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第3回 武雄市立北方中学校での出前授業(2)

空を見上げてみよう

2018年11月1日 更新

山中 勉 宇宙航空エンジニア

山中勉さんが各地で行っている出前授業の様子や、生徒が紡いだ五・七・五の言葉をご紹介します。

武雄市立北方中学校での出前授業(2)

山中勉さんによる五・七・五の言葉紡ぎの授業。2時間目には、いよいよ生徒たちが作品制作に取り組みます。佐賀県特有のキーワードを盛り込みながら、個性豊かな句をたくさん作り上げました。今回は、生徒たちの制作過程や完成作品の一部を紹介します。

元気・勇気の素を探そう

2時間目の冒頭、新しいワークシートが配られ、言葉紡ぎに取りかかる前の準備作業をします。

山中 まずは女川の中学生にならい、佐賀県ならではの元気や勇気がわいてくる言葉を探しましょう。

生徒たちは、いまひとつ意図をつかめない様子。山中さんが詳しく説明します。

山中 女川の中学生たちが詠んだ句には、「夢」「友だち」「たんぽぽ」とか、元気や勇気がでるキーワードが使われていたよね。このことを踏まえながら、佐賀県特有で、みんなを元気にできる言葉を出してほしい。佐賀にしかない、言葉、食べ物、植物、場所、何でもいいです。その言葉を使って、この後、五・七・五を作っていきますからね。グループごとに、箇条書きでどんどん書いていってください。

ここから再びグループワーク。「じゃあ時間は5分間。スタート!」。山中さんの合図で、元気な声が飛び交い始めました。山中さんも生徒の輪に入り込み、アドバイスを送ります。

5分後、各班の代表者が、佐賀県ならではの「元気・勇気の素」を発表していきました。佐賀牛、有明のり、ムツゴロウ、「よかばい」、「がばいよか」、唐津くんち、武雄温泉、有田焼、バルーンフェスタ、サガン鳥栖……。魚好きの生徒が、有明海の珍魚「ワラスボ」の絵を黒板に描いて説明する場面もあり、和やかな雰囲気に包まれました。最終的に、ご当地グルメや方言、観光名所など、集まった言葉は40以上。山中さんがその言葉を一つずつ、黒板に記していきました。

いよいよ本番、言葉を紡ぐ

山中 たくさん元気や勇気が出る言葉が挙がってびっくりしました。さて、ここからが今日の本番です。今みんなが発表した中から好きな言葉を使って、班ごとに五・七・五を作ってみましょう。何句作ってもかまいません。4人の班だったら、4人で協力して1句作ってもいいし、個人個人で1句ずつ作って、合計で4句以上にしてもいい。OKですか? 制作時間は10分間です。

いよいよ、作品制作の時間。生徒たちはホワイトボードに思い思いの言葉を紡いでいきます。指を折りながら字数を数えたり、つぶやきながら言葉の響きを確かめたり。「どんなキーワードを入れようか?」「バルーンを入れよう」「バルーンで連想するイメージは?」「明るい、見上げる、空……」「いい感じ、いい感じ」――。各班からは、そんな会話が聞こえてきました。

10分間が過ぎ、発表の時間になりました。ここで山中さんの提案により、発表は班員全員が前に出て、写真を撮影しながら行うことになりました。「その写真も含めて、作品と一緒にロケットで打ち上げることにします」と山中さん。次々に作品が発表されます。

つらい時 みんなでさけぼう 『がばいよか!』
潮がひき 干がたでできた 地平線
どぎゃんしたと? 友がいうよ つらいとき
「うんよかよ」 その一言が 嬉しいんだ
青空に 飛び立つバルーン 鮮やかに

など、正統派の作品から…

有明の エイリアンは 絶品だ

など、ユーモラスなものも。拳を突き上げながら、声を合わせて発表する班もありました。

山中 すばらしい句をありがとう。みんな、本当にうまいですね。佐賀の魅力も伝わるので、宇宙ステーションに打ち上げたら、宇宙人が佐賀に来ちゃうかもしれないね(笑)。みんなの句で地球上の人が元気になればいいと思います。

女川の中学生が詠んだ句に下の句をつけよう

授業の最後、山中さんから生徒たちにお願いがありました。

山中 今日、みんなの傑作ができたのは、女川の中学生のヒントがあったからだと思います。そこで、女川の中学生にお礼をしたいと思うんだけど、賛成の人は拍手をお願いします。

生徒 (全員が拍手)

山中 ありがとう。2011年5月に句を詠んだ当時の中学生は、今はもう大学生です。そこで、今年5月に私が女川に出向いた際、現役の中学生に書いてもらった作品がありますので、その中から気に入った俳句を1句選び、七・七の下の句をつけてみましょう。12月に私はまた女川へ行きますので、そのときにみなさんの下の句やメッセージを報告したいと思います。

約1500キロ離れた佐賀県武雄市と宮城県女川町で、俳句を通じた交流が行われることになりました。

山中 今日は本当にすばらしい時間が過ごせて幸せに思います。みなさん、またどこかでお会いしましょう。

最後に、生徒たちは山中さんと記念撮影を行い、授業は締めくくられました。

次回は、女川中の生徒が作った句に対し、北方中の生徒が紡いだ下の句を紹介します。

山中勉(やまなか・つとむ)

1958年、東京都生まれ。宇宙航空システムエンジニア。(株)IHIエアロスペースにて宇宙航空事業や国際宇宙ステーション(ISS)の一般利用を発案し実証。宇宙航空研究開発機構(JAXA)主幹研究員、日本宇宙フォーラム主任研究員を経て、2013年より(株)IHIで社会貢献活動としてISSを利用した学校授業を共創している。
東日本大震災では宮城県女川町や各地の学校での出前授業を行い、五・七・五の言葉などの作品をISSに届ける活動を続けている。

女川の中学生への返句を募集します!

女川の中学生がこれまでに紡いだ100句の中から、印象に残った句を選び、七・七の下の句をつけてみませんか?
受け付けはメールで行います。件名は「空を見上げて」とし、本文に100句の中から選んだ句と、七・七の下の句、メッセージ(任意)、必要事項(ご住所、お名前(ふりがな)、年齢、ご職業・学年)を記載し、下記アドレスにお送りください。お送りいただいた句は、随時このウェブマガジンで紹介します。句は匿名で掲載いたします。

光村図書出版 第三編集部 広報課
E-Mail:koho@mitsumura-tosho.co.jp

女川の中学生がこれまでに紡いだ100句は、PDFでご覧いただけます。

女川の中学生が紡いだ五・七・五の言葉(154KB)

※ 応募受付は締め切りました。 たくさんのご応募ありがとうございました。

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