読書Q&A 学校図書館(理論編)
2015年1月1日 更新
赤木かん子 児童文学評論家
どうすれば子どもたちが集まる図書館になるのでしょう。本のそろえ方や整理のしかたなど、学校図書館の作り方や運営方法に関する悩みにお答えします。
A(回答)
さて、今回は第三次区分、通称3桁目です。が、すでに先月の2桁目で嫌になったり、やっぱり私には無理だと感じられた方もいらっしゃるかもしれません。でも、こういう実技系のものって、言葉にすると難しいのですが、実際に手を動かしてみるとそうでもないんですよ。例えば水泳ね。泳ぎ方を言葉で説明するのって難しくないですか? 目の前でやってみせられれば、もしくは絵があれば簡単なのに。言葉は万能ではなく、実技系には極端に弱いんです。だから難しくみえるけど本当はこれって難しくないの、簡単なの。
4は自然科学。48で動物。
483が無脊椎動物
484が軟体動物
485が節足動物
486が昆虫
487が脊椎動物
488が鳥類
489が哺乳動物です。
でも、これはあくまでも図書館での分類方法で、生物学の分類方法ではありません。日本十進分類法は今から90年近く前に作られたもの、もともと学術的というよりは実用的な体系なのです。それぞれの代表選手を思い浮かべると分かりやすいと思います。
そうして分類は“必要なところまでやって、必要なくなったらやめる”ものなので、例えば“鳥類”はここでやめる。なぜかというと、その次の段階は、モズとかスズメに分れているからで、小学校でそこまでの分類はいらないですよね? でも”脊椎動物”はその次の段階(お察しの通り第四次区分といいます)まで分類しないと“爬虫類”“両生類”“魚類”がでてこないので、小学校ではまずいでしょう。そのときに、数字が四つ並ぶとわかりにくくなるので三つ目で点(.)を打ちます。つまり爬虫類は、4(自然科学)8(の中の動物)7(の中の脊椎動物).9(の中の爬虫類)となって、489.9(よんはちきゅうてんきゅう、と読みます)ということになるんです。
これ以外にも、小学校では昆虫と哺乳動物は4桁までとったほうがすっきりうまくいきます。けれども、昆虫にもダンゴムシにも恐竜にも興味がなくなる中学校では、自然科学でも動物は3桁、他は2桁でいいのです。
こうやってその場所に必要な分類を考えることを“分類体系をつくる”といい、これが、他の人にはできない(と言い切ってしまいますが)司書の仕事なのです。もちろん分類体系自体は誰でも作れますが、知識と訓練なしで使えるものを作ることはほぼ不可能です。正直言って“動物が出てくる本”という分類を見たときは絶句しました(『シートン動物記』と『ルドルフとイッパイアッテナ』が一緒に入ってた! そりゃ猫が主人公だけどさ!)。“わくわくどきどきする本”という分類も。そんな個人的なこと、どうやって決めるの! 毎月変わりのブックフェアならいいですけど、常設展示で?
赤木かん子
児童文学評論家。長野県松本市生まれ。1984年に、子どものころに読んでタイトルや作者名を忘れてしまった本を探し出す「本の探偵」として本の世界にデビュー。以来、子どもの本や文化の紹介、ミステリーの紹介、書評などで活躍している。主な著書に『読書力アップ!学校図書館のつくり方』(光村図書)などがある。