子どもと大人の「ことばQ&A」
2024年4月25日 更新
光村図書 校閲課
ふだん何気なく使っている言葉も、ちょっと立ち止まって考えてみたら、いろいろおもしろいところが見えてきます。
このコーナーでは、教科書の校閲を担当しているメンバーが、言葉をめぐるさまざまな疑問を取り上げて解説していきます。
「間近」を平仮名で書くときには、「まじか」と「まぢか」のどちらがよいのでしょうか。
連休も近づき、夏の訪れも間近になってきました。気持ちのよい時期ですね。
「ちかづく」「おとずれ」、「まぢか」「じき」同じ読み方をするのに、どうして仮名を使い分けているのでしょうか。また、「づ」「ず」、「ぢ」「じ」をどう使い分ければいいか迷った経験はありませんか。
「づ」「ず」、「ぢ」「じ」は、古くはそれぞれが異なる音として区別され、使い分けが必要な仮名とされていました。しかし、徐々に「づ」と「ず」、「ぢ」と「じ」の発音の差が縮まり、17世紀末(江戸時代)には発音の区別がなくなって、仮名遣い上の書き分けが問題とされるようになりました。
現在の私たちがよりどころにする資料は、「現代仮名遣い」(昭和61年内閣告示)です。ここには、原則的には「じ」「ず」を用い、「ぢ」「づ」は表記の慣習による特例のみに用いると書かれています。
これによると「間近」は「二語の連合によって生じた『ぢ』と『づ』」という特例に当たり、「まぢか」と書くのが正しいことになります。
参考として、「現代仮名遣い」から「じ」「ぢ」「ず」「づ」を使う例を挙げておきます。
●「ぢ」「づ」を使う例
(1) 同音の連呼によって生じた「ぢ」「づ」
ちぢみ(縮) ちぢむ ちぢれる ちぢこまる
つづみ(鼓) つづく(続) つづる(綴)
(2) 二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」
はなぢ(鼻血) そこぢから(底力) いれぢえ(入知恵) ちゃのみぢゃわん
まぢか(間近) こぢんまり ちかぢか(近々)
みかづき(三日月) たづな(手綱) おこづかい(小遣) わしづかみ てづくり(手作)
こづつみ(小包) みちづれ(道連) かたづく もとづく うらづける ねばりづよい
つねづね(常々) つくづく
●「じ」「ず」を本則とするが「ぢ」「づ」も許容とする例
せかいじゅう(世界中) いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆)
うなずく おとずれる(訪) つまずく ひざまずく ひとりずつ ゆうずう(融通)
Illustration: Mimei Umimachi