのです。常套の「山吹」でなく、「古池」を取り合わせることで、静寂な古池のイメージと、動きのある「蛙の水音」が見事に対照し、深い味わいのある句になったというわけです(※)。

このあたりの詳細は、復本一郎 著『芭蕉古池伝説』(大修館書店、1988年)他、さまざまな芭蕉の研究者が触れています。

授業ではこんなエピソードを紹介しながら、

① 俳句にしたいことを短い文で表す。 〈例〉友達からうれしいメールが来た。
② ①を五・七または七・五で表現する。 〈例〉友からの着信うれし(五・七)
③ 季語がなければ季語を、あれば他の言葉を五に当てはめる。 〈例〉友からの着信うれし/春の風

という三つのステップに沿ってやり方を確認します。

このとき①から②、つまり十二音の定型にする場面では、例えば、

「友からの着信うれし」はとっても上手な例ですね。でも、「友達からうれしいメールが来た」というのを五・七や七・五でいう言い方、他にもありそうですね。言葉を付け足したり換えたりしてみてもいいですよ。挑戦してみましょう。

などと膨らませてみてもおもしろい。生徒たちからは、こんな案が出ました。

  • 友からのうれしいメール(五・七)
  • 友達のメールうれしき(五・七)
  • うれしいメール届いたよ(七・五)
  • 友のメールの着信音(七・五)

そこで、「どれもよい感じですね。言いたいことを十二音で表すには、いろいろな言い方が考えられますね」と褒めながら、次はこれに合う「季語」を考えさせます。こんな感じです。

よい五・七や七・五になったね。この十二音には季語がないから、季語を探して取り合わせてみましょう。教科書では、「春の風」が取り合わせてありますね。

友からのうれしいメール/春の風

春の風/友のメールの着信音

ほら、どれもぴったりで、カッコいい句になりますね。「春の風」以外の季語で、ぴったりはまるものを探してみましょう。本当はそのときの季節にぴったりの季語を使うけど、今日は練習だからどの季節でもいいことにしましょう。

と、『歳時記』から探させます。私の学校では、歳時記を40冊ほど揃えてあって、こんな場面ではそれぞれが自由にそれを使って言葉を探します。歳時記をそんなに置いていないという学校では、お使いの資料集から探したり、インターネットで検索したりしてもよいでしょう。

すると「夏の風」など、他の季節の風を取り合わせる生徒が必ず出てきます。そんなときは、

春の風/友のメールの着信音

夏の風/友のメールの着信音

秋の風/友のメールの着信音

冬の風/友のメールの着信音

などと並べてみて、読み手が受ける印象がどう変わるか話し合ってもいいですね。「春の風だとやわらかくてうれしそうだけど、秋や冬だと悲しい感じがする」とか、「夏の風はなんだか力強い励ましのメールかなと思う。でも冬の風だとメールでケンカしてる気がする」など、いろいろな印象になることが感じられます。

時には、「ぶらんこって春の季語なんだ!」とビックリしながら、

ぶらんこやうれしいメール届いたよ

と置いてみたり、

友からのうれしいメール/風光る

友達のメールうれしき/風車

などと手当たりしだいに置いてみてはハッとしたり。楽しいですよ!

3. 実際に作ってみる

さて、実際に作るときには何かコツがあるでしょうか。

実は、五・七や七・五を作るときに、「季語を入れない」ほうが残りの五文字を考えるのが簡単になるのです。季語を探せばよいのですから。

でも、生徒たちはいつの間にか、季語を入れて作ってしまうこともあります。あまりうるさく言うより、教科書に書かれた手順③のとおり、

  • 十二音に季語が含まれない場合は、季語を取り合わせる。
  • 十二音に季語が含まれる場合は、季語以外の言葉を取り合わせる。

と指導すればよいでしょう。

どうですか? 五・七や七・五で作って、五を組み合わせる。おもしろそうですよね。

ぜひ挑戦してみてください。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。