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鮮度に「こだわる」のは、悪い意味?

子どもと大人の「ことばQ&A」

2024年9月30日 更新

光村図書 校閲課

ふだん何気なく使っている言葉も、ちょっと立ち止まって考えてみたら、いろいろおもしろいところが見えてきます。
このコーナーでは、教科書の校閲を担当しているメンバーが、言葉をめぐるさまざまな疑問を取り上げて解説していきます。

「こだわり」の意味は、ポジティブかネガティブか

お店などで、「味へのこだわり」「こだわりの逸品」などのフレーズをよく見かけます。
この表現については、年配の方の中には違和感を覚える人もいらっしゃるようです。

「こだわり」や「こだわる」は、もともとネガティブな意味だったものが、ポジティブな意味へと使い方が変化してきた言葉です。
「こだわり」「こだわる」は、漢字では「拘」の意味になり、本来の用法では「つまらないことを必要以上に気にする」「つまらないことに心がとらわれている」というネガティブなイメージで使われてきました。
しかし最近は、新しい用法として「細かいところまで手を抜かない」「妥協せずよりよい価値を追求する」というポジティブなイメージで、「こだわりの逸品」「鮮度にこだわる」などという表現をあちこちで見かけます。
そのときの状況によって、二つの用法を自然に使い分けている人も多いのではないでしょうか。

文化庁の平成27年度「国語に関する世論調査結果の概要」によると、16歳~19歳では新しい用法を使う傾向が、70歳以上では本来の用法を使う傾向が若干多く見られます。年代の差によって、意味の捉え方が異なる可能性の高い言葉であるともいえます。
「こだわり」や「こだわる」は、よい意味でも悪い意味でも使われるので、人によって捉え方が違うことを念頭に置いて、自分の意図と反対の意味に取られないように注意して使うとよいでしょう。

Illustration:  Mimei Umimachi

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