みつむら web magazine

第4回 言葉の引き出しづくり―中・高学年編―

青山先生の国語教室

2016年10月4日 更新

青山 由紀 筑波大学附属小学校教諭

子どものモチベーションをアップさせる、国語の授業アイデアをご紹介します。

第4回 言葉の引き出しづくり―中・高学年編―

前回は、低学年の語彙指導についてご紹介しました。低学年は語彙を増やすことに重点を置きましたが、中学年以降は、これらの語彙を使えるようにしていくことが大切です。

中・高学年では、文学教材を学習する際、人柄を表す表現が必要になります。例えば「わらぐつの中の神様」(5年)の登場人物の大工さんはどんな人柄なのでしょうか。子どもたちからは、「優しい」「真面目」という言葉は出てきますが、「誠実」という言葉はなかなか出てきません。そんなときは、選択できるものを用意してあげるという方法が有効です。

例えば、教科書巻末付録に、「言葉の宝箱」という紙面があります。「人物を表す言葉」や「気持ちを表す言葉」などが多数載っています。選択肢があれば、その中からぴったりする言葉を見つけられるでしょう。そして、それを実際使ってみると、使用語彙として定着していきます。
「言葉の宝箱」は、状況に応じて、当該学年のものだけではなく、前後の学年のものも合わせて掲示したり配布したりしてもいいと思います。文章を書くときに、このような選択肢を手元に置き、積極的に使っていくと、使用語彙の引き出しが増えていきます。

画像、教科書紙面、言葉の宝箱
平成27年度版 光村図書小学校『国語』6年P246-247「言葉の宝箱」

使用語彙をさらに増やすためには、子どもから出てきた言葉を、「言葉の宝箱」の中に追記していくことが大切です。例えば、「あめ玉」(5年)のさむらいは、どんな人物なのか学習した際、子どもから「ひょうきん」という表現が出ました。「言葉の宝箱」に入っていない言葉はどんどん書き加えるようにしていきます。

「言葉の宝箱」が増えていったら、今度は同じ意味の言葉をグルーピングしていきます。例えば、「誠実」と「真面目」は同じような意味ですが、ニュアンスがちょっと違います。これらを同じ語群として理解し、状況に応じて使い分けられることが大切です。グルーピングしていない、ばらばらの言葉をたくさん知っているだけでは、語彙が多いとはいえませんし、状況に応じて的確な言葉を使用することができません。グルーピングした語群を増やしていくことが語彙学習なのです。

グルーピングの例として、以下のような書籍を活用することもおすすめです。

光村の国語
「語彙を広げる! 書いて、話して、伝わることば1」
監修:髙木まさき、森山卓郎
編集:青山由紀、岸田薫
発行:光村教育図書

「説明する」「紹介する」「推薦する」などの活動場面ごとに、効果的なことばの使い方を学ぶことができます。

画像、紙面
P24の紙面の一部 意味の近い言葉をグルーピングしているページです。

小学生は、語彙を増やすのに最適な年頃です。普段の生活の中で、多くの言葉を見つけていくことができますし、カードやシールを集めるなど、何かを収集するのが大好きな年頃。カードやシールの場合、たくさん集めたら、何らかのカテゴリーで整理したくなるでしょう。言葉集めも同様です。教科書や言葉図鑑などを活用しながら、楽しんで増やしていくことをおすすめします。(談)

次回は、漢字指導について取り上げます。

青山由紀(あおやま・ゆき)

東京都生まれ。筑波大学大学院修士課程修了。日本国語教育学会常任理事。全国国語授業研究会常任理事。著書に『古典が好きになる』(光村図書)、『板書 きれいで読みやすい字を書くコツ』(ナツメ社/樋口咲子共著)、『子どもを国語好きにする授業アイデア』(学事出版)などがある。光村図書小学校『国語』教科書編集委員を務める。

関連記事

記事を探す

カテゴリ別

学校区分

教科別

対象

特集