道徳科授業レポート(中学校)
2026年2月6日 更新
光村図書 道徳課
編集部による授業見学レポート。今回おじゃましたのは、千葉大学教育学部附属中学校。中井康平先生による「使いすぎって、どういうこと?」(中学道徳1 きみが いちばん ひかるとき・光村図書)の授業の様子をお届けします。
見学にあたって
- 現在、ほとんどの人が、スマートフォンやタブレット端末などを利用しています。それらの普及が進み、便利な世の中になりましたが、使いすぎによる健康被害などが問題となることも。授業を通して、節度ある端末の使い方や大切にしたいマナーについて、生徒がどのように考えを広げたり、深めたりできるのか、興味深く拝見しました。
授業の概要
- 内容項目:A(2)節度、節制
- 生徒数:30人程度
- ICT環境:黒板の中央に、先生のPC画面を投影できるスクリーン(着脱可能)が設けられていました。端末を使って、クラスで意見を共有する場面がありました。
- 教材について:「情報端末の使いすぎでは?」と感じられるような「A:夜遅くにメッセージを送る」「B:受信したらすぐにメッセージを返す」「C:友達と話していてもスマートフォンを触る」「D:アプリ(ゲームなど)に課金をしている」「E:話題がいつもインターネットやゲームの話」の五つの行動について、「節度が守られていないと思う順番」に順位をつけ、お互いの順位づけとその理由などについてグループで交流しながら考えを深めていく教材です。
授業の流れ
目次
端末を使いすぎることで起こりうる問題について、考える〈17分〉
教科書P.90(1)「AからEのような行動を取る理由と、AからEのような行動を取り続けると、どんな結果を招くか」について考える〈10分〉
教科書P.90(2)「AからEの使い方について、より『節度が守られていない』と思うものから、より『節度が守れている』と思うものへ、順位をつける。」について考える〈10分〉
終末:スマートフォンやタブレット端末を使ううえで、節度を守るとはどういうことか、考える〈5分〉
黄マーカー…先生の発問・活動指示
★+編集部のまなび…授業を見て編集部が学んだこと・気づいたこと
導入:端末の使い方について、自分の生活を振り返る〈5分〉
先生
(先生が自作したワークシートを配付。)
まず、みんなにアンケートを実施したいと思います。題して、「私のスマートフォン・タブレット端末 使い方チェック」です。さっそくみんなに答えてもらおうと思います。
「勉強中に、ついついスマートフォンを触ってしまう」かどうか、「はい」か「いいえ」で答えてください。
(*AhaSlidesで作成したアンケートを、黒板に投影する。回答の入力ページは、Google Classroomで生徒に共有し、それぞれの端末上で答えさせる。回答結果は、リアルタイムで画面に反映される。)★1
*AhaSlidesは、プレゼンテーションソフトの一種。プレゼンテーション内に、AIを活用した機能の他、クイズ、テキストマイニング、Q&Aなどを取り入れることができる。本実践では、導入において、アンケート機能を活用。
「強い『はい』」「弱い『はい』」「弱い『いいえ』」「強い『いいえ』」の4択から回答。
回答数が多いものほど、縦軸が高くなる。
(中央の数値は、平均値)
生徒
私、「はい」かなあ。
生徒
意外と触らない。
生徒
スマートフォンは持ってない。
(「いいえ」を選択した生徒が多い。)
先生
触らない人が多いんだね。みんな偉いね。では、次の質問に進みましょう。
「スマートフォンが常に自分のそばにないと不安に感じる」
生徒
そこまでではないかな。
(ほとんどの生徒が「いいえ」を選択。)
先生
スマートフォンがないからといって、そこまで不安には感じない人が多いんだね。では、次の質問に進みましょう。
「(ダイレクト)メッセージにはすぐに反応しないといけないと思う」
生徒
人によって違うかな。
生徒
親にはすぐに返事しないと怒られちゃう。
(ほとんどの生徒が「いいえ」を選択。)
先生
相手にもよるっていうのは、なるほどなあ。では、次の質問に進みましょう。
「睡眠時間を削ってスマートフォン・タブレット端末を使用してしまうことがある」
生徒
ゲームをしていたら、いつのまにか夜中になっていたことがある。
(「はい」を選択した生徒がやや多い。)
先生
夢中になっちゃうと、いつのまにか時間がたっていること、あるよね。では、最後の質問です。
「スマートフォンの画面を見ながら人の話を聞いたり、人と話したりすることがある」
生徒
それは失礼だと思う。
(ほとんどの生徒が「いいえ」を選択。)
先生
ちなみに、ここまでのアンケートは、みんな本音で答えた? 隣の人と話し合ってみて。
生徒
本音に近いよね。
先生
アンケートの内容でわかった人もいるかもしれないけれど、今日は、節度ある端末の使い方について考えます。
(本時で考えることについて板書する。)
生徒
(配付したワークシートは、「今日は( )について考えます。」というように、考える内容が空白になっている。先生の発言を受けて、生徒は本時で考えることを記入する。)
先生
ちなみに、自分用のタブレット端末を持っている人は?
生徒
(複数人が挙手。)
先生
家族で共有のタブレット端末を持っている人は?
生徒
(複数人が挙手。)
先生
自分用のパソコンを持っている人は?
生徒
(少数が挙手。)
先生
家族で共有のパソコンを持っている人は?
生徒
(多くの生徒が挙手。)
編集部のまなび
★1 導入で、動きのあるアンケート結果を見ながら生徒どうしで実態を把握していました。リアルタイムで、回答結果が画面に映し出されるたび、生徒からは「おお!」とか「あれ? そうなる?」などという声が上がっていました。本時の内容に対する生徒の興味・関心を、より高める効果があったように見受けられました。
「使いすぎって、どういうこと?」の冒頭を読む〈3分〉
先生
教科書P.89を開いてください。(先生による朗読。)
端末を使いすぎることで起こりうる問題について、考える〈17分〉
先生
教科書P.89の女の子のキャラクターが言っているように、スマートフォンやタブレット端末を使いすぎてしまうと、起こりそうな問題は何かな? 四つの観点で考えてみよう。教科書の女の子のせりふにある「健康」、「人との付き合い方」、「礼儀」、もう一つは、そうだね、「学習」にしよう。みんな、この四つの視点で、ワークシートに考えたことを書いてみて。思いついた観点からでいいよ。
生徒
(問いと四つの観点は、空白になっている。生徒はそれぞれを記入したうえで、ワークシートに考えをまとめる。)
先生
(机間指導しながら、先生自身の経験や考えを、適宜生徒に伝える。)★2
(ある程度、生徒がワークシートに記入し終えた段階で、話し合い活動をさせる。)
隣の人や周りの人と、考えたことを話し合ってみよう。席を動いてもいいよ。★3
先生
それじゃあ、考えたことを発表してみよう。
(挙手した生徒を指名する。)
生徒
(四つの観点について、生徒からは以下のような意見が出た。)
[健康]
・頭痛 ・朝がつらい ・睡眠に悪い影響が出る ・依存症になる ・視力の低下
[人との付き合い方]
・スルーされる ・人の話を聞けなくなる ・返事が適当になる★4
[礼儀]
・先生が話しているときにも、端末を使ってしまう
[学習]
・集中できない ・関心が散る
先生
なるほどね。でも、これ、スマートフォンやタブレット端末が悪者ってわけじゃないよね?
編集部のまなび
★2 机間指導の際に限らず、必要に応じて、先生がご自身の経験や考えを伝えることにより、生徒は考えるヒントを得ているようでした。こうした声がけからは、生徒だけが考えるのではなく、先生もいっしょに考えているという姿勢が伝わってきました。
(例)
先生 あ、先生もこういうことしちゃう。
先生 それって、◯◯ってことだよね。わかる。
先生 スマートフォンで調べ事をしているときに、LINEがきたらどうする?
先生 スマートフォンを手にしてると、ついつい触りすぎてしまうんだよね。
先生 (「頭痛」と書いている生徒に)スマートフォンやタブレットを使いすぎると、頭が痛くなること、あるよね。俺もなる。
★3 先生に「席を動いてもいいよ」と指示した意図をお伺いしたところ、「決められた隣の席の人と話し合うよりも、ある程度、気心の知れた相手と話し合いをしたほうが、生徒の本音が出やすいので、あえて『グループで』などと指示せず、自席を離れて、自由に話し合いをしてもよいとするときがある」とのことでした。
★4 生徒の発言に対して、必要に応じて、先生がそこから想定される場面を演じることで、他の生徒がイメージしやすくなるよう、工夫されていました。こうした工夫によって、生徒が他の人の意見についても、自分に引きつけながら考えやすくなっているようでした。
(例)
先生 (「返事が適当になる」という生徒の発言に対して)それって、こんな感じ?
「○○さん、今の悩みって何?」
生徒 「えっと、妹が家でうざくて。」
先生 (生徒が答えているのに、生徒の方を見もしないで、スマートフォンを手元でいじるふりをしながら)「へえ、そうなんだ……。」(と答える)みたいな感じかな?
教科書P.90(1)「AからEのような行動を取る理由と、AからEのような行動を取り続けると、どんな結果を招くか」について考える〈10分〉
先生
(教科書P.90(1)を朗読する。)
AからEのような行動を取る理由と、AからEのような行動を取り続けると、どんな結果を招くかについて、考えましょう。書きやすいところから書いていいよ。
(ワークシートには、教科書と同じAからEのイラストを貼り付け、その横に、「行動を取る理由」と「取り続けると招く結果」について、記入する欄が設けられている。)
生徒
(ワークシートに考えを記入する。)
先生
(机間指導しながら、先生自身の経験を、必要に応じて生徒に伝える。)★5
(ある程度、生徒がワークシートへ記入し終えたところで、話し合いをさせる。)
隣の人や周りの人と、考えたことを話し合ってみよう。自分が書いていないことを受け取ってきてね。
先生
では、みんなの考えを聞いてみましょう。
生徒
(AからEについて、生徒からは以下のような意見が出た。)
[A:夜遅くにメッセージを送る]
行動の理由:塾にいたから、スマートフォンが見られなかった。早く返事をしなきゃ。そもそも夜行性、というのもある。
招く結果:相手は寝ているから返事が来ない。自分は返信を待っていたので、つい夜更かしをしてしまった。寝不足。
[B:受信したらすぐにメッセージを返す]
行動の理由:メッセージが気になる。早く返信しないと嫌われそう。
招く結果:他のことをする時間が減る。スマートフォンばかり気になってしまう。
[C:友達と話していてもスマートフォンを触る]
行動の理由:通知にそわそわ。スマートフォンが気になるから。
招く結果:友達とトラブルが起きる。すごく失礼。
[D:アプリ(ゲームなど)に課金している]
行動の理由:ゲームが進めやすくなるから。楽しいから。
招く結果:お金がなくなる。トラブルになる。そもそも親のお金で課金するっていいの?
[E:話題がいつもインターネットやゲームの話]
行動の理由:話が盛り上がるから。情報を共有したいから。
招く結果:これはそんなに問題はないと思う。やっていない人が仲間外れになる。
編集部のまなび
★5 ★2と同様に、先生がご自身の経験や考えを伝えていました。
(例)
「人といっしょにいるときに、ずっと携帯をいじられたことがあって、いい気持ちがしなかったな」という話など。
教科書P.90(2)「AからEの使い方について、より『節度が守られていない』と思うものから、より『節度が守れている』と思うものへ、順位をつける。」について考える〈10分〉
先生
(教科書P.90(2)を朗読する。)
AからEの使い方について、より「節度が守られていない」と思うものから、より「節度が守れている」と思うものへ、順位をつけてみましょう。どうしてその順位にしたのか、理由も考えてみよう。
隣の人や周りの人と、話し合ってもいいよ。
(Google Classroomで、教科書P.90のAからEのイラストが配置されたプレゼンテーションを生徒に共有する。生徒の人数分のスライドを用意しておく。出席番号と同じ番号が付されたスライドを使って、イラストを並び替えるよう指示する。)
生徒
(イラストを並び替えながら、順位をつける。)
先生
みんな順位を考えてみて、どう思った? 周りの人と感想を伝え合ってみて。
生徒
(隣の人や周りの人と、感想を伝え合う。)
先生
では、みんなの考えを聞いてみましょう。Aから順番にきいていくから、自分がいちばん「節度が守られていない」と思ったところで挙手して。じゃあ、まずAを選んだ人。(以下、BからEを順にきいていく。)
生徒
・B、C、Dを、節度が最も守られていないとする生徒が多かった。(いずれもほぼ同数。)
・Eは、より節度を守れていると考える生徒がほとんどだった。
終末:スマートフォンやタブレット端末を使ううえで、節度を守るとはどういうことか、考える〈5分〉
先生
スマートフォンやタブレット端末を使ううえで、節度を守るとはどういうことか、*「未来へのヒントカード」に入力しましょう。
生徒
(各自の端末から、「未来へのヒントカード」に考えを記入する。)
先生
端末を使いすぎた結果、悪い影響が出れば、自分の責任だよね。だからこそ、どんなふうに使えばいいか、考えることは大切だね。
授業後:生徒が記入した内容を、ChatGPTに要約させ、学級通信として配付。
学級通信の内容は、以下の通り。
【全体の傾向】
生徒たちは、スマートフォンやタブレット端末などを「便利で楽しいもの」であると認めつつ、使い方によっては健康・人間関係・学習などに悪影響が出ることへの危機感をしっかりともっていました。特に、「自分のためだけではなく、相手に配慮する」ことの重要性を多くの生徒が挙げており、節度とは“思いやり”でもあるという価値意識が育まれていました。
【主な意見の分類と要約】
1. 節度とは「相手への配慮・思いやり」
夜遅くのメッセージ送信や通知音による迷惑を避けたい。
相手の話を聞かずにスマートフォンを触るのは失礼。
インターネットのやり取りは相手に誤解を与える可能性もある。
「自分の基準」ではなく「相手がどう感じるか」を大切にすべき。
2. 自制とルールをもって使う
時間・使う内容・場所を自分で決めて守ることが節度。
没収されないよう努力している。(家庭内でのルールがある生徒の意見)
自分で制限する力(セルフコントロール)を育てたい。
3. 健康・学習・人間関係への悪影響を防ぐ
睡眠不足、集中力の低下、学習時間の減少が心配。
将来に影響するかも。(長期的な視点)
スマホが原因で人間関係が悪化した。(実体験に基づいた記述)
4. 節度を超える使用の「怖さ」や「無自覚さ」
使いすぎていることに気づいていなかった。
自分は節度を守っているつもりでも、周囲には迷惑がかかっているかもしれないと気づいた。
スマホに支配されていた。
【少数意見・印象的な気づき】
・「思いやり」はネットと現実をつなぐもの。
・スマホや端末の使いすぎ問題は、人が技術の進歩に追いついていないからでは。(技術と人間の関係について捉えた視点)
・自分の使用状況を、★で自己評価するなどの振り返りも見られた。
・「家族や友人と実際に話すほうが大切」という、リアルな人間関係を重視する意見もあった。
*千葉大学教育学部附属中学校では、道徳科の授業で学んだこと、それに対する先生からのコメントなどを、「未来へのヒントカード」という振り返りシートに記入し、毎時間の学習を記録している。
(授業見学日:2025年6月17日)
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