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「美術準備室」番外編 11号 鑑賞リポート

「美術準備室」番外編

2017年4月17日 更新

広報課 光村図書出版株式会社

年2回発行の広報誌「美術準備室」。 ウェブでは紙面に掲載できなかった情報をお届けします。

N君の作品を鑑賞しよう!~鑑賞リポート~

「今の私」を、紙粘土を使って表現するという、鈴野江里先生(鎌倉市立岩瀬中学校教諭)の授業。「美術準備室11号」P8-9では、N君の作品を取り上げ、彼の作品を「発想ノート」とともに詳しくご紹介しました。ここでは、N君の作品をクラス全員で鑑賞したときの模様をご紹介します。


鈴野江里先生は、「これから一つの作品について、みんなで語り合いたいと思います。その後に、作者自身に作品のことを話してもらいますよ。いろいろな見方があっていいから、自分の見方や感じ方をどんどん発表してね」と投げかけ、書画カメラを使って、N君の作品を電子黒板に映し出しました。

画像、鈴野先生の授業風景
左/電子黒板に生徒作品を映す鈴野先生 右/N君の作品

「この作品を見て、どう感じた?」と先生が問いかけると、生徒は自分の見方や感じ方を、次々と口にしていきます。

生徒1:

下の丸い部分が謎めいていると思った。

生徒2:

上の部分だけを見ると、植物っぽい。先のピンクのところは花で、成長していく自分を表しているんじゃないか。

先生:

下の部分はどう?

生徒3:

下の部分は、これまで積み重ねた努力。上の緑とピンクの部分は、その努力を使って花を咲かせようとしていると思う。

生徒4:

一つの花として見たとき、下のところが球根のように見える。そして真ん中の部分が土。そこから茎が伸びて花が咲いている。

先生:

そういう見方もあるのか。おもしろいね。

画像、鈴野先生の授業風景

最初の「植物っぽい」という発言を受けて、植物として想像を膨らましていく生徒たち。
すると、ある生徒が「あっ」という顔をして、こう言いました。

生徒5:

先生、(書画カメラで映すために横に寝かせている作品を)縦にしてみてもらえますか。

画像、授業風景

先生:

こう?(といいながら、作品を手のひらに乗せて、みんなに見せる)

生徒5:

ほら、ちょっと傾いていて、不安定なんですよね。

先生:

確かに、ちょっと曲がっているね。

生徒5:

その曲がっている不安定な感じが植物みたいだなと。「生きてる!」って感じがします。

先生:

ああ、この不安定さから、生きている感じがしたんだ。なるほど、おもしろいね。他にはどう?

生徒6:

色のことなんですけど。パッと見たとき、下の部分は青や緑などの色が使われているから、不安な気持ちを表しているのかと思いました。でも、その色の上に、赤やオレンジを重ねているから、そういう不安な気持ちを隠して、がんばろうって思っているんじゃないかな。

生徒たちからは、作品の形や色から、さまざまに想像を膨らませ、鑑賞していきました。一通り、生徒たちから発言が出たところで、「では、作者のN君にきいてみましょう」と先生が投げかけました。N君ははにかみながら、電子黒板の横に立って、作品を指し示しながら、制作の意図を説明していきます。

画像、授業風景
前に出て、自分の作品の説明をするN君。

N君:

まず、下の白いところ(1)は、僕のピュアな心を表しています(笑)。

生徒一同:

笑い

N君:

その白い部分を、いろんな色で包みました。これは、僕がいろんな人たちに支えられていることを表しています。そして、真ん中の紫の部分(2)は、悩みとかダークな気持ち。そこから上に向かって伸びていく部分(3)は、未熟な自分を表すために、かすれたような色の塗り方をしました。ダークな気持ちを切り替えて、ポジティブに生きていけるよう、途中からオレンジ色(4)にしました。さらに、新たに成長していくイメージで緑(5)にし、先っぽのピンク(6)は、つぼみのイメージで明るい未来を表しています。

先生:

さっき、少し曲がっているという意見があったけど?

N君:

なぜ曲がっているかというと、真っ直ぐきれいに未来へ辿り着けるはずはない、という気持ちがあるからです。

先生:

わざと傾くようにつくったんだね。


どうしてこういう形にしたのか、どうしてこのような色の塗り方をしたのか、N君の丁寧な説明を、他の生徒たちは真剣に聞き入っていました。

授業の模様をもっとご覧になりたい方はこちらから。

「美術準備室11号」授業リポート


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