「飛ぶ教室」のご紹介
2017年7月28日 更新
「飛ぶ教室」編集部 光村図書出版
児童文学の総合誌「飛ぶ教室」に関連した企画をご紹介していきます。
スペシャルインタビュー 長谷川義史「不安があるから、ええねん」
先を見つめる強いまなざし、ぎゅっと結んだ口、固く握られた拳。そんな気迫のこもった少年が印象的な「飛ぶ教室」第50号の表紙。描いてくださったのは、本誌で漫画「さんぱつやきょうこさん」を連載中の絵本作家・長谷川義史さんです。
特集名「児童文学の大冒険」にちなんで描かれた、この表紙に込められた思いとは? 長谷川さんにお聞きしました。
表の顔と裏の顔?
今号の特集名「児童文学の大冒険」をテーマに描いていただいた表紙ですが、どのようなことをイメージされたんでしょうか?
長谷川 「大冒険」という言葉から、「決意して一歩、歩き出している」ということをイメージして描きました。
おもしろいなと思ったのは、裏表紙の少年の表情です。決意の顔の表紙とは違う、不安そうな顔ですね。
長谷川 「表」の表紙と「裏」の裏表紙じゃないですけど、この絵も全くその通りになってます。(裏表紙をしばらく見て)……それにしても本当、不安な顔してるね(笑)。
でも、「冒険」って、そういうことだと思うんですよ。決意して一歩目を踏み出すんですけど、そこには不安な気持ちもある。決意の意味が、その不安にもあるというか。不安があるからこそ、未知の世界へ行こうとするんやと思います。
道の先にあるもの
長谷川 この子が立ってる道、この道の先には、必ず何かがあるわけですよね。もしかすると、この子はそれを「怖そう」と思ってるんかもしれへん。でも、そんなふうに思ってても、頑張って行ってみたら、案外大丈夫やったりする。たとえ、そこでやっかいなこととかあったとしても、そこまで頑張って歩いてきた人は、また先に行ける。そんな気がするんです。
道の先に何があるのか最初からわかってたって、何の意味もないでしょ? 先が見えない道を行きたいと思わなくなったら、人って終わりやと思います。
今回のテーマについてはそういうイメージをもって描きましたけど、それとは別に決意みたいなのがあって……。
決意ですか?
長谷川 はい。絵本の仕事のときは、しっかりと決意をもってやっていかんとと、常に思ってます。絵本では長(新太)さん、児童文学では今江(祥智)さん、そういう先人たちが歩いた道を、今はぼくらが歩いてるんですが、今の時代というのは、かなりしっかり決意をもって歩かんと、その道に危ういものが出てくると思うんです。そんな危ういもんに惑わされることなく、しっかりやっていかなあかん。そんな思いがあります。
特に「飛ぶ教室」は、今江さんからいただいた出会いですからね。今江さんに失礼なことせんように、と。
「絵を描く」ということ
ツイッターで、初めてこの表紙をアップしたとき、長谷川さんはそれをリツイートしながら、一言「きゃー。」って書かれていましたね。あの「きゃー。」のお気持ちは?
長谷川 照れです(笑)。そして、歓喜の気持ちも。
絵を描いているときって、「描き上げた時点で本としての出来上がりが見える、そんな予定調和的なものは絶対描いてはいかんぞ」と思ってやるんです。なので、どんな絵になるか、自分でもようわからへんのです。下書きもなく一発で、いわば一期一会。今回もそう。この表紙の赤なんか、感覚で描いてます。
そうして描いた絵を使って「本」という形にすると、デザインによって雰囲気もなにかも全然違ってくるんですけど、あのツイッターで、デザインされた表紙をはじめて見て、「いい仕上がりにしてもらってるなあ」とうれしく思った。そういう意味を込めての「きゃー。」でしたね。
長谷川さんはこれまでもたくさんの絵を描かれてきましたが、長谷川さんにとって絵を描かれることは「冒険」のひとつですか?
長谷川 絵を描くことは、ぼくにとって冒険ではないですね。必然、です。
……さっきから偉そうに冒険についてしゃべってるけど、ぼく、小心者で、冒険なんかようせんのですわ(笑)。でも、「これはしたい」と決めたものだけは、絶対やっていきたい。それが、ぼくにとって「絵を描く」ということですねん。
「飛ぶ教室」第50号のアンケートにお答えいただいた方から抽選で、長谷川さんが今号のために描いてくださった絵を使った、「飛ぶ教室」オリジナル缶バッジやノートなどをプレゼントいたします。詳しくは、本誌をご覧ください(なお、ご応募の締め切りは、2017年10月24日です)。
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