みつむら web magazine

8 生徒からの出た意見のまとめ方

はじめよう、対話による鑑賞の授業

2015年1月22日 更新

美術における鑑賞を通した言語力育成が求められています。全国各地の学校や美術館で行われる美術鑑賞の授業の形として、先生や学芸員の解説を一方的に聞くのではなく、生徒自身が主体的に発言をし、対話をしながら美術作品に対する見方や価値意識を深めていく「対話による鑑賞授業」が注目されてきています。

生徒から出た意見を、どのようにまとめていけばいいでしょうか

授業開始時は自由に発言させ、対話の途中で小刻みにまとめていく

まとめをするのは授業の最後だけではありません。対話の途中で小刻みにまとめをしていきます。
授業開始の時点では自由に発言させてください。特定の意見に絞り込むのはもう少しあとです。いきなりいい意見が出たとしても、そこで話を深めていったら対話にもならないし、まだ十分に作品が見えていない生徒は授業からこぼれて落ちてしまいます。「何が見えますか。お話ししてください」と拡散的な質問をしているのですから、多様な見方や考え方を聞くようにするべきです。
授業開始からいくつかの意見が出てきた時点で、それまでの発言を振り返り、かんたんにまとめます。これを小まとめと呼んでいます。
小まとめの効果は絶大です。バラバラに出てきた意見を先生がまとめて示すことによって、生徒の頭の中が整理されます。聞き逃した意見が分かったり、意見どうしのつながりを意識したりするようになります。
授業の導入部分での小まとめは、いま何が話し合われようとしているのかを全員に確認することであり、全員を同じ土俵にのせる効果があります。

黒板を使う

意見の分布やまとめをするときは、通常の授業のように黒板を使ってもよいのです。このように述べると、美術館での対話による鑑賞を経験された方は、驚かれたかもしれません。美術館と学校とでは学習環境が違いますから、そんなところまで学校がそっくりまねる必要はないのです。  
むしろ黒板を使わないことの弊害を考えたほうがよいでしょう。
国語の時間に黒板を一切使わずに文学作品の読解を行うことなどありえない。さまざまな意見の共通性や違い、視点の多様性、そしてまとめに至る「板書」と呼ばれる教育的な手立ては、対話による鑑賞の授業においても有効であり、タブーになるわけはないのです。
学級には授業に集中できない生徒や自分の意見に固執する生徒、混乱して対話の進行についていけない生徒やゆっくりとしか考えられない生徒など、いろいろな事情をもった生徒がいるのです。小まとめと板書は、そうした生徒への配慮としても有効です。

関連書籍

対話による美術鑑賞の決定版!
『風神雷神はなぜ笑っているのか 対話による鑑賞完全講座』 (上野行一 著)

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