みつむら web magazine

「収束」? 「終息」?

子どもと大人の「ことばQ&A」

2024年3月6日 更新

光村図書 校閲課

ふだん何気なく使っている言葉も、ちょっと立ち止まって考えてみたら、いろいろおもしろいところが見えてきます。
このコーナーでは、教科書の校閲を担当しているメンバーが、言葉をめぐるさまざまな疑問を取り上げて解説していきます。

「新型コロナウイルスのシュウソクに向けて……」というときは、「収束」と「終息」のどちらを使えばよいのでしょうか。

新型コロナウイルスの出現から4年。感染症法上の対策は個人にゆだねられることになりましたが、いまだ感染の報を聞くことも多く、完全なシュウソクにはまだ時間がかかりそうです。

さて、「新型コロナウイルスのシュウソク」と聞くと、「収束」と「終息」の二つの言葉が思い浮かびますが、この場合、どちらの言葉も使うことができます。ただし、これらの言葉の意味は似ているようでいて違いがあるので、使い分けが必要になります。
「収束」は、「収」に「おさめる」、束に「たばねる」という意味があり、「物事がある一定の状態に落ち着く」という意味で使われます。「終息」は「終」に「おわる」、「息」に「やむ」という意味があり、「物事が終わる」という意味で使われます。

新聞やニュースなどの報道を見ると、「感染がある程度落ち着くこと」という意味では「新型コロナウイルスの収束に向けて」と書き、いっぽうで、「感染がなくなること」という意味では「新型コロナウイルスの終息に向けて」と書いているようです。全体の文脈や書き手が何に重きを置いているかによって、表記のしかたが変わってくるのです。

例としては、「感染者数が減少し、新型コロナウイルスの流行は収束に向かっている」「新型コロナウイルスの世界的な終息については、難しい状況にある」などのように使い分けることができます。全体の流れとしては、「収束」の状態を経てから「終息」に至るといえるでしょう。

Illustration:  Mimei Umimachi

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