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第5回 話し合い指導(3)―発表のしかた―

そがべ先生の国語教室

2015年7月13日 更新

宗我部 義則 お茶の水女子大学附属中学校副校長

30年の教師生活で培った豊富な実践例をもとに、明日の国語教室に役立つ授業アイデアをご紹介します。

第5回 話し合い指導(3)―発表のしかた―

学習班(4~3人)での話し合いは、その後の学習活動や、学級全体での共有や話し合いへのプロセスです。
学習班での話し合いの「ゴール」を、例えば次のように示します。

ア 『ビギナーズクラシック 竹取物語』で読んだ、どの場面がおもしろかったか紹介し合う。
イ それぞれの「だまし絵」は何を言うための例か、話し合ってまとめて発表できるようにする。

画像、授業風景
活発に話し合う生徒たち。

アのゴール(目標)は、学習班内で、それぞれがおもしろいと思ったところを紹介し合うこと(共有)自体が目的なので、基本的にはそれを全体に発表することはせず、ミニ読書会のような形で「あそこがおもしろかった」「姫はどうしてこう言ったんだろうね」などと学習班内でしばらく話し合って終わります。(このときは、その話し合いの後、各自が「ブックレビュー」作品を作っていく個別学習に展開していきました。)

全体に発表し合う場合も、「主に話題となったこと」や「こんなことについてこんなやりとりがあった」ということなど、発表を担当する生徒が印象に残った内容をシェアしあう形になります。
イの場合は、まさに班で話し合ったことを発表して、学級全体で検討し合う形に展開します。学習班の話し合いはこのタイプが多いかもしれませんね。
こうした話し合いでよく聞かれる悩みは、「発言力のある生徒が話し合いを仕切り、結局その生徒の意見に集約されてしまう」というものです。これでは本当の意味で、創造的な話し合いにもなりません。
そこで、あらかじめ「発表のしかた」について指導しておくとよいと考えます。
つまり、発表に当たっては、

「私たちの班では……という考えにまとまりました」、という形だけでなく、

「私たちの班では、…(A)…という考えと、…(B)…という考えの二つが出てまとまりませんでした。Aの意見は……という考えで、Bの意見は……という考えです。みなさんはどう思いますか?」

という「まとまらない場合」の発表のしかたもあらかじめ指導しておくのです。

学習班での意見交換や議論は、「よりよい考え」を求めて話し合っていくわけですから、話し合った結果、それぞれにとってよりよい考えの形で一つにまとまればそれにこしたことはありません。というか、話し合いは合意の形成を目ざして行います。

こうして一人ひとりの考えを尊重し合う話し合いづくりの上に、「集団的な意思決定=合意形成」の話し合いが育まれていくと考えています。

次回も引き続き、話し合い指導についてご紹介します。

宗我部義則(そがべ・よしのり)

1962年埼玉県生まれ。お茶の水女子大学附属中学校主幹教諭。お茶の水女子大学非常勤講師、早稲田大学非常勤講師。平成20年告示中学校学習指導要領解説国語編作成協力者。編著書に『群読の発表指導・細案』(明治図書出版)、『夢中・熱中・集中…そして感動 柏市立中原小学校の挑戦!』(東洋館出版社)、『中学校国語科新授業モデル 話すこと・聞くこと編』(明治図書出版)など。光村図書中学校『国語』教科書編集委員を務める。

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